妹ハーレム ~どんどん増える妹たち~
吉乃直
プロローグ 俺と妹の話をしよう
妹って最高だよな!
おっと、突然失礼した。初めまして、突然だが俺こと
一つ年下の高木
友人曰く、ヤンデレっぽいらしいのだが……俺はそうは思わない。ちょっと嫉妬深いだけだ。……多分。
毎日犬みたいに甘えてきて、すごい可愛い。実際に尻尾があったら、プロペラ並みに振り回してると思う。
次に二つ年下の高木
光月は茶髪だが毛先が金色になっていて、それをポニーテールにしている。それがちょっと三日月っぽい。
物静かな性格で、人見知りが激しい。こっちが一応姉になる。
朝日は茶色の癖毛をショートにしている。
活発的で、勉強よりも運動の方が好きなやつだ。そしてめっちゃフレンドリー。こっちが一応妹。
俺含め四人、しかも一年単位で産まれてるとか両親頑張りすぎだろ。何がとは言わないけど。
さて、本題に入ろう。俺は俗に言うシスコンというものだ。まったく、俺のどこがシスコンなんだか不思議でならないぜ。ただ妹たちが好きなだけなのによ☆
それはさておき。
何故俺がシスコンになったのか気になる人もいるだろう。……え? 気にならないって? いいから聞いてけ。
その経緯は俺の過去にある──
◇妹◇
光月と朝日が生まれ四年が経った頃、父さんの仕事が忙しくなり家にいないことが多くなっていた。
当時六歳、つまり小学校一年生の俺は、幼馴染みに事情を説明し、片っ端から遊びなどの誘いを断って家事を手伝っていた。
と言っても、家事はほとんど母さんがしており、俺がやっていたのは掃除と妹の相手くらいだが。
その時から妹がとても可愛く思えた。
三人とも幼さゆえ、ずっと俺に付いてくるのだ。
想像してみてくれ。幼い妹たちが俺の後を遅れながらも付いてくる姿を。
もうそれがすっごい可愛かった。
妹たちの世話や母さんの手伝いに明け暮れた生活をしていると、あっという間に時は過ぎて茜が小学校に入学してきた。
二年生になった俺は可能な限り一年生の教室に
そして学校から帰宅したら光月と朝日の相手。それと家事の手伝い。
それが俺の当時の日常だった。
更に一年が経ち、遂に光月と朝日も小学校に入学してきた。
それからの俺の学校生活は、より慌ただしいものとなった。
休み時間のたびに、二年と一年の教室を行ったり来たり。
お陰で同年代の友人は幼馴染みの二人だけになってしまった。
だが、そんなことなど当時の俺は気にしてなかった。
俺にとって最優先すべきは妹なのだ。
ついでに、一年と二年の子たちに名前と顔を完全に覚えられていた。
やったね、有名人だよ。
俺が六年生になった頃、ある呼び名で俺は小学校の有名人になっていた。
──シスコン。
シスターコンプレックスの略で、女きょうだいのことが好きな人を指す言葉らしい。よく分かんないケド。
朝教室に入れば、特に親しくもない男子どもから「シスコン」とからかわれ、そいつらを友人たちが追い払う。
毎日同じことの繰り返し。
正直、シスコンと呼ばれてもなにも思わなかった。
だって妹が好きなのは事実なんだぜ? 否定する理由もないし。
と、そんな日々が過ぎていき、小学校の卒業式が近付いていた。
そしてある日、俺はあることに気付いた。
「俺が卒業したら、誰が妹たちを守るんだ!?」
そのときの呆れ果てた友人たちの顔は、よく覚えている。
結局、友人の弟が光月、朝日と同い年ということで、不本意ながらそいつに二人の護衛を任せることにした。
勿論、妹に手を出すなときょうは──コホン、釘を刺しておいた。
それから中学校に進学しても、俺のシスコン疑惑は晴れなかった。
それどころか、どんどんシスコンが浸透していき、先輩方から「おっ、シスコンくんだ」と呼ばれるようになってしまった。
あの頃、みんなの中に『俺=シスコン』って方程式ができていた気がする。
まぁ、俺はそんなこと気にせずに、今まで通り妹最優先の生活をしていた。
次の年には茜が入学してきて、俺は小学校の時同様に休み時間の度に茜のいるクラスに入り浸っていた。
そんな日々を送っていたある日、俺を真のシスコンに目覚めさせる事件が起きたのだ。
六月中旬。俺はその日、日直の仕事があり帰るのが遅れていた。
仕事を終えた俺は、急いで鞄を置いている教室に向かっていた。その途中、ある教室から女子たちの会話が聞こえてきたのだ。
普通なら素通りするのだが、俺の名前が聞こえたような気がして、つい足を止めてしまった。
「葉雪ってホントにシスコンなんでしょ? 気持ち悪ーい」
「それなー。どうせ妹さんたちも嫌々付き合ってるんでしょ? 妹は兄を嫌うって見たことあるー」
「そうだよ。私も兄貴いるけど、ただ気持ち悪いだけだし」
彼女たちの会話を聞いた途端、雷に撃たれたような衝撃が体中を駆け巡った。
「まさか、茜たちは俺のことが嫌いとか思ってるのかな……」
震える唇でそう呟いた途端、冷や汗が止まらなくなった。
「もしも妹たちが俺を嫌っていたら……」
不意に零れた呟きが、俺の心を苦しめる。もしそれが本当なら、これから先俺はどう生きていけばいいのか。
そんな不安から、俺はいつもより遅く家に帰った。
俺は妹たちに嫌われているのか。そう疑心暗鬼に陥っていた俺を、茜はとても心配したような表情で迎えてくれた。
部屋に戻り、俺は意を決して帰り際に聞いた会話のことを話した。
すると茜は顔を真っ赤に染め怒りを
「──そんなことないよっ!」
「…………茜?」
「私は……私や光月も朝日も、皆お兄ちゃんのこと大好きだよっ! そんな女子の言葉なんて、信用しなくて良いんだよっ……私たちはお兄ちゃんが好き、大好きっ! だから、もうそんなこと言わないでっ!」
気付けば俺は涙を流していた。
長年世話をしてきた妹たちに嫌われていないか、そんな悩みを全て吹っ飛ばされたのだ。
その後「大好き」を連呼していたことを思い出し赤面した茜を見て、俺は一生妹たちを大切にしようと心に誓った。
◇妹◇
──と、こんなことがあって、俺は立派なシスコンになったわけだ。
俺は悪くない。茜たちが可愛いのが悪い。
……いや、可愛いは正義って言うし、やっぱり悪いの俺なのか……?
まぁそれはさておき。
な? 見てもらって分かっただろ? 妹たちの可愛さが。妹って最高だよな!
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