ミッション12:座談会を開催すべし!!ーーシークレットミッションーー

 \♪〜ピーンポーン〜♪/


 液晶インターホンを覗くと、ハァハァと息を切らし、顔を歪めているイケメンの切羽詰まった表情が映し出されていた。


「はい…」

『海、俺!』

「わかってるよ…。今開ける」


 学校から帰宅して約30分。君藤はすでに制服から私服に着替えを済ませていた。志希はまだ制服姿のままだった。


 志希が君藤宅に入ると、素っ気なく背を向けリビングへと向かう君藤。志希はすぐさま家族が在宅かどうかを聞いた。誰もいないという返答に、特に気遣うことなく用件を結論から伝えた。


「さっきの結愛くんって子、霊に取り憑かれてる」


「……は?」


 予想だにしなかった志希の発言。君藤はゆっくりと振り返り、続きを静かに待った。


「それがさ、海と結愛くんが対峙してた時、俺偏頭痛起こしちゃってたんだ」

「偏頭痛…。それで?」

「自分に憑依された時は頭痛はなくて、心に変化をもたらすんだ。心情がもろに伝わる分、その幽霊の生活背景までわかっちゃうっていう…。でも今日はそんなことなくて、単なるただの偏頭痛」

「…憑依された時の”心の変化”って?」「俺の体質上今まで憑依された時は、急に強めの胸騒ぎに襲われてばかりでさ。つまり、強めの胸騒ぎに襲われる=霊探知機の役割を果たしてたってわけ」

「霊感強いのは前にも聞いてたけど、それってしんどいな」

「まあね。体質を恨むよ…。これが偏頭痛かぁって、初体験の時みたいな感覚だったけどね」

「ふーん。お前ってもうチェリーボーイじゃねぇんだな」


 話が脱線する。


「は、当然。卒業したのは中3の時。ていうか、お前って前は散々悪かったくせに女経験ゼロ?」

「悪いかよ…」

「マザコンこじらせてたらそうなるもんかねぇ」

「痛ましい目で俺を見んな」

「もったいない。黙ってても女が寄りつくのに、来るなオーラ全開じゃあなぁ…。ホント、早く経験できればいいな。結局はお前次第だよ。素直が一番!」

「…話めっちゃ逸れてる」


 そんなふうに指摘した”正真正銘チェリーボーイ君藤”こそが、話を逸らした張本人である。


「一応知り合いの霊能者に聞いたんだ。そしたらやっぱり自分以外の近くにいる人物に霊が憑依してる時に起こる症状らしいんだ」

「その幽霊に心当たりは?」

「多分また由紗ちゃん関連だから、何度か俺に憑依してた霊が今回は結愛くんに憑依してるって考えるのが普通だと思う」


 君藤は少々志希を気の毒に思う。体質とは言え、自分にはし得ない経験をしているからだ。


「で?偏頭痛、今も続いてんの?」

「それがさ、由紗ちゃんと結愛くんが俺らの前から去ったあと、不思議なことに急に偏頭痛が消えたんだ」

「そっか…」

「あと、霊的なことは抜きにしても、やっぱり結愛くんは憑依されてるのかもって思った」

「なんで?」

「海が過去の話をした時、結愛くんの様子がおかしかったじゃん?だから」


 君藤もそのことは引っかかっていた。


「うん。そんな遠い過去でもないのにすべて忘れ去ったかのような、とにかく様子が変だった」

「忘れ去ったんじゃなくて、単に結愛くんの過去すら知らなかったからあんな感じだったんだろうなぁって」

「志希に憑依した霊と同じ霊なら、ほら、お前が前に言ってたじゃん。あいつに対して”並々ならぬ熱意と深い愛情”。それと、”深刻な苦しみと悲しみ”も伝わってきたって。その霊だよな」

