2-1初めてのデート

 告白から数日が過ぎた、しかし学校では妹と殆ど話しはしていない。


 妹の友達が多すぎて喋る暇がない……


 俺はというと、話しかけてくるのは後ろの席の残念東出と、麻紗美くらい。


 入学してから一週間たってないし、クラスに友達二人とか普通だよな、そうだよな、いや答えは言わなくていいです……



「なあ東出」


「よういちで良いって」


「ああ了解、でさあ東出」



 昼休み後ろの席でパンを一人でかじっていた残念系イケメン東出洋一に声をかけた。


「お前今日はいるんだな昼いつも居ないだろ?」


 クラスに友達二人もいる俺だが、友達二人も居る俺……大事だから2回言ったぞ、


 妹の手前麻紗美と食べるわけにも行かず、東出はいつも居ない為に俺はいつもボッチ飯、今日は食べる相手がいてちょっとうれしい、ちょっとだけ、本当にちょっとだけだぞツンデレではないぞ。


「ああ、いつも部室で食ってるからなー、今日は顧問が使うらしくって部室つかえなかったんだよ」


「へーーー、まあそんな事はいいや、ちょっと聞きたいんだが」


「いや、お前そこは部活何やってんだとか聞けや」


「いや興味ないからいいよ、でさあ」


「はあぁぁ……、で? 聞きたい事って何だよ」


「デートってさ何処に行くんだ?」



 一瞬の静寂、おれは聞いてなかったのかと、もう一度言おうとしたところ、






「……お、お、お前彼女いんのかああああああああ」


 胸ぐらを捕まれ激しく揺さぶられるうう、やめろ脳がシェイクするうううう

 

「いや違う、い、いないから落ち着け!!」

俺達の事を妹を含むクラスにいた十数人が怪訝な顔でいぶかしむ


「す、すまん取り乱した」


周りにへこへこしながら東出は席に着く


「で、彼女じゃないなら、何でデートの行き先なんて聞くんだよ?」

東出は落ち着くためにか、牛乳をストローでひと飲みし、席の背もたれに寄っ掛かり頭の上で手を組みつつ聞いてくる。


「えーーーーーっと、そうそうゲーム、ゲームの選択肢で悩んでてさ」



「あーー? ゲームだあ?フラグは立ってるのか?告白はしたのか?」


「した、あ、いやされた」


「告白された?ならそんなん簡単じゃねえか、自分の部屋に呼ぶ一択やろ、即エッチシーン突入だな、おめでとう、あとで貸せよ」



「で、で、できるかああああああああああああああああああ」



今度は俺がデカイ声で叫び、周りから白い目でみられる。


ぎょっとした顔で俺を見る東出



「あ、す、すまん……取り乱した」

今度は俺が周りにへこへこしながら席に着く


「なんだ? 彼女の部屋が良かったか? 保健室? ひょっとしていきなり外とかお前そんな趣味が」


「ちゃうわ、エロゲーの話しはしてねえ、てかやったこともねえ」


 疑惑の目で見ている。


 エロゲを持っているか、本当は彼女がいるのか

どっちに疑惑を持ってるか分からんが、東出は、ちょっと間を明け何かを察したのか、真剣に考える。


「んーーーそうだな、まあ定番はカラオケとか映画じゃねえか?」


「ほうほう」


「後は遊園地、公園、喫茶店、ショッピングって所か」


「べただな」


「まあさ、相手がお前を好きならば何処でも喜ぶんじゃねえか?」


「そういう物か?」


「ああ、そういうもんだよ、お、俺ちょっと良いこといってるなうん」


「最後がなければな、まあサンキュー」


「良いって事よ、俺がお前の妹と付き合うことになったら、相談に乗れよな」


「ハイハイ」


 俺は軽くあしらったが、それをものともせずに、一生来ないであろう事柄を延々話す残念東出、よしこいつのあだ名は「残念」にしよう。


 それだけ決め、俺は残念の不毛な会話に生返事をしつつ、週末の予定を逡巡していた。




####




 付き合ってるといっても兄妹で同級生、学校は近く知り合いも多い、何処かでイチャイチャ出来るわけもない。


 かといって家でイチャイチャする事もなく、帰宅後のリビングでお茶を飲みつつ雑談が最近の日課。


 本当にイチャイチャしてないぞ!ただ一緒に寄り添いながら話すだけだからな。


 妹は俺に嬉しそうに今日は友達がこうだったとか、授業の文句とか数学の先生のしゃべり方が面白いとか、そう言った事を延々話し続ける。



 すまんな妹、俺には話せる話題が無い、特に学校の話しは……



 しかしやった事ないから分からんけど、正直付き合うって、こう言う事? なんて疑問に思うが、楽しそうに話す妹を見ていると、まあこれで言いかとも思う、俺も楽しい。



「それでさ、栞、週末なんだけど何処か行きたい所とかある?」


 妹の話が一息付いたところで、懸案の週末出掛ける場所を聞いてみる。


もうさ、考えたけどわかんねーよ、女子と二人で出掛けるなんて、生まれて初めて何だから。


 男らしく俺に付いてこい、何て言えるほど経験ないし、俺の勝手で妹が楽しめ無ければ意味ないし


「週末のデートだよね、どこか?うーーん何処でもいいよ、お兄ちゃんの行きたいところで」


「何処でも良いと言われてもな~~」

 かえって決まらないんだよな、何でも良いとか何処でも良いって……


「お兄ちゃんが連れてってくれるなら、秋葉原でも、アニメイトでも、ゲーマーズでも、虎の穴でも、メイド喫茶でも、乙女ロードでも」



「いや……、俺はそこまでオタじゃないから、てか詳しいな、最後のは意味わからんし」



「じゃあ、ウエスティンとか、コンラッドとか、リッツ・カールトンとか……」


 頬を赤らめ妹が都内超高級ホテルを指名する。


「いや行かないから、そんな金もないから」



「じゃあハリー・ウィンストンとか、ティファニーとか?」


「すみません指輪も買いません、てか買えません」



 うーーーんと妹は真剣に考え出す、暫く悩んでいると何かを思い出した様に答える。


「じゃあ、ねえ……水族館に行きたい」



「水族館?おお、水族館かー、良いかもな、気がつかなかったけど定番だよな、どこ行くか、品川、池袋、葛西ちょっと遠くでも良いかな、そう言えば江ノ島にもあったよな」



「ううん、あのね、私ねお兄ちゃんと行きたい水族館があるの」


「俺と行きたい水族館?」




「うん、さいたま水族館」



 は? さいたま水族館?




 さいたまに海ねえじゃん……





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る