「円卓の騎士」 長い吐息

若狭屋 真夏(九代目)

円卓の騎士たち

「アーサー王物語」の中にアーサー王に仕える12人が一堂に会する場所として円卓という丸い机がある。円卓という事は誰が上位になることもないという事だ。

12人というのはキリストの12使徒から来ているらしい。


S県のとあるビルに通称「円卓の騎士」という人間が集まるようになったのはもうだいぶ前の事だ。S県に住んでいる人でさえほとんど知らない。本来は「自衛団」として活動していたらしいが戦後だいぶたち無用の物として皆から忘れ去られた。

しかし今でも「自衛団」の生き残りがいた。彼らの事を通称「円卓の騎士」と呼んでいる。

まあ、呼んでいるのは裏社会の住人か一部の警察関係者である。

しかし呼んでいる人間でさえ円卓の騎士の一人身元を知るどころかあったこともない。まったく都市伝説と言ってもよいような話であるが彼らが活動しているのは明確な事実である。なぜなら彼らは事件に所々「足跡」を残しているからだ。


数年前、県が大規模な公共事業を行うため入札を行った。入札というのは「これくらいでやってほしい」と行政の理想価格があってその金額に一番近い金額を書いた企業に落札される。もちろん行政の理想価格は公表されないがなぜか100%に近い数字で落札される。

まあ、入札を担当している役人が小遣い稼ぎに理想価格を漏らしているのは明白であるのだが彼らを追い詰められないのはその金がいろんな場所に行っているからだ。

しかし数年前の入札は前日になって中止された。

知事と議会あてに一枚のSDカードが届いたからだ。

白い封筒に赤い蝋が落とされその上から印が押されていた。

SDカードを開くと入札の時の企業からもらった金が入札担当の役人から副知事に流れている証拠が入っていた。現金を受け渡したときの写真である。また入札した企業名で入金されている副知事の通帳の写真。もろもろである。

あと入札した企業の社長と副知事あとS県の指定暴力団関係者が恐らく都内のクラブで会食している写真には知事も言葉を失った。

知事も議会も見逃すことはできなくなり副知事と入札した会社の経営者は贈収賄で逮捕された。

地元の指定暴力団にも警察が立ち入った。


もちろんこの行動が「円卓の騎士」の起こしたことという確信はない。

しかし送られてきた情報は普通の市民には得ることのできないものである。

いや、警察や検察が入っても得ることは限りなく難しい。

それをいとも簡単に知事や県議会に送られては警察としての立場はない。


しかしそれから先もその不気味な行動がたびたび起こった。


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