~彼女の罪は~・おまけスキット

~泣き止んだ?~


デュー「……」

カッセ「……」

シュクル「…………」


デュー「……シュクルの奴、大丈夫そうか?」

カッセ「落ち着いたようでござるな」

デュー「ったく、心配させやがって」

カッセ「あんな風に泣くのは初めてだったからな」

デュー「ガキが我慢なんかしてんじゃねーっつの」

カッセ「仕方がなかろう。たぶん甘え方も知らないのだから」

デュー「あの森にあんなチビがたったひとりでいた時点でうすうす感じてたけど、な」

カッセ「必死になって張り詰めて、自分を大きく見せようとして……だから、泣いてくれて正直ホッとした所もある」

デュー「だな」


シュクル「おい、そんなに離れて歩くとはぐれるぞ!」

カッセ「ああ」

デュー「わりぃわりぃ」



~カルバドスとファリーヌ~


シュクル「余の両親のこと、カッセは……」

カッセ「シュクルは小さかったから、覚えていないかな」

シュクル「え?」

カッセ「カルバドス殿とファリーヌ殿は……うまれたばかりのシュクルを連れて、挨拶に来たことがあるんだ」

シュクル「なんだと?」

デュー「じゃあシュクルとカッセは面識があったのか」

シュクル「知らなかった……」

カッセ「会ったのはその一回だけで、すぐに行方知れずになってしまったからな。戦闘があった痕跡と墓らしきものを見付けた時、てっきりシュクルも一緒に……」

デュー「そういやお前、シュクルの事情について詳しいことはわからないって前に言ってたよな」

カッセ「事実わからなかったし、それだけの情報ではあの時のシュクルには何も言えなかった」

シュクル「……」

カッセ「仲睦まじく、笑顔の絶えない和やかな夫婦でござった」

シュクル「ああ……」

デュー「その反応、見たんだな」

シュクル「皮肉なものだ。敵が見せた幻でなければ……顔を知ることすら叶わぬものだったからな」

カッセ「シュクル……」

シュクル「捨てられた訳では、なかった。その点に関しては、喜んでいる」

デュー「それにしたってなあ……大人ぶるね、ったく」



~お小言ちくちく~


水辺の乙女『デュー……仲間と合流してから、少し気が大きくなっていませんか?』

カッセ「拙者達はまだまだ少人数……数で来られてはひとたまりもないでござるよ」

デュー「うるせえなあ、こんだけ狭い通路で数も何もねーだろ。渋滞起こすわ」

カッセ「デュー殿」

デュー「睨むなよ。そういう問題じゃねーってか」

カッセ「そもそも迂闊に敵に位置を知らせるなという話でござる」

水辺の乙女『わかっているならもう少し慎重になさい』

デュー「ちえ、ちくちくお小言が増えやがって」

カッセ「まあ、拙者と合流できて安心したのはわかったが」

デュー「!」

水辺の乙女『あら』

デュー「オレの真似かよ。慣れないこと言いやがって……尻尾が落ち着かなそうに跳ねてんぞ」

カッセ「うぐ」

水辺の乙女『残念、まだまだでしたね』

デュー「ちょっとびっくりしたけどな」


~一人では何も出来ない?~


デュー「そういえばさっき、お前自分が一人じゃ何もできないとか言ってたけど」

シュクル「当然だろう。余はミレニアの聖依術に頼らなければ非力な、小さな獣ぞ」

デュー「ほんとにそうかねー?」

シュクル「む?」

カッセ「何もできないなら、こうやって拙者達との合流を果たせなかったと思うぞ」

デュー「そうそう。どうせなんか独りになったところで精神攻撃とかされたんだろ?」

カッセ「それを自力で振りほどく心の強さは、誇っていい」

シュクル「デュー、カッセ……」

カッセ「ちなみにデュー殿はここに来るまでにどんな事があったのでござるか?」

デュー「なに、大したことなかったさ……水辺の乙女の試練を経験しちまったからな」

水辺の乙女『あら、どういう意味ですか?』

デュー「アンタが今感じた通り、かもな?」

水辺の乙女『ふふふ、そうですか』



~ミレニアはどこに~


デュー「しかしまあ、ミレニアはどこにいるんだろうなあ」

シュクル「これまでのことを考えれば、同じように独りにされて何かしら精神的に責められているのであろうが……」

デュー「あのミレニアに、ねぇ?」

シュクル「あまり想像がつかぬな……」

カッセ「そうは言っても彼女の周辺はかなり複雑でござろう?」

デュー「ああ、そっか……何もないとは言えねーな……それに、なんだかんだあいつもまだチビだ」

カッセ「左様。強く見えてもほんの少女でござる」

シュクル「早く見付け出さねばならぬことには違いないか……」

デュー「あんまり遅いと文句言われそうだしな」

シュクル「それもあるな」

カッセ「とにかく、先を急ぐでござる」

デュー「ああ。慎重に、急いでな」



~届かない、声~


ミレニア「わしは、わしはっ……!」


豪腕の焔『おい、しっかりしろミレニア!』


豪腕の焔『…………』


豪腕の焔『俺様の声、届いてねえのかよ? なんだよ、こんな……』


豪腕の焔『幻なんかに惑わされるタマかよ……俺様を喚び出した時のあのふてぶてしさはどこに行ったんだよ、おい!』


豪腕の焔『……こんなに、遠かったか……?』


豪腕の焔『なあ、ミレニアっ……!』


豪腕の焔『ちくしょおおおお! ジメジメしやがるぜッ!』

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