15話 可愛いは簡単に作れる!あれって本当?
はろー!元気一杯琴音ちゃんだよ!
いやー、先日までは大変でしたね。月のモノは本当大変。結局思った通り一日中ダメでした♡朝ほどダウナー琴音ちゃんじゃなかったけど、ほどほどダウナー琴音ちゃんだったよ。まぁ今日も少し下腹部に鈍痛があるし倦怠感はあるけれど、これぐらいならいつもの琴音ちゃんモードいけるので問題なし。寧ろ今日はお楽しみがあるのでそっちの方が大きくて気にならないよね!
そう!今日は待ちに待ったー……土曜日!!土曜日と言えばお買いもの!!お買いものと言えば私のお洋服!!ついに、ついに琴音ちゃんの服装バリエーションが増えるのです!!ボーイッシュなのはたくさんあるけど、可愛い系は全然なかったからね。これでもっとおしゃれの幅が広がって理想のお姉ちゃんに近付けるってもんよ!
私は定番の洋服を着て身だしなみを整える。髪形はどうしようかなぁ。色々試着してみたいしあまり弄らない方がいいかな。というわけで、今日は前髪をピンセットで抑えるだけにする。本当はサイドテールにしたいんだけど、そうすると合う服装が限られてきそうだし。あくまで今日は色々試してどんな感じの服がいいのかを見たいのだ。そのためにはストレートの方がイメージ作りやすいからね。
「お母さーん!私の準備はいいよ!そっちはどう?」
「もう少し待って~」
お母さんはもう少し時間がかかるようだ。でも、髪を弄っているだけなのでそんなには時間はかからないだろう。
私は黙って待ってるにはわくわく感が強すぎて落ち着かないので、ブラザーズのベッドに向かう。もう10時だけれど、今日は土曜日ということもブラザーズはお寝んね中だ。二人とも昨日は夜遅くまで起きていたみたいだからね。特によーちゃんなんかは眠り虫なのでこういう風に時間がある時はお昼近くまで寝ていたりする。
私はそーっとけーちゃんのベッドに近付く。抜き足差し足忍び足。二段ベッドの階段は結構ギシギシといってしまうので慎重に足を乗せなければいけない。ここでバレてしまえば全てがパァだ。
慎重に慎重を重ね、遂に私は目的のものを拝めた。その目的のものとはー?
「くふふ……可愛い」
そう、弟君の寝顔でーす!
今回はけーちゃんのお顔です。いやー。私って自分で言うのもなんだけど中学前半くらいまでは可愛い顔をしてたんですよね。具体的に言うと女性に間違われちゃう感じ。中性的ってことかしら。女装なんてさせた日にはまんま女の子なのよねー。なのでこういう風に無防備な寝顔をさらしてる時なんてちょっとボーイッシュな女の子にしか見えない。妹ができたような感じだよ。
すーすー、と規則正しく呼吸をするその寝顔は正に天使!いやん、可愛い。もうこのまま一緒に添い寝して頬ずりしたい。でもでも、欲望に負けてそんなことしたらもう寝顔は拝めなくなってしまうので今は我慢我慢……が、我慢なんだからね。
私はソーッとけーちゃんの頬に人差し指を当て撫でる。ホントはもっと全身でなでなでよーしよしよし!ギューッ!てやりたいけど今回は我慢。少し物足りないけどこれで満足することにする。
「……ん~」
おっと。けーちゃんが唸り声を上げながら寝返りをうった。これ以上は起きちゃうからやめておきましょう。私は再度、ソーッと階段を降り、今度はよーちゃんのベッドへGO。同じように慎重に階段を昇りヒョコッとよーちゃんの様子を見ると――。
「……ねーちゃんなにやってんの?」
「……」
なんとよーちゃんは起きていました。目と目がばっちり合いましたよ。あれ?さっきまで寝てたんじゃないの?布団被ってたから寝てるもんだと……。あ、手元を見たらマンガ本を持ってらっしゃったよ。これ布団の中でぬくぬくと読んでたのか。
「な、なにも?」
取りあえず誤魔化すべく適当に返事をする。いやだって急にうまい返しなんてできるわけないでしょ?私だって動揺してるんだよ?
