明瀬図書館

睦月尊

プロローグ

 「おや、いらっしゃい。初めましてのお客さんだね?ようこそ、明瀬図書館へ。私は、ここのオーナーを務める鬼谷きたにだ。私のことは、好きに呼んでくれてかまわないよ。どうぞよろしく。

 ん?ここはどういう所かって?ああ、迷いこんできてしまったんだね。ハハハ、大丈夫だよ、ちゃんと帰れるさ。ここは、名前通り図書館だよ。ただ、置いてある本が少しばかり特殊というか、変わっているというか……。この図書館には、こことは少し違う世界の話が詰まっているんだ。いいや、単に外国という話じゃない」

 少しの沈黙。そして、オーナーがまた口を開く。

 「──君は、“お化け”を信じるかい?ふふ、その顔は、信じていなそうだね。きっと、人間たちが産み出した、空想上のものだと思っているのだろう?でもね、確かに君が住む世界にはいないかもしれないけれど、そことは違う世界には、たくさん存在しているんだよ。“あやかし”や“怪物”、“精霊”といった類いの者たちがね。ここには、彼らの物語が置いてあるんだ。彼らが、自らの手で紡ぎだした物語がね。

 おや、少し興味を持ってくれたようだね。なら、この栞を君にあげよう。これは、この図書館への道標だ。これを持っていれば、君がここに強く心惹かれた時、またここに来ることができる。ん?今日はダメなのかって?そうだね……気持ちは嬉しいけれど、もう時間も時間だから。帰らなくてはならないだろう?大丈夫、君がここを思い出す限り、また来られるから。さあ、もうお帰り。また君に会えることを、楽しみにしているよ」

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