第7話 世界に捧ぐ
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
隣の家のミヨちゃんが大事に飼っていたインコが死にました
彼女は近くの公園の隅に小さな墓をつくってあげました
次の日、墓は野良犬たちに荒らされて、彼女は大きな声で泣きました
でも、神様はいなかったので、代わりに僕が詩を作ってあげました
彼女の悲しみは癒され、僕はとても幸せな気持ちになりました
僕の詩が悲しみを癒すと知り、神様に感謝を捧げました
でも、神様はいなかったので、代わりに小鳥たちが素敵な唄を聞かせてくれました
それはきっと、彼女が飼っていたインコの魂が小鳥たちに宿ったのでしょう
きっと明日は晴れるでしょう
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
隣の家のミヨちゃんが大事に育てていた朝顔がきれいな花を咲かせました
彼女はうれしくなって元気に家を飛び出しました。
夕方、彼女が家に帰ると花は萎れてしまい、彼女は寂しくなりました
でも、先生はいなかったので、代わりに僕が朝顔について教えてあげました
彼女が元気を取戻し、僕は満たされた気持ちになりました
僕の知識が役に立つと知り、先生に感謝をするようになりました
でも、どうしたらそのことを伝えられるかわからないので感謝の詩を詠いました
いつかきっと、ありがとうと伝えたいという気持ちが花を咲かせるのでしょう
きっと明日も晴れるでしょう
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
隣の家のミヨちゃんと仲良く遊んでいたお友達がいなくなりました
その子は遠い街に引っ越してしまったと彼女は教えてくれました
次の日、彼女が近くの公園の砂場で遊んでいるのを見かけました
でも、友達はいなかったので、代わりに僕が遊んであげました
彼女の寂しさは薄れて、やがて笑顔が戻ってきました
僕のやさしさが慰めになると知り、僕は母に感謝を捧げました
でも、母はこの世にいないので、母のぬくもりを詩にして天国に届けました
いつもずっと、雲の上から僕のことを見守ってくれているのでしょう
きっと雨の日も風の日も
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
隣の家のミヨちゃんと同じような子供たちが死にました
彼らの住む街は破壊しつくされ、弔うこともままならない
次の日、また別の場所で子供たちが死にました、また次の日も
でも、神様はいなかったので、誰もそれを止められませんでした
世界は悲しみに暮れ、祈ることも怒ることもできません
僕の詩は誰にも届かず、やがて僕は沈黙するようになりました
でも、ミヨちゃんが唱って欲しいとせがむので、古い詩を詠んで聞かせてあげました
それはずっと、歌い継がれ、語り継がれる平和と愛の詩なのでしょう
きっと明日も歌うのでしょう
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
世界がどんなに歪んでも
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
未来がどんなに暗くても
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
明日が来ないとわかっていても
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
これが最後の詩だとしても
今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
誰の為でもなく
己の為でもなく
小さな、小さな希望の為に
隣の家のミヨちゃんの為に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます