38話 幼馴染家族もいるととんでもない大家族に見える件。

 ラジオ体操も無事?終わり私たちはまたもや自分たちの席に戻る。先程の件をネタに真をからかってやっているのだけれど、少しからかい過ぎたのか拗ねてしまった。

 興味を持つのは思春期男子としては自然なことだからね、別にムキになることもないと思うのだ。まぁ思春期だからこそ熱くなりやすいというか、素直になれないのかもしれないけれど。……うん、まぁ私も過去そうだった、と思うので、多分そういうことだろう。


 私としてはこー、にっこにっこからかい合えればいいなぁとは思うんだけどね。前世では飲みに行くとそんなバカ話とかしてゲッラゲラ笑い合ったもんだから、そうできないのが少し寂しくもある。

 まぁ今回ばかりは私が先を急ぎ過ぎたのだろう。皆は本物の中学生、片や中身成人のなんちゃって中学生。そりゃ意識の齟齬が出て当然というもの。先を行く私だからこそ、ここは大人として周りに合わせるべきだろう。反省反省。


 とは言え、真もそこまでぷんすこしてる訳では無い。結構単純なやつだから、少し時間が経てばいつも通りニコニコとし出す。……まぁそれは気を許している相手にだけだけど。


 さて、席に戻った訳だけれどここから怒涛のように色々な種目が行われていく。


 応援団と全校生徒による応援合戦。


 そしてそれが終われば各学年の徒競走。


 その次にパン食い競走、からの障害物競走。


 そこまでやってようやく午前の部は終わり、大抵の学生が待ちわびるお昼休憩だ。


 因みに今日のお弁当は私の手作りではない。いや、いつも通りやろーかなーと思っていたのだけれど、お母様が「ワシがやる。お前は手を出すな」と威圧してきたのである。結構な量になるだろうし私も手伝うよーと言ったけれどそれも「いらぬ」の一言で一蹴。台所はお母様の戦場と化してたよ……。気合いの入りようが半端じゃないよね。


『これより、紅白対抗応援合戦を開始致します』


 そうこうしているとあっという間に次が始まった。


 アナウンス通り紅白応援合戦である。何をするかといえば白組、赤組共に互いを応援し合うというもの。音頭を取るのは各組の代表だ。代表者は3年生から選抜され、その代表者が選手宣誓とか最後の旗の受取までやる。一番忙しいと言っても過言ではないだろう。


 現に各代表は今も少し長めのハチマキを揺らしながら壇上に上がっている。


 先に音頭を取るのは紅組のようだ。

紅組の代表は壇上にて大きく両手を広げ声を張り上げる。


「白組のー!勝利を祈ってー!フレェー!フレェー!しーろーぐーみ!!」


 紅組の代表は凛々しい声を上げながら身振り手振り。そして、代表の声に合わせ生徒達もフレー!フレー!と復唱する。


 と、いうのを赤白共に繰り返して終わり。なんともまぁ呆気ない。


 あっさり塩味?


 見所がないからねぇ。こんなもんでは?


 それよりも皆が待ち望んでいるのは実際に体を動かす競技だ。体操や応援合戦……それも良いでしょう。みんなとの一体感を得られる素晴らしいものだとは思う。

 けれどね?中学生ですよ?めちやめちゃ体力持て余してるお年頃ですよ?はっきりいってそれらの良さを知るにはまだまだ子供で、そんなことよりもさっさと体を動かして発散したいのだ。


 実際に周りの様子を見てみれば、次は徒競走ということで活き活きとしている。体操や応援合戦の時なんかはめんどくさそーにしてたというのに、そんなのは何処へやら、今は水場を得たカエルの様に輝いている。


『次は一学年徒競走です。選手は――』


「来たか……行くぞ!野郎ども!!」

『おうっ!』


 聞き覚えのある男子生徒の誰かが音頭を取り、それに習うように気合を入れる男子たち。


 いいねぇ、いいねぇ!輝いてるよー男子!と思う私も入れば、反面、なーんかガキっぽいなんて斜に構えた私もいて思わず苦笑する。


 一体どっちが本心なんだか。


「琴ちゃんもほらいくよー」

「え?あ、うん!」


 みーちゃんに手を引かれたので、慌てて返事をし歩を進める。


 徒競走。


 なんてことは無いただの100mを8人くらい並んで走るというもの。


 因みに私は、徒競走と言えば一位を取ったらゴールテープをきれるんでしょ?とワクワクしていたものだが、実際に走り一位でゴールに到着しゴールテープに触れる瞬間、ゴールテープを掴んでいた二人がひょいと上に上げてしまい、私は虚しくもゴールテープの下をくぐり抜けるだけだった。


 ……アレを経験した時何かを裏切られた気がしたよね。


 パンッ!とスターター・ピストルが鳴り生徒達が一斉に走り出す。我が一位を取る!と皆言わんばかりに必死な顔で腕と足を動かす第一陣達は、仲間の声援を背にゴールテープを目指し突っ走る。まだ子供ではあるが、流石男子。力強い戦いを繰り広げていた。

 先陣の走りを見ている第2陣の男子たちは次は俺の番か……緊張している面持ちである。


 いーねぇ、いーねぇ!これぞ運動会って感じ!走ることが全てではないけれど、やっぱり走るからこそ運動会ってもんやろ!

 あと何組か走れば私の出番である。こーやって待ってる時間って意味もなく緊張してしまうよ。まっ、私ぐらいになればこの程度の緊張は寧ろ心地よい。

 中には表情を硬くしている者もいるが、それはまあ仕方ないだろう。ていうか中学生らしくて可愛いね。


 私はふとあることが気になりキョロキョロと周りを見渡す。


 周りには沢山の人、人、人。


 この中から特定の人物達を探すのは骨が折れるというもの――っていましたわ。


 私が探していた人物達、それは私の家族である。ブラザーズと母と父と、それとばっちゃまにみーちゃん家族えーんど真の家族だ。


 ……あそこ人口密度高ぇな。


 まぁこの三家族は家族ぐるみで何かをするってことが多いからね。運動会ともなれば集まるのは必須。お昼はワイワイすることになるんだろーなー。


 さて、そんなことを考えていたら私の番だ。


 くっふっふっふ。


 ブラザーズが見てる。見てるよー!


 ここはカッコイイ姉パート1を魅せる時!


 目指すは一位。それ以外はいらぬ!


 待っててねー!お姉ちゃんの本気を見せたげるから!!

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