9-1 兄妹デート
「お兄ちゃんも、少しは我がままになっていいよ」
そう言うと、やや泣きそうな顔をして
「私、我慢出きるようになったよ、お兄ちゃんが麻紗美ちゃんと話しててもショックじゃなくなって来たし」
「私がまたお兄ちゃんを縛り付けて、お兄ちゃんが幸せになれないのは嫌だよ、麻紗美ちゃんと喋る時いつも私の顔色うかがっているしー、もう平気だもん」
「お前そんな泣きそうな顔して言っても説得力ないぞ」
妹は横を向きフンって感じになる。
「泣いて無いよーだ」
再びこっちを向いてまたにっこり笑って
「もしお兄ちゃんが麻紗美ちゃんや、他の誰かに取られたら取り返すだけだから平気だよーーーだ」
「だから私の事気にしたり、顔色伺ったりしなくてもいいし、私が我がまま言ったら、否定しても怒ってもいいんだよ」
「どんな事があっても私達別れられないんだからね」
強がりを言っているのは一目瞭然なんだがその仕草に笑いが込み上げてきた。
「栞、お前こそ俺よりいい男が来るかもしれないぞ、そんなのごまんといるんだから」
「えーーーそんな人いないよ」
「いるって、35億って言ってるお笑いもいるだろ、俺を買いかぶり過ぎなんだよ栞は俺の事全然わかってないなー」
ちょっと上から目線で言うと挑戦者の様な目をして
「じゃあ、お兄ちゃんの事わからせて」
何を言ってるのか一瞬わからなく
「え?」と聞き返すと妹はうーーーんと考え込みそして
「ゴールデンウィークお兄ちゃんの行きたい所に連れてって!」
「俺の行きたい所?」
「うん、ほらデートは全部私の行きたい所だったから、今度はお兄ちゃんの行きたい所に私を連れてって、私の事は気にせずにお兄ちゃんが遊びに行きたい所に行くの、お兄ちゃんの事を少しでも分かるかも知れないでしょ?」
なんだか言いくるめられている様な、まんまとの乗せられた感があるが、
「えーーー俺の行きたい場所って言われても」
うーーんと考え込む
「私どこでも行くよ、メイドカフェでもツンデレカフェでも妹カフェでも」
「いやメイドカフェ行った事ないし妹カフェはここだし」
なんかこのくだり前にやったな。
「コスプレカフェでも執事カフェでもA○Bカフェでも」
「俺どんだけカフェ好きだよ、てか栞の俺への認識は相変わらずオタクなのな、カフェなら普通のがいいよ」
「どこか行きたい所ないのー?」
「俺の行きたい所ねー……」
妹と違いあまり都会というか、ごちゃごちゃした人混みが好きでは無い
「うーーーーん、山とか海?」
「山とか海?」
「うん、山とか海とか自然がいいかな」
「近場の山と言えば、そうだ高尾山がいいかな?」
「高尾山?」
「うん、東京都なんだけど、家から日帰り出来るし登山って程大変じゃないし」
「へーー私も行きたい!」
「じゃあ行くか」
「やったあああああ、何着て行こう、あ、私登山靴とか持ってないよ」
「運動靴で十分だよ、行った事無かったっけ?」
「無いよー、でも聞いた事はあるよ、お兄ちゃんあるの?」
「なんか小学校の時に友達と行ったような、あれ高尾山だったよなー?」
「え!お兄ちゃん小学校の時友達いたんだ」
「おい!そこは高尾山いった事あるんだ?だろ!」
「えへへへへへー」
本当に気を使わなくなった妹、でも嫌いじゃないなと、ただし、友達の件は、ほっといてくれ
「とりあえず、雨具とズボン、寒くない格好に運動靴かな?」
「はーーーい」
「じゃあ早起きして行くぞーー」
俺が手をあげると
「おーーーーーー」
妹も手を上げて答えた。
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そしてゴールデンウイーク初日
「お兄ちゃんお弁当作ったよー」
朝早く起き1階に降りると既に妹がキッチンに居た。
「ありがとう、じゃあ俺が持って行くよ、あとお茶も持っていこう」
お湯を沸かして、お茶を水筒に入れる。
「じゃあ、行きますか」
「行こうーーーー」
俺は黒っぽいシャツの上にベージュのフリース、チノパンで小さめのリュックサックを持ち立ち上がる。
妹は赤のニット帽にピンクラインの入ったグレーのパーカー、赤いチェックの巻きスカートに黒のレギンス、カラフルなボーダーのレッグウォーマー、緑のウエストポーチ
