恋愛成就、指南します!〜耳元からのアプローチ〜

佐々ハナコ

プロローグ:正体不明のイケボくん!!


『私は世界一幸せ者だ♡』ーーーー



 なぜなら、宮浜高校2年”みんなの憧れ”君藤海李(キミトウカイリ)先輩が、私、同校1年”平々凡々女子”相川由紗(アイカワユサ)を抱きしめているから......ーーーー。



「お前のせいだ。バーカ...」



 それは...すみません。で、 とは...。 そう。二人はなんと......下着姿なのです!!


 それにしても、なぜ憧れの少女漫画的展開を超越し、アダルト街道まっしぐらなのかと言いますと...。


 それはーーー突然現れた、”恋のキューピットくん”の悪ふざけ?という名ののせいなのです。



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 ※※ 尚、以上の場面が訪れるのは、まだまだ先のことになりそうですのであしからず。


 このわけのわからない”最高潮シーン”をいつでも思い出せるように、どうか頭の片隅に留めておいてください。

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 まずは予告までーーーー。




 **


 私が大好きすぎる一つ年上の高校2年生、君藤海李先輩は、学校一のイケメンモテモテボーイなのに、女嫌いで有名な不憫なお方...。身長178センチ。手足の長い細身の体格だけでも、一際目を惹く。全体的に少し長めのサラサラヘアーは色素が薄く、柔らかな印象を与える。それに加え、繊細さ、儚さを感じさせる。ややつり上がった涼し気な目元と、滑り台のようにスッと通った鼻筋は特に惚れ惚れポイント。そして、俯き加減で一点を見つめ、物思いに耽っているような仕草がなんといってもたまらない。そんな時折、物憂れげな雰囲気を醸し出し、色気を助長させている仕草は、まさにため息ものなのです。


 そんなモテ男オーラ満載の君藤先輩を校内で目撃した瞬間、私の心臓は早鐘を打つ。こんなにも外見的に欠点のない完璧な色男ゆえに、女子をとっかえひっかえしていてもおかしくはなかった。それなのに、君藤先輩を遠目に女子がやいのやいの騒いでいるだけで、自発的に女子と絡むことはしなかった。

 そのことが、恋する乙女たちのアタック意欲を低下させていたのだった。


 究極の女嫌いーーー


 嫌われること必至ゆえに、それでもアタックするぞーっと、意気込む女子はまずいやしない。女子の誰もが遠目で姿を追い、淡い想いを抱いているだけ。だからいつしか、”観賞専門イケメン”として崇拝されていた。


 いつも黄色い声を浴びせる女子たちに囲まれ、不機嫌な顔でだんまりを決め込む君藤先輩。それゆえに、私は一度も君藤先輩の声を聞いたことがない。


 謎だらけの君藤先輩に強すぎる興味を抱く私に限っては、女嫌いで有名な先輩への想いを募らせるどころでは留まりはしなかった。無論、野心に燃える肉食女子と化していったのだ。そして心の中で強く願った。



『誰か憧れの君藤先輩をおとす方法を教えて!!』ーーーーと。



 難攻不落な先輩をおとすと意気込むも、無謀だと皆が首を横に振り、呆れる始末...。それでも諦めきれない由紗の運命が、突然動き始めるーーーー。


 ある日のこと。


 耳元で、ゾクッとするほどの低音の美声(イケメンボイス・通称イケボ)が聞こえてきたのだ。


 私の推測が当たっていれば、その声の主は同世代の男子。(15才~20才あたり?)


「俺に任せて。あんたの恋を成就させてあげる」

「14個の恋の助言を完璧に実行すれば、難攻不落の彼でも間違いなくあんたにおちる」


 胡散臭い。これが正直なところで...。しかも、なぜか360度辺りを見回しても、声の主くんの姿はどこにも見当たらない。どういうこと?遠隔操作で私の周辺からなんらかの機械を使って声を聞かせているとか?本当にわけがわからない。


「ただし、一つでも実行が失敗に終われば、あんたの恋はそこでジ・エンド。諦めな」

「諦めなくてもよくない?なんの権利があってそんなことできちゃうわけ?」

「あんたには幸せになってほしいから、俺の言う通りに動いて。必ず...」

「答えになってないんですけどぉー...」

「あと、このことは誰にも口外しないこと。いい?」

「了解しました」


 その声は初対面、いや、初聴取?にも関わらず、私に対して切実に訴えてきたため、わけがわからないまま要求を承諾していた。興味深いけれど、猜疑心を抱かずにはいられなかった。


 声が聞こえてきた次の日から14日間、1日1個の恋のミッションをクリアすれば、君藤先輩との恋が成就するというーーーー。


 誰がこんな魔法じみたこと......信じます?


 だけど、藁にもすがる想いの私は、これを運命の恋のキューピットの仕業だと思いたいあまり、躊躇わず信じることにした......ーーーー。

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