第2話悪夢再び

 ガチャガチャと冷たい金属音と共に、ストレッチャーに乗せられた母の遺体が、地下の霊安室へと運ばれる。


「早紀···」

「······。」


 グイッ···


 いきなり肩を捕まれ、身体が硬直する。


「行くんだ···。最期のお別れをしに···」


 嘘だと思いたかった。心底憎んでた母なのに、いざこうして死と対面すると···


「どうして···。ねぇ、なんで?なんで、死んだのよぉ!!」


 冷たくなった母の身体を揺さぶり、叩く···。早紀が、何度も泣きながらそうしても、由佳は応える事はなかった。


「早紀···」

「どうして?どうして、あんたは涙一つ···」


 パァーンッ···


 泣いて···る?でも、口元は···


「そこにいろ。外で離してくるから···」


 淳一は冷たくそう言い、廊下で待っていた葬儀社の社員と外へ出ていった。


 薄暗く小さな電球が灯される中、早紀はかつて人間だった物を見下ろす。


「ねぇ、なんで死んだの?」


 ポンッ···


「知ってるよね?あんた。私が、あいつに何をされてたのか。」


 ポンッ···


「知ってて、あんたは何も助けてくれなかった!」


 ボンッ···


「ねぇ、知ってる?私が、昨日あいつに何をされたか···」


 ボンッ···


「ねぇっ!!!!」


 ボンッ!ボンッ!ボンッ!


 恨むべき相手は、義父であって、母でないのはわかってた。わかってたけど、私にはどうあてていいのかもわからなかった。


 葬儀の話をしていたのだろう。淳一は、大きな封筒を胸に抱え、戻ってきた。


「おい、帰るぞ···」


 義父に腕を掴まれ、廊下に。それと代わりに、葬儀社の人が大きな棺を霊安室に入れていった。


「うん···」


 葬儀の手配は、全て義父任せ。私に入る余地は無く、部屋の片隅でジッと見ていた。


 祭壇から何まで全てが終わったのが、明け方。


「早紀、お前上で寝てろ。どうせ夜は、眠れないだろーから」


 そう言われ、部屋にいったものの眠れる筈もなく、ベッドに横になりながら、浸すら天井を睨んでた。



 お通夜は、ご近所の方や遠方に住んでる親戚の人まで来てくれ、その挨拶まで義父がしてくれた···


「早紀···。お前、腹減ったか?」

「······。」


 淳一は、参列者に配っていた折り詰めを開けながら、早紀に勧めた。


「今夜は、ここで寝るんだからな···」


 義父が、何を言ってるのかわからなかった早紀は、視線を淳一へ戻す。


「······。」

「待ってろ。今、布団持ってくるから」


 人一人亡くなったというのに、声のトーンが上がってるように聞こえたのは、気のせいだろうか?


 早紀が、ボソボソと寿司を口にし始めた頃、


 ボフッ···


「客間にあって良かったよ」


 淳一が、布団を一組持ち、敷き始めた。


「これでいいだろ?時期に風呂も入れるから···」


 早紀は、昨日からの事で心がいっぱいいっぱいで、何がなんだかわからなくなっていた。


「早く寝ないと、明日になっちまうな!早紀、来いよ」


 淳一に連れられ、バスルームへと向かう。


「お前はもう俺と生活してくんだ。な、早紀」


 喪服の上から、淳一の手が胸を揉んでいく···


 ジィーーッ···


 ファスナーを外され、裸に剝かれる早紀。


「わかるだろ?早紀···」


 壁に押され、乳房に伝わる淳一の冷たい唇···


「やめて···寒い···」

「そうだな。これから楽しめるし。まずは、今夜だな···」


 淳一が、何を言ってるのかわからなかった早紀だったが、早紀には淳一に抵抗する気力は残ってはいなかった。


「おい、壁に手をついて、尻出せよ」


 言われるがままに行動し、背後から淳一を受け入れる。


 パンッ···


 あっ···うっ···うっ···


 淳一は、早紀の腰を掴みグイグイ奥まで突く。


「どうだ?早紀···。気持ちいいだろ?」


(痛いだけ、こんなの···)


 うっ···んんっ···


「この分なら、早くに妊娠するかもな、早紀」


 パチンッ···


 っうっ···


(お願い···早く終わって!)