「山ガール?」
「うん参考にして家にあるものでコーディネートしてみた、どう?」
巻きスカートをつまんで広げて見せる。
「かわいい山ガールだな」
「やった!」
妹とそのまま家を出て駅に向かう、早朝なのでいつもの栞友達の攻撃には合わなかった。
ついでに両親共熟睡中、出掛けるとは前日言っておいた、父ちゃん母ちゃんお疲れ~~~
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電車に揺られること1時間半、妹といつものおしゃべりをしている間に到着。
しかし、友達が一杯いるだけあって話題が豊富で助かるよ。
高尾山口駅を降りると、結構な人が
「なんか、人混みを避けて山に来たんだけど、人一杯いるなー」
「うんやっぱりゴールデンウイークだからかもね?」
とりあえず人の流れに乗ると、参道が見えてくる。
「あ、お土産屋さん、お団子美味しそうこれモモンガ?」
「むささびじゃない?」
「へーー居るのかな?、見たいなー」
「むささびって確か夜行性だった気が」
「じゃあ見れないかー、よし!お兄ちゃん夜まで居よう」
「いや居ないから、夜だと見えないし」
そんなやり取りをしつつ歩くと暫くして清滝駅が見えてくる。
「駅?ここから電車に乗るの?」
「いや確かケーブルカーがあったと、うええめちゃくちゃ混んでる」
すでに大行列ができており、切符を買うのにも時間がかかる。
「待つ?」
「どうするか、そのまま登っちゃうか」
ケーブルカー乗り場の横に、リフト乗り場の看板が
「リフトの方がまだ空いてるなーリフト乗る?」
「乗りたい!」
そうして、リフト乗り場に並び待つこと数十分
屋根付き二人乗りのリフトに乗り込む
「きゃあああ、えい!」
妹が俺にしがみ付くように乗り込む、そのまま腕を掴みあたりを見る。
「わーーーー凄い、結構高いねー、あ、お花綺麗なんて花かなー」
はしゃぎ捲る妹を見て来てよかったなーとほのぼの思いながらリフトに揺られる
「あああああああああ、見て見てお兄ちゃん猿だーーー」
「おお、居るんだな猿」
「すごーいここ東京だよねー」
猿に大はしゃぎで、10分ちょっとの空中散歩を楽しむ。
山上駅に到着、ここからは徒歩
「よし!行こうか」
高尾山登山開始と言っても、山登りというよりハイキングに近いコース
暫く登ると、赤い灯篭のある参道が見えてくる。
「わー凄い、よしお兄ちゃん写真撮ろう」
二人並んで自撮り、妹がほっぺをくっつけてくる。
止めてくれ理性が……さらに登るとまたお土産屋が見えてくる
「お兄ちゃんお団子食べよう!」
妹は、団子屋に走っていく、下で我慢してたもんね。
笑って待ってたら、お団子を頬張り妹が
「なによーーー、お兄ちゃんには上げない」
「えーーそんなに食べたらふと…うぐう」
団子を口に突っ込まれる……
「殺す気か!」
団子を喉に詰まらせそうになりゲホゲホ咳をしながら抗議
「だってえ、お兄ちゃんデリカシーないからー」
「お前は痩せすぎだから少し、あ、わかったもう言わない」
持っていた団子を俺に向けにじりよる妹に謝る。
決して胸の事を言ったわけ、……すいませんもう思いもしません。
心の中を見透かされた様な鋭い視線を華麗にスルーして、団子を食べつつ山頂方向に
そして、高尾山薬王院に到着
「へーー凄いね、お寺?」
「神社だろ?」
天狗いるし
「お参りをして行くか」
二人で並んでうろ覚えのニ礼二拍一礼
「栞、何をお願いしたの?」
「内緒~~」
「えーーーー」
「じゃあ、お兄ちゃんが言ったら言う」
「じゃあ内緒でいいや」
「えーーーー教えてよーーー」
混雑の中いちゃつく二人に向けられる、お前ら爆発しろという視線は完全無視し、そのまま山頂に向かおうと妹に言うと
「え!ここ山頂じゃないの?」
「うん、まだ先」
「えーーーー疲れたよーー引っ張って」
手を出す、妹がこの程度で疲れる分けねーと思いつつ手を繋ぎ引っ張る。
「えへへへへへ」という妹の声を聞かない事にしてそのまま山頂に向かった。
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