「多分ね。海、急いで二人を探してこい。じゃないと今頃ヤバい状況かも!」

「場所ならどこかわかってる」

「は!?どこ?」

「ジャスミンっていうラブホ」

「はあ!??お前知ってて放置?好きな女が他の男とラブホだぞ!?もう手遅れだそれ。由紗ちゃんもなんでついて行っちゃうんだよ」


 その疑問の答え。それを君藤は何度も思案していた。


「よくわかんねぇよ。…けど、すでに結愛の中身が誰か気付いてるからじゃねぇの?」

「あーそっか…。いやいや!だとしても、由紗ちゃんに恋愛感情を抱いたまま死んでしまった男だったら、ものすごく厄介なんだって!他の男の体で無理やりってこともありえるじゃん」

「それはないわ」


 即断言する君藤。


「なんでそう落ち着いてられるの?お前」

「ソレ目的じゃなくて、大勢でラブホでの娯楽を楽しんでるから」

「…ん??」

「さっきうちの義理の妹があいつらに誘われて、今一緒にラブホにいるから心配ない。他のヤツもいるんだって」

「なんで大勢でラブホ?娯楽施設化してるわけ?ラブホの設備は刺激的だし興味はあるけど」


「本当に”あゆみくん”…なのかもなぁ」


「え?あの幽霊があゆみくんって名前なの、海知ってんの?」

「おまえこそ」

「あー、俺は由紗ちゃんへの愛情が強い幽霊に何度も憑依されてる身だからさ、独自に由紗ちゃんに調査して知ったんだ。あゆみくんのことは口外禁止だったみたい。理由は聞かなかったけどね」

「口外禁止…。そっか、志希はもう突き止めてたんだな。やっぱ”あゆみくん”があいつのそばにいる厄介な幽霊だったんだよなぁ…。”妄想の友達”じゃなくて…」

「妄想?」


 由紗が君藤と会ってる際、無意識にあゆみに話しかけてしまった時のこと。君藤にあゆみのことを”妄想の友達”だと説明した。


「あいつは咄嗟にそう言ったけど、ずっと引っかかってた。目に見えないそいつと仲良さげに会話してたし、心を許してるって感じだった。妄想の友達相手に会話するなんてイカれてんじゃねぇかって思いつつも気になっててさ…。だけど、無理矢理頭の片隅に追いやったんだ」

「そりゃあそうだろ。異常で厄介事なのは明確だもんなぁ。踏み込みづらいのはわかる。…ところで、海?」

「ん?」

「あのさぁ…今気付いたこと言っていい?」

「いいけど…何?」

「俺って、悪いタイミングでここに来たよね」

「ん?」

「だってさぁ、ジャケット着てるってことは出掛けるからじゃん?あとほら、ずっと手にカードキー持ってるし」

「…」


 君藤は自分の手をちろりと見下ろした。


「つまりお前は、俺が急かしに来なくたって、由紗ちゃんのところに行くつもりだったんじゃない?」


 君藤はバツが悪そうに後頭部をかき、カードキーをダイニングテーブルの上に用意されていたモンブランのそばに置いた。


「志希。ゆっくりしてけよ。よかったら俺のモンブラン食べてって。カードキーは郵便受けに入れといてくれればいいから。じゃあな」


 君藤はゆっくりと玄関まで歩き、平常心を保っているように見えた。ところがバタンッと玄関ドアが閉まった瞬間、バタバタと騒がしく走り去る足音が聞こえてきた。


「やっぱムッツリだわ。あいつ」




 **


 残り少ない時間の中で、あゆみは由紗のミッションをクリアとし、次に最初で最後の自分へのミッションを遂行しようとしていた。


 由紗が準備してくれたこのかけがえのない時間を無駄にせぬよう、精一杯の思いを込めて......ーーーー。



 そして。


 結愛(あゆみ)が切望した座談会が、ラブホジャスミンで開催されたのだった。




 〜〜〜


 結愛(中身あゆみ・以後結と省略):「気になってることがあるんだけどさ、もしかして君藤先輩は…嫉妬作戦の常習犯?」


 スーミン(以後スと省略):「え、そうなの?…でも、ユーミンのこと大好きなツンデレ野郎だとは思ってた」


 莉茉(以後莉と省略):「そうだよね。君藤先輩、誰も知らないところで由紗に思わせぶりなことしてたもんね」


 萌香(以後萌と省略):「ちょっと話が長くなるけど聞いてくれる?」


 結:「もちろん。聞きたい」


 萌:「お母さんの凛子さんが言ってたんだ。海くん、今多分由紗ちゃんに対する生まれて初めての感情に振り回されてて、どう由紗ちゃんと接していいのか四苦八苦してるんだと思うって。猛烈に愛情に飢えてて、依存させてしまったのは自分の責任が大きいとも言ってた。だから、海くんが嫉妬するのは幼少期からの体質みたいなものなのかもしれない」