 あ···ぁ······っ···


「早紀···出すぞ···」


 ガンガン打ち付けるように突かれ、淳一の熱いものが早紀の中に流れる。


(しみるぅ···早く抜いてよ)


 風呂での行為も終わり、やっと開放されたと思った早紀だったが、


「······。」

「どうした、早紀。寝ろよ···」

「えっ?」


 突き飛ばされ、バスタオルがめくれる。


「そうか、そんなにヤリたいのか···」

「······。」


 ニヤニヤと笑う淳一が、怖くなり後ろへと後退る早紀···。


「どうせ死んでんだ。ここでヤッても平気だよ。早紀···」


 無理矢理手を引っ張られ、布団に倒される。


「いやっ!やめて···」

「なーに言ってんだっ!」


 パァンッ···


「ひっ···」


 パァンッ···


「お前、俺の言うこと聞くって言ったよな?」


 パァンッ···


「は···ひっ···」

「じゃ、そこに予後になって、足広げろよ。ヤリてーんだろ?早紀っ!」


 ビクンッ···


(怖い!なんで?)


 怖さに震えながらも、寝転び足を大胆に広げる早紀。


「いい子だ。由佳、見えるか?これが、お前の娘だ。スケベだろー?」


 ゴクッ···


(いっそ、こいつが死ねば良かったのに!)


「早紀···」


 淳一の唇が、触れ口の中に舌が入ってくる。


 ンッ···ングッ···ンンッ···


「ほんと、可愛くなった···」


 早紀は、遺影の中で笑ってる母に見られてるのが嫌で、固く目を閉じる。


 ハァッ···


 うぁっ···んっ···


「やめ······んっ···ぁ···」

「お前、濡れやすいのか?ま、さっきもヤッたからな。くふふっ」


 淳一の舌は、段々と下へと下がり、


 んっ!あっ···


 乳房、乳首を弄られながら、


 ビクビクッ!!


「ひっ!うっ···」

「お前の···デカくなってやがる」


 卑猥過ぎる声で早紀の敏感な部分をリズムよく捏ねていく。


「気持ちいいだろ?早紀···」


 お線香の香りが漂う静かな部屋に、自分の秘部の音が間近で聞こえてきそうで、思わず耳を塞ぐ早紀。


「そのポーズもいいな。挿れるぞ」


 の言葉と共に、熱く硬い淳一のモノが自分の中に入り、


「んぐっ···ふっ」


 小さな呻き声が出る。


「オオッ···昨日よりいいぞ。アァッ···」


 淳一は、早紀の片足を肩に乗せ、ゆっくりと腰を動かす。


 はぁぁっ!うっ···うっ···


「おうおう。絡まり感、半端ねぇや」

「······。」


 ズチュッ······ズチュッ···


 うっ···あっ···あっ···


「やめっ······んっ···」


(嫌なのに···嫌なのに···声が···)


「アァッ···男知りたての身体って···ハァッ」


(痛いの···痛いの!)


 何度も何度もお腹の奥をガンガン突かれ、


「出すからな。イクぞ、イクッ!!」


 淳一の体重が自分の身体に伸し掛かる。


 息を荒らげる淳一だったが、なかなか動こうとしないで、繋がったまま早紀の胸を浸すら吸い付く。


「お前、仕事辞めろよ。辞めて、俺の世話しろ。なっ?」

「······。」


 コトが終わるとやっと淳一はどき、早紀のを拭いてから横になった。


「私···」

「俺、寝るから。朝になったら、起こせ」

「······。」


 淳一は、下着だけを身につけると、布団に潜り眠りについた。


「バカだな···私」


 暫く遺影を見上げていたが、早紀は立ち上がり再びバスルームへと向かって、身体が真っ赤になるまで洗い続けた。



 葬式の日は、晴れては居たが雲の流れが多くて、参列者は口々に「寒いね」と呟いていた。


 母が、火葬されてる間待合室にいたが、あまり誰とも話さなかった。小さくなった母を抱き、家へと帰る。


 コトンッ···


(あの世でパパに怒られてるだろうな)


