~“希望”の戦い~・4

『図星を突かれ激情のまま闇雲に力をふるうか……中身はガキだな』

「なに……?」


 デュー達の全身を襲うはずだった衝撃は、彼等の前に立ちはだかった大精霊によって食い止められた。

 四本の腕で透明な防護壁を作り上げた万物の王が、仲間を振り返る。


『……人は確かに脆いかもしれないが、同時に強さも持てる。見ろ』


 いつか過去を見せたように周囲が暗転すると、あちこちに映像が浮かびだす。

 よく見るとそれは、自分達のよく知る場所や人物の……


《いくぞへっぽこトリオ!》


 最初に聴こえてきたのはやたらと通る、覚えのある声。


《だから我等は漆黒のっ……》

《へっぽこも漆黒も似てるだろう!》

《似てないし!》


 アセンブルの町を襲う魔物と戦うラクレム、エクレア、それに漆黒の……結局正式名称を言うことは叶わなかった三人組の姿が映っていた。


 そして、


《傷ついた奴等の手当ては手伝わせてくれ……せめて、そのぐらいはしたい》

《ありがとうございます……皆、踏ん張ってくれ!》


 別のところにはカレンズ村で戦うフレスや部下の騎士達、それに自分に出来ることを探し始めた村人が。


「あの辛気臭い村のおっさんが自分から……」

「あっ、あっちに見えるのは……!」


 オグマが指し示した先で剣を振るう仮面の騎士……かつてはオグマを憎むことしかせず、世界がどうなろうと知ったことではないとまで言っていたグラッセもまた、ガトーが作った腕輪を身につけ魔物を倒していた。


《誰も死なせない……俺は、俺が生きる世界を守る!》

「――!」


 以前の彼からは想像もつかない台詞を耳にしたスタードの涙腺が、思わず弛む。

 騎士団での付き合いが長い教官には、グラッセの成長は特に感じるものがあったのだろう。



 他にもマンジュの里ではミナヅキが民を動かしていたり、王都でもモラセス王やザッハが己のするべき事をしている。


 ショコラやフローレット、シナモン達のように戦う力をもたない者達だって、身を寄せ合いながら互いを支え励まし合い、決して間近に見える滅びに諦めてはいなかった。


「力がなくともみんな戦ってる……それぞれの、自分の戦いを……」


 シュクルがそう呟くと、首輪の石が強い輝きを放つ。

 そして惹かれるように、仲間達の身につけている蛍煌石が次々に輝き、そこから伸びる光がひとつに繋がった。


「これは……」

「力が湧いてくる……みんなの力が、流れ込んでくるみたいじゃ」

「想いを繋げる蛍煌石……そしてここには、」


 心の精霊もいる。


 ミレニアが振り向くと、仄かに光を纏うルセットと視線がかち合う。


『脆くて強いひとの心、想い……その力、あの坊主に見せてやれ!』

「おばあさま……がってんなのじゃ!」


 不敵に笑う祖母と、それを受けて同様に返す孫。


 少女のルビー色の瞳に決意が宿り、その顔つきがきりりと引き締められた。

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