 結:「萌香ちゃんは、君藤先輩の嫉妬作戦に協力したの?」


 萌:「当然!由紗ちゃんはじきに私の義姉になってくれる人だと勝手に思ったし、何より、海くんの切実さに負けたってとこかな」


 結:「君藤先輩はなんて言って最初に協力を仰いだの?」


 萌:「何も言われてない」


 結:「え?」


 萌:「由紗ちゃんと初対面した日、(抱き合ってる)由紗ちゃんと志希くんのことを悲しそうに見つめてた。じーっと。それはそれはもう切実で、私までツラくなっちゃって。やっと歩き出したからそのまま二人のそばを通り過ぎるのかと思いきや、(抱擁中の)二人のそばに立ち止まって、ちょっと前の切実な顔とは打って変わって、凛とした顔で二人を見つめてた。私はその時、正直修羅場を見るのは嫌だったから咄嗟に海くんの腕に手を回してその場から離れるよう促そうとしたの。そしたら、二人が私たちに気付いちゃってさ。視線と表情から由紗ちゃんがどうやら海くんと私の仲を気にしてるって察して、誤解された?って思ってたら、『萌香離れて』って海くんが強めに言ったの」


 結:「意味深に?」


 萌:「そう!それはもう思わせぶりっていうか、浮気現場を彼女に見られた男が慌てて浮気相手に促す風っぽく言ってきたから、やましい仲だと勘違いされるよその言い方!って思ったけどさ。その時海くんが私だけに見せた目は、また寂しげで切実な目に変わってたんだ。『ノッてきて…お願い』そう言われてると判断してからの私は、超小悪魔な”やましい仲の女”を演じ切ったってわけ」


 莉:「義理でもさすがは兄妹だよねぇ。ツーカーの仲ってやつじゃん」


 結:「具体的にはどう”やましい仲の女”を演じたの?」


 萌:「由紗ちゃんと志希くんが見てる前で海くんの腕に執拗に抱きついて、『今日海くんち泊まってもいい?』って言ったりしたなぁ」


 結:「嫉妬を助長させる演技がだんだんエスカレートしていったの?」


 萌:「まさにそれ。最初は由紗ちゃんのことを思うと抵抗があったけど、最終的には『とことんヤキモチ妬かせちゃおう!』っていろいろ提案して調子に乗って実行しちゃったのは確かだよ。それはさすがに無理って却下されたのがほとんどだったけどね。でも海くんもかなりの変態だよ。最初こそ控えめだったけど、”ただならぬ仲”の私が妊娠したと思わせるような演出をした時はさすがにイカレ野郎だと思ったわー」


 莉:「え…?あの君藤先輩が…?」


 萌:「そう。”由紗ちゃん好きが祟ってこんなことを謀ってしまいました”的な雰囲気を醸し出さないんだよねぇ、海くんって。企んでは何もかもを飄々とこなすの」


 結:「そっか。だけどそのスマートさがたまにキズなんだよなぁ...」


 ス:「そういえば結愛って、君藤先輩とはヤンチャ時代の知り合いだったんでしょ?まさかあの麗しい君藤先輩もだったとはねぇ」


 萌:「あ、それちょっとだけ凛子さんに聞いたことある。族って言ってもリーゼントして、特攻服着て、夜の街を騒音バイクで蛇行運転なんて古いタイプの族じゃなくて、どちらかと言うと、ニューヨークのストリートギャングみたいにカジュアルテイストの服装だったから、はたから見れば普通の若者だったみたい。ただし、あの綺麗な顔に傷と痣が絶えなかったみたいだよ」


 莉:「我が校のプリンスが少し前までは荒んだ生活を送ってたんだね。信じ難いけど、その姿も尊そうだよね〜」


 恵瑠(以後恵と省略):「海李が由紗ちゃんの前で萌香ちゃんとイチャつくという大胆作戦に挑んだってことが、とてもじゃないけど信じらんない。喧嘩に明け暮れて恋など知らない”美しき豹”が、初めて恋を知り、一人の女に執着する。そこまではドラマチックだけど、嫉妬作戦なんて…なんか複雑〜」


 ス:「人間らしくて俺は好きだなぁ。すでに自分のことを大好きでいる女にもかかわらず、わざわざ嫉妬させてもっともっと自分に惹きつけて、よそ見できないように企んで執着してる感じが」


 恵:「海李は僕が起こした”由紗ちゃん監禁事件”のせいで、由紗ちゃんを危険な目に遭わせたくないから、彼女としてそばに置かないって決めたんだとしたら…。やってることはあべこべじゃない?」


 萌:「多分海くんはね、由紗ちゃんを守るには自分から遠ざけなきゃいけないって決意してても、無茶苦茶だけど、それ以上にもっと由紗ちゃんの心を掴むことに必死だったんだよ」


 莉:「由紗の安全が最も大事だけど、自分の溢れる気持ちを無視できなくて葛藤した結果、そばには置かないけどちょっかいは出す的なね」


 恵:「あの海李が…女に狂ってる…」


 萌:「恋は盲目!元ヤンも恋に目覚めれば、ケンカなんてくだらないものだって気付くってもんよ。海くんみたいな冷静沈着な人でも、理性や常識を失ってしまうほどの相手にめぐり会えたんだから、すごいことだよね」


 恵:「”理性や常識を失う”ねぇ…。相手があの子だと、それも仕方ないか…」


 ス:「うわぁ〜、今の発言めっちゃ意味深。ユーミンの”天然人たらし”は罪だわぁ」


 莉:「本当それな!隠れ由紗ファンまだまだいると思うわー」


 萌:「さすがは我が義理の姉!って、話が脱線したんだけどね。海くんは昔から嫉妬作戦の常習犯だったらしいよ」


 ス:「は?今回だけにとどまらず、昔から…!?」


 萌:「そう。凛子さんが海くんの話をしてくれた中で、強烈に印象に残ってたことがあってね。海くんが幼い頃、凛子さんと彼氏さんが家の近くでイチャついてるところを目撃したらしくてね。なんと、通りかかった女の子の手を咄嗟に繋いで、二人の周りをくるくる回って見せつけてきたらしいの。その行動は嫉妬からくるものだって凛子さんが気付きました。それはなぜでしょう!はい、解答を住田くん!」


 ス:「えぇ!?いきなりクイズ番組形式?母を恨めしく横目で見つつ女の子とわざとらしくキスしたから」


 萌:「ぷッ!戸惑い後の素早い解答笑えるー。でも不正解〜。残念」


 ス:「チェッ。ザンネーン(棒読み)」


 萌:「では正解を言います。海くんが凛子さんにあることを言ったからです。それはーーー『母親のくせに凛子は俺がこの子とキスしても平気なの?』でした。凛子さんはそう言われて面食らったけど、母性本能をくすぐるかわいい行動をした我が子をいてもたってもいられずすぐさま抱きしめたんだって」


 菫:「それ、女好きな私でも抱きしめるレベルに愛おしい〜♡」


 萌:「その後も凛子さんが彼氏と仲良くしてるとその度に女の子やぬいぐるみ、しまいにはその辺にいた若い主婦やおばあちゃんに相手を変えて見せつけたっていうから笑えちゃうよね」


 恵:「それさぁ、もはや今以上にヤバいヤツじゃない!?伝説になるくらいの!僕にも嫉妬作戦してほしいなぁ」


 ス:「あきらめな。ムリだよ」


 恵:「グスン...」


 萌:「嫉妬させれば自分を気にしてくれて抱きしめてくれる。気持ちを繋ぎ止めれるんだって悟ったんじゃないかなぁって凛子さん言ってた」


 恵:「だから萌香ちゃんは海李が由紗ちゃんと志希くんが抱き合ってるところに遭遇した時、幼い頃の海李を回想できたってことなの?」


 萌:「はっと気付いたのは海くんに目で『ノッてきて。お願い』って訴えられてる気がした時だよ。でもあとで知ったんだけど、私とイチャつき作戦をしたその時、その嫉妬作戦に繋がるある作戦をすでに終わらせてたんだよ。海くん」


