第4話束の間の逢瀬

「いやぁ、食べたねぇっ!!」

「食べた!食べた!」


 久し振りに会った美久は、すっかりお母さんの顔をして、ベビーカーで静かに眠ってる愁くんの顔を眺めてた。


「早紀もさ、誰か好きな人見付けて、早く結婚しなさいよぉ!いいものよ。じゃ、私和希迎えにいくからぁ。じゃっ!」

「うん···」


 美久は、愁くんを起こさないように静かに尚且つ早くベビーカーを押し、和希くんが通ってる塾へ迎えにいった。


「結婚···か」


 チラッと腕時計を見ると、待ち合わせの時間にはまだ1時間あった。


(会うだけ。少し話したら帰らないと···)


 少し駅ビルでショッピングを楽しむと、待ち合わせ10分前で、慌ててドッキーニへ向かった。


 和倉さんは、既に来ていてスマホを見ていた。


「あの···」


 スマホから顔をあげた和倉さん···


「やぁ、元気そうだね。座って···」


 椅子を引き目の前に腰掛けるも、なかなか言葉が出ない···


「どう?」

「うん。まぁ···。それよりも話って?」


 和倉さんは、少し迷って、


「出よっか!近くに車停めてあるから、少し流さないか?」


 私が答える前に手を取り、歩きだす。


「良かったよ。早紀が、元気そうで···」

「うん。和倉さんも···。玲奈さんは?」

「まぁ、元気かな?今年、子供が生まれるから···」

「そう、だね。結婚したんだし···」

「······。」


(なんだろう?結婚して幸せなはずなのに···)


 車に乗っても和倉さんは、なかなか口を開こうとしなかった。


「今日って、何時までいれる?」

「今日は···」


(確か、お義父さんは仕事だから···)


「5時かな?食事の支度もあるし···」

「早紀は···」


 何かを言いかけて止まる和倉。


「よしっ!決めた!」

「えっ?」


 いきなりそう言い、和倉さんは車を飛ばして···


「和倉さん?ここ···」


(ラブホテル。何をするとこかは、知ってる)


「行こっ!時間がないから!」

「えっ?えっ?」


 訳がわからず、グイグイ手を引っ張られる早紀。


 ガチャンッ···


 冷たく重い鉄製のドアを閉め、中に入る。


「和倉···さん?」


 つかつかと窓の方へ向かった和倉さんは、


「すまなかった!!」


 いきなり私に向かって土下座をした。


「はいっ?えっ?なん、で?」


「···あの時···あの···写真···」


 写真···。私が義父に犯されてる写真を撮ったのは義父。そして、それを和倉さんに送ったのも···義父。


「いいよ。もう···」


(忘れたくても、忘れられない)


「違うんだ!俺、俺···あの時···」

「はいっ?」


 和倉さんの口から出た言葉は、早紀を更に傷つけた。


「玲奈と···」

「田蔵、さん?が?」

「あの写真が、届いた時···いたんだ。俺、あいつと···」


(嘘···。夜だよ?なんで?)


 土下座をしながら喋る和倉に、立ち尽くす早紀···


「一度だけ···一度だけのつもりだった。でも、あの写真が届いて···俺、どうかしてたんだ。で、少し頭冷やそうと思ってバスルーム行って、戻ったら···」


 ゴクッ···


「玲奈が、俺のスマホ弄ってて···玲奈が···」


(あれを回したのって···玲奈さん?義父がしたのかと···)


「悪いと思ってる。今でも!謝りたかった。けど···怖くて出来なくて···ごめんっ!」

「いいよ、もう···」


(謝られても困る)


「早紀が辞めてから、玲奈が妊娠してるのわかって。責任取れって···それで、俺···ごめんっ!」


 和倉さんは、頭を何度も何度も床に打ち付けるように謝り続けた。


「もぉ、いいから。ねっ、頭上げて。和倉さん···」


 それでもなかなか頭を上げない和倉を起こそうとして···


 ドタッ···


「わっ!!」


 バランスを崩して、そのまま床に···


「早紀···」


 懐かしい和倉さんの匂い···


 私、いま和倉さんと···


 二人の唇が重なり、静かな時間が流れる···


「ご、ごめん。つい···」


 信じられなかった···


「和倉さん···」


 今度は、自分から唇を押し付けていった。


「早紀···」


 何度も何度も互いに唇を重ね···


 ゴクッ···


 雅彦の手が、早紀のブラウスのボタンに掛かる···


「ここで···?」

「駄目?」


 子供みたいな可愛い笑顔の雅彦の髪を触りながら、


「ねぇ、キス···して?」



「愛してる。早紀」


 耳元で小さく囁く雅彦の背中に手を回し、目を閉じる早紀。


(和倉さん···)


「抱いて···」


 背中に伝わる雅彦の手が、早紀のブラのホックを外し···


「早紀、柔らかいんだ」


 雅彦は、早紀の大きな乳房を揉みながら、優しく乳首を吸い込んでいく。


 ふぁっ···


 初めて感じる雅彦の舌···


 チュバッチュバッと優しく吸い込み、右手が段々と下に滑っていく。


 あっ···


「柔らかいんだね。ここ。早紀···」


 雅彦の身体が自然と早紀の上に伸し掛かる。


「雅彦···」


 早紀は、初めて和倉を下の名前で呼んだ。


「ずっと好きだった。ずっと···」

「私も···」

「ちょっと待って···」


 雅彦は、手を伸ばしゴソゴソと何かをし、


「いい···かな?ゆっくりするから···」


 するのに断るのもおかしだと思ってるのだろう。少しはにかんだ笑いになるふたり···


 ズッ···ズチュッ···ズンッ···


 自分の身に過去何があったのか?は、さておきいまやっと1つに慣れた喜びを味わうふたりは、繋がったままキスをする。


「なんか、ドキドキしてきた···」

「もっと、させてあげる」


 そういい雅彦は、腰を動かし始める···


「雅彦···」


 早紀は、雅彦の腕を掴むと、


「こっちがいいな」


 恋人掴みをし、ゆっくりと突きあげる。


 あっ···んんっ···


 淳一とは違う、緩やかな波を身体の中心で受け止める。


「熱いの···」

「そう?暖かいけど···」


 波に身体を預けながら、


「違うの。あなたのが···。えっち!」

「早紀。俺、年かな?もう出そう。待ってて」


 片手を離し、早紀の腰を支えつつ、奥までグイグイ攻め続け···


「ウウッ···」


 一言いい早紀に伸し掛かる。


「速い···」

「ごめん?次は···」

「違うの。あなたの胸の動きよ···」

「そっちか。けど、早紀も···」


 雅彦は、早紀の胸の真ん中に耳を当てる。


 ドクッドクッと激しい音が聞こえる。


「なんか、不思議なこと感じね···」

「そうだな。上行こっか」


 床からベッドへと移り、雅彦に抱き寄せられる早紀···


「長かった···」

「うん」


 雅彦は、早紀の髪を触りながら、深くため息をついた。


「早紀···俺はお前とやり直したい」

「えっ?でも···」


 突然のことに、戸惑う早紀。


「玲奈には、正直に言うし。慰謝料でも養育費でも、払い続けるから!」

「でも···」


 早紀は、不安になった。


「大丈夫だから。ちゃんと離婚して、お前を迎えに行くから。なっ!」

「でも···」


(お願い!私の不安を誰か消して!不安を現実にしないで!)


 束の間のふたりの時間を楽しみ、雅彦に駅まで送って貰った早紀。


「俺、ちゃんと···」

「うん。無理だけはしないで。お願いだから···。じゃ···」


 走り出す雅彦の車を見つめる早紀。


 そして···


「あれは···」


 一人の男が、早紀をジッと見つめていた。


「あいつは···」



「ただいま···」


 淳一は、玄関で一声掛けてから、中に入る。


「あ、お帰りなさい」


 エプロンで手を拭きながら、笑顔で俺を出迎える早紀。


「うん。今日、どうだった?」

「それがね!!」


 俺の鞄や服を持ちながら楽しそうに話始めるが、


「二人目?」

「そうっ!!可愛かったわよ。もちろん、和希くんの話や旦那さんの愚痴とか散々聞かされてたけど···」


❨じゃ、あれは見間違い?でも、服が···❩


「その後は?」

「えっ?あっ、まぁ···ブラブラと」


 慌てて言葉を濁す早紀だったが、


「ねっ!お腹空いたでしょ?今日は、お義父さんの···」


 急かすようにテーブルにつかされる。


「ん?あ、あぁっ···」


❨気のせいか?❩


 強引に自分の女にしたものの、いざ他の男と一緒にいるのを見たとなると···


❨カマかけてみるか?でも、そこまでしてもし違ってたら?まっ、いいか。今日は···❩



「あ、あとこれ···。誕生日おめでとう、お義父さん」


 誕生日の言葉と共に渡されたのは、綺麗に包まれた細長い箱。


「ネクタイ。ほら、いま持ってるのだいぶよれてきてるし」

「ありがと。こんなの良かったのに···」


 そうは言ったが、嬉しさは隠せない···


 だが···


「早紀?ここ、どうかしたか?」


 風呂に入ってる時、早紀の首筋や乳房に薄くついたアザがあった。


「えっ?あっ···、どう、したのかな?虫刺されかも」


 そう早紀は言ったが、今はまだ4月。蚊がもう?


「そうかもな。今年は2月でも暑かったからな」

「うん。そう、そう。」


❨でも、一週間もたなかったけどな❩


「早紀···愛してる。お前は、俺の女だ···」


 湯に浸かりながらも、早紀の乳房を揉み、乳首に吸い付く···


 んっ···んんっ···


「早紀···俺の頼み聞いてくれるか?」

「えっ?頼み?なに···んっ」

「お前···パイパンって知ってるか?」

「知ら···ないっ···あっ」


 下もかなり濡れてきてる。


「ほら、毛が生える前の···」


 ピクンッ···


❨どうやらわかったらしいが···❩


「いいだろ?お前は、俺のものだし···」


 早紀は、答えず俺に抱きついてくる。


「···よ。」

「早紀?」

「してあげる。でも、上手く出来るかわかんないから···」

「あぁ···」


❨どういう心境の変化だ?まさか、本当に?❩


 早紀は立ち上がり、洗い場に降り、


 ゴクッ···


 浴槽の縁に片足を掛け、泡立てたボディーソープを陰毛にこすりつけ始めた。


「本当に?早紀、やってくれるのか?」

「うん。誕生日だし、まだ大丈夫だもん。年齢的に···」


 俺の顔を見ずに答える早紀は、いったい何を考えているんだろうか?


 浴室内に、ジョリジョリという懐かしい音が聞こえ始め···


「ど、どうかな?」


 泡を洗い流した秘部を見せてくる。


「触って···」


 早紀は、淳一の手を取り、秘部に当てる。


「どうかな?」

「だめだな」


 淳一は、立ち上がり洗い場に立つと、ゆっくりと早紀を触り始める。


 クチュクチュと指先に感じる湿り気に、淳一は悦び早紀は、


 んっ···んんっ···んっ···


 啼く···。


「まぁ、いいか。ここもいい感じだし···」


(わかってはいた。誰が好き好んで、他の男に抱かれた女を···写真が出回った女を愛すと言うのだろうか···)


「挿···れて···」


 早紀は、そう言い壁に手をつき、尻を向ける。


「早紀···」


 腰を支え、背後から硬くなったペニスを一気に埋め込んでいく···


 あぁっ···


(雅彦さん···。あなたの事好きでした···)


 淳一を受け入れる事で、自身の中から雅彦の気配を消していく。


(それでいい···それで···)


 グニュッ···


 あぁっ!!


 パンッ···グニュッ···


 淳一は、目を閉じゆっくりと奥まで突く···


「早紀···アァッ···いいよ。なんか···」


 あっ···あっ···


 突く度に感じる早紀の肉壁の絡み具合が、いつもよりいい···


「早紀···。お前、俺の子供産んでくれ···早紀···」


 はっ···んんっ···あっ···


「早紀···早紀···」


 出そうになるのを耐え、時折乳房を力強く揉み、乳首を潰すように捏ねては、また突き始め···


「だめっ···あっ···あっ···」

「待てよ、まだだ。まだだぞ、早紀」


 激しく突きながらも、乳房の愛撫を止めず、


「早紀っ!!」

「んぁぁぁっ!!!」


 浴室にふたりの声が、重なり···


「早紀···アァッ···アァッ···」


 淳一は、早紀に覆いかぶさりながら自身が落ち着くのを待ち、抜きながらシャワーを流す。


「変な感じだった···」


 顔を紅くし、息を荒げ笑う早紀···


「誕生日、おめでと。あなた···」


 そう言い、淳一に唇を押し付けた。

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