 フトそんなことを考えていた。


「お前、いつこっち戻ってくるんだ?」

「······。」

「なんなら···」

「やめてっ!月末には戻るから···」

「月末、な···。それまでに···」


 ボーッとしてて、淳一が後ろにいたのにも気付かなかった。


 そして、あの人があんなことをしていたとは、この時の私には思いもよらなかった。




 母の葬儀が終わって一週間がたった。


「変だな···。いつもだったら、返信来るのに···」


 和倉さんへ、休んだ事のお詫びとお悔やみの礼を伝えようとしてメールをしていた早紀だったが、一向に返信がなく、昼や夕方に電話をしているのだが、伝わらず不安になった。


「どうかしたのか?」


 淳一が、相変わらずニヤニヤした顔で帰り支度をしてる早紀を見る。


「別に。じゃ···。月末、帰るから」

「あぁ。楽しみにしてるからな」


 早紀は、小さな頃から、不安な事があるとそれが何故か現実に起こっていた。


「まさか、ね」


 と思いながらも、職場の上司へ連絡すると手短に切られてしまった。


「忙しいのかもな。騒がしかったし」



 翌朝になり、早紀が職場に入ると騒がしかった部屋が急に静かになったものの、また煩くなった。


「どうかした?あ、長く休んでごめんね」


 同期の田蔵に礼を言うも、


「あ、トイレ行かなきゃ。ふふっ」


 席についてもなんか落ち着かない。


「早紀?ちょっといいか?」


 和倉さんに呼ばれ、席を立つも、誰かに見られてるような気がする。


「珈琲好きだろ?」

「うん。でも···」


 後ろを振り返ると、何人かがバッと向きを変える。


「あ、今からこいつ連れて営業行ってくる!」


 和倉さんが、大きな声で言い、扉を閉める。


「ねっ···。和倉さん?」

「······。」


 何度か名を呼んでも、応えてはくれず、よくデートの待ち合わせに使っていたCAFEにきた。


「なに?」

「ホット2つ」


 それだけをいい、席に着くも、和倉さんは口をなかなか開かず、スマホをジッと見ていて何かを考えているようだった。


「和倉···さん?」


 コトッ···


「これ、どういう事?」


 っ!!


 スマホに映し出されてる写真は、明らかに私だった。目を閉じているが、明らかに義父にレイプされてる写真···


「······。」

「これ、どういう事?お前、俺の外にいたの?」


(違うっ!違うのっ!)


 弁明したかった。でも···言葉が上手く出てこなかった。


「嘘だろ?なぁ?早紀?」

「······。」

「本当なんだな。これ、お前のアドレスから俺と田蔵に···」


 っ!!!


「私じゃ···」

「じゃ、誰だ?お前の男か?」


(いっそ言えたらどんなに楽だろうか)


「終わりだな、もう。顔も見たくない···。これっ」


 千円札を1枚置き、和倉さんは後ろを振り返る事無く去っていった。


「終わっちゃったな···」


(どうして?お義父さん!!)


 気がついたら、制服姿のまま実家の前にいた。


「おっ?早紀?どう···」


 パシィーーーンッ···


 早紀は、淳一の顔を見るなり、頬を力いっぱい叩いて、こう言った。


「ただいま。予定より早いけどいいよね?」

「あ、あぁ。おかえり···」


(許せない。なんの為に?)


 そう思った。


 けど、人を殺める程の勇気は、私には無かった···

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