 菫:「…やっぱさすが想像以上に君藤くんって策士だよねぇ」


 結:「何か知ってる風なその言葉、気になるなぁ…」


 菫:「んー?どうだかぁ〜。それより続き聞きたーい!」


 萌:「では時系列でお伝えしましょう!長いから早口でいきますよー」


 恵:「うわー、それ海李が聞いたら死んだ顔して、『俺をネタにすんじゃねぇよ…』って言うやつじゃない?」


 萌:「ここにいないから大丈夫!」


 恵:「無慈悲〜…」


 萌:「ではいきます。まずわざと自分のスマホを由紗ちゃんがいる自室に置いて外出。合流した私のスマホから自分のスマホに電話。当然着信音に気付いた由紗ちゃんは画面を見ることになる。知らない女子の名前、つまり私の名前に胸騒ぎを覚え、志希くんと外に出てきて運良く海くんと私に鉢合わせ。そして海くんの『萌香離れて』というただならぬ仲を匂わす言葉を聞いた瞬間、由紗ちゃんはさっきの着信女子はこの子、つまり私だと直感する。さらなる胸騒ぎに苦しむ由紗ちゃん。以上、時系列でお伝えしました」


 莉:「改めて思う。策士イケメンはずるいわー」


 恵:「まさにそれな!」


 萌:「ここまで海くんが計算高いのは、幼少期の影響からなんだと思う。嫉妬に狂って自分にもっと執着して欲しいと愛する人に願ってる。だから海くんは策士で嫉妬作戦の常習犯なんだよ」


 結:「そこまで先輩は由紗のことを...。叶わないなぁ...」


 恵:「そうよ、思い知りなさい。あんたはまだまだ海李の足元にも及ばないんだからね。…って、由紗って呼び捨て図々しくない?」


 結:「じゃあ恵瑠ちゃんも呼び捨てしなよ。羨ましいんでしょ?」


 恵:「んなバカな!…ていうかさ、僕のことは恵瑠ちゃん呼び?…かわいい響きじゃ~んっ♡」


 萌:「あ、そうそう。凛子さん今妊娠中なんだよ。でさ、判明する前、体調不良で産婦人科に受診したんだけどね。結果、妊娠してるならSNSで【祝妊娠】ってビックリマーク付きで送ってきてって海くんが要求してきたの。その日はどうやら由紗ちゃんと会う日だったみたい。もしかして由紗ちゃん、策士兄貴の思惑にまんまと?」


 莉:「はまったなそりゃあ。…あ、そういやぁ由紗、あからさまに元気ない日あったわー」


 ス:「あったね。目の下にクマできてたしね。愛する子に長々と誤解させたままなわけないだろうから、すぐ誤解を解いたんじゃない他の女の子との間に子供が!!って勘違い&嫉妬させるってさ、イカれてるっつーか、狂ってるっつーかさ…。ヤバい人だわー」


 結:「自分の母親が本当に妊娠してるって確証があったのかはわからないけど、もし妊娠してたらそのことも利用しちゃえって思ったんじゃね?軽い気持ちで」


 莉:「軽い気持ち?そうかなぁ...。女子に無関心な君藤先輩の心に革命をもたらした逸材なんだよ、由紗は。最初は戸惑いながらもちゃんと心を決めて、真剣に自分と向き合った結果なんだと思うなぁ。だから、すべての嫉妬作戦はいつでも真剣で、大真面目だったと思う」


 結:「……もう俺の策略はどう足掻いても通用しないってわけか」


 ス:「…ん?結愛、話が見えないけど?」


 結:「本当は最初の方から気付いてたんだ…。それでも覆すことができるって自分に言い聞かせてやってきたつもりだった…」


 莉:「あ…え?どうしたのこの子。目がうつろだし、ブツクサ呟いて完全に危ない野郎と化してんじゃん!?」


 恵:「急にどうしちゃったの?何かわけがありそうだね…」

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