「……なにもないならなんでベッドに来てるの?」
よーちゃんは目を細めながら訝し気に言う。あぁそんな目をそんな目をしないで!お姉ちゃん、お姉ちゃんを抑えられなくなっちゃう……。
「可愛い……じゃなくて!えと、えー……そう!ほら!もうお昼になるし起こそうかなと思って!」
「……もう起きてるよ」
「いやほら、ベッドの中にいたから!外を見てごらん。こんなにも晴天!こういう時は朝に起きて太陽を浴びようよ!」
「めんどいからいい」
「さ、左様ですか」
ふーなんとか誤魔化せたかな。あくまで私は起こしに来たのであって寝顔を拝見しようとしたわけじゃないですよ?だからよーちゃんの寝顔を見れなくて残念なんて、微塵も思ってないんだからねっ!うぅ……。
「琴音ー!準備いいよー?」
「はーい!」
よーちゃんとちょっとした問答を繰り返しているとお母さんから準備ができたと声がかかった。私は少し名残惜しいけれど、よーちゃんのベッドから降りる。
「あれ、ねーちゃんどっか行くの?」
「ん?あぁ、ちょっとお買い物!よーちゃんも行く?」
「買い物ならいいやー。いってらー」
「もう、よーちゃんのいけずー。行ってきまーす」
ちょっとよーちゃんが興味を持ってくれたので、こりゃーあわよくば一緒にお買い物って流れでは?と思ったけど、そう上手くはいかないよねー。私も男だった時って買い物嫌いていうか面倒だったもの。でも女の子になってからお買い物とか洋服選びにいくのがこんなに楽しみになるなんて正直思ってもいなかったなぁ。
「おー、いーねー!テンション上がるねっ!」
「テンション上がるのいいけどあんまりはしゃぎすきないでよ」
「だいじょーぶだいじょーぶ!程々に楽しむよ!」
「どーだか」
私たちは車で移動すること10分。近くの服屋に来ました。いやぁまだ入り口何ですけどテンションがね!上がっちゃって!まだ期間中だっていのを忘れるくらいの上がりようです。はい。お母さんなんてそんな私を見て苦笑してるよね。
だってさぁ!今この入口を抜けて入店したらお洋服たくさんだよ?まだ見ぬコーデがあるんだよ?そりゃテンション上がるでしょ!上がるなって方が酷だよね!ね!ね!
我慢できず早速店内に入る。眼前に広がるはたくさーんのお洋服!ここは……宝箱か!!さてさて、さてさてさて!どこから回ろうか!気分的には可愛い系かな!私って、雰囲気によってはキツイ感じに見えちゃうんだよね。腰に手を当ててビシッと指差しをしながら険しい顔をし「あんたばかぁ?!」なんて言った日にはそっくりさんだよね。私の性格が明るいからまだいいけど、これで無口キャラだったり勝気キャラだったら超怖い感じというか感じの悪い女の子になっちゃうよね。なのでできるだけ服装は明るかったり可愛い系の方がいいと思うんだよね。
勿論清楚系を攻めるのも勿論いいし、あえてクール系で知的な麗人を目指すのもいいだろうけれど、やっぱり明るくて優しいお姉ちゃんの方がいいよね。まぁブラザーズの好みがクール系ならそっちにシフトするのもやぶさかではないけれど、当面は今の私路線で進んでいくよ!
「ほぇ~」
本当にたくさんあるなぁ。そりゃ女の子のお買い物には時間がかかるわけですわ。ぶっちゃけ1時間で済ませられる自信がないです。
取りあえず私は一番に目についた、フリルのついたスカートとフードのついたシャツを手に取る。少々子供っぽいコーデかもしれないが、まだ私は中学一年生だからね。あまり大人っぽい格好しても浮いちゃうし、やっぱり年相応の格好って大事だと思うのね。背伸びし過ぎて見るに堪えない格好よりかだったら、自身に合う服装をするのが一番だ。まぁ!今日はどうせだから色々試してみるけどねー!
私は取りあえず、取りあえずとドンドンと籠に入れていく。……おうふちょっと入れ過ぎた?洋服の魔力すげぇよ……。
早速私は沢山の洋服が入った籠を持ち試着室に入る。
「さてどれから行こうか……」
ここは敢えて似合わないであろう服装からしてみるかな。
ガサゴサと籠の中を漁り、パンツスタイルのクール系装備にぃ……フォームチェンジ!
「んむー……」
鏡に映る私。黒いスリムタイプのパンツ。それから白いブラウス、その上にコートを羽織っている。ついでに顔には伊達眼鏡も装着だ。もう時期的にコートは合わないので、着るとしたら秋頃からになるとは思うけど……。やっぱりこれじゃない感半端ないよね。いや、もう少し大きくなったら似合うとは思うけど今着るのは時期尚早だったかな。でも未来は楽しみになったよね。
次はぁ。
ストリート系装備にフォームチェンジ!
少し丈の長いトレーナーにハーフパンツ。うんうん、活発な感じでいーねっ!ある意味琴音ちゃんらしい服装ではあるかな。私はもっと可愛らしい方が好きだけど、これもありだなと思う。これで髪型はポニーテールとかだとばっちぐーかな。
次、次次!
お待ちかねの可愛い系装備にふぉーむ……ちぇんっじ!
フリルのついたワンピース。袖の長さは肘くらいまで、丈は膝丈ぐらいだ。森ガール風っていうのかな。ちょっと風が吹いたら絶対領域が露わになっちゃいそう。
うんうん!うんうんうん!いーね、いーねっ!これいーねっ!!これは私の理想に近いかな!かな!!髪型はサイドテールかな!!おさげを二本ぶら下げて素朴な感じにしてもいーね!これは買いだね!!!ちゃりーん!!
さぁ最後だ!
清楚系かな?
セーラースカートに少し袖の長いシャツ。色合いはパステルっていうのかな。全体的に薄くて明るい色。これでもう少し髪が長くてくるりんぱとかにしようものなら結構グッと来るよね?!ね?!!
私は来ますよ!はい!
「はぁ……ヤバい迷っちゃう……」
あれから更に色々試してみた。
ロリ系とかもやってみた。本格的なゴスロリは流石に一般のお店じゃ置いてないからできなかったけど、それでも可能な限りのはやってみた。なんかオタサーの姫でいそうな服装だったので少し微妙な気持ちになった。姫プレイはNG。
まぁ色々ありましたけど毛局選んだのはスカートを2着とワンピースを1着、それからトレーナーとシャツを1着ずつだ。かなり欲張りかな~なんて不安だったんだけど、予想外にもお母さんは笑顔で買ってくれた。出来るだけ安いもので選んだけど枚数が多いからそれなりの額になったんだけどね。本当ありがとうございます。
お会計を済ませホクホクと家に帰宅した私とお母さん。さて、早速今日買った服を袋から取り出し引き出しへ仕舞おうと部屋に戻ろうとしたその時、ガシッと誰かが私の腕を掴んだ。誰か、そんなのは一人しかいないのだけれど……。
「な、なに?お母さん?」
嫌な予感がする。
私の女の勘が囁くのだ。こいつぁ、危険だぜって。その証拠にお母さんの表情を見てみればニマ~と例の笑顔を浮かべているではないかっ!
「なにって。まずやることあるでしょ?」
「え?ある……かな?」
はて、帰ってからすぐにすること?あ、もしかして洋服の洗濯?確かに不特定多数の人が触ってるであろうから洗濯をするのがベストかな。私はあまり気にしないのだけれど。
「くふ、そりゃああんたのファッションショーに決まってるでしょ?」
「……は?」
へ?なんで?なんで私のファッションショー?いやいや!嫌だよっ!だってその顔してるってことは何かしらあるよね!?絶対服着るだけで終わらないよね!具体的には写真に収めたりするんでしょうさ!!
「そ、それはしなくても……」
何とか逃れなくては……私昔から写真撮られるの苦手なんですよ。前世もそうだし、今の私になっても写真はどうにもムズムズするというか。なのでできるだけ撮られたくないというのが正直なとこだ。
私はシレーッと部屋から出ようとするが、お母さんの手が私の腕を掴んで離さないので出ること叶わず……。
「お会計」
「うっ……」
「結構高かったな~」
「うぅっ……」
「あたしも服買いたかったんだけどな~。あんたにお金かかりすぎて買えなかったな~」
「う~!!わかった!!わかったよぉ!!!」
諦めました。そこ突かれたら何も言い返せないよ……うぅ。ワタシカクゴキメルヨロシ。
こうして初のお買い物は幕を閉じた。
川田家のアルバムに琴音の写真があほみたいに増えたのは言うまでもないだろう。しかもポージングからアングルまで様々。ちょっとした写真集になっていたとか。
もう写真やだぁー!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます