第2話 外部授業

それでも養成所はいつも通りで。

朝から晩まで、何事も無かったように授業を行う。


体操、発声、演技、行間を読む…そしてアフレコ。



しかし、今日はいつもと違って外部から講師が来ていた。


今日の外部講師は人気アニメ「ナナシの恋」の音響監督。

仕事の前線に立って音声を操る特別講師の意見はとても有益。


実際、彼らの配役で声優は入れ替わるのだから、当事者の意見を聞くのが一番いいと思う。



「今日は来ないかと思ったんだけどね」


彼は、養成所の中で特に仲の良い友人、島風 凪(なぎ)。

歳も近いし、何より話が合う。

そしてお互い向上心が強かったので、良いライバルとして、意気投合した。


「どして?」


私が尋ねると、彼は自身の考察を話してくれた。


「ほら、今朝の事件…あの声優って『ナナシの恋』のヒロインだったから」


そうか、考えてみればその通りだ。

事件の事で、あの作品自体をどうして行くのか…今は講師の仕事所では無いだろう。



10分間の休憩も終わり、私たちは教室へ戻った。



少しして、外部講師が現れる。

挨拶と共に、何事も無かったかのように授業を進める先生方。


しかし、一方で私達生徒は違った。


今日の外部講師に気に入られると、アニメに出演出来る可能性があるからだ。

それはどんなに小さな端役でも、私達にとっては喉から手が出るほど欲しい役でもある。


だから皆、いつもよりは真剣に、そして愛想良くいるのだろう。

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