~おわりとはじまり~・3
時を越えて人々を苦しめ続けた“総てに餓えし者”の最期は呆気なく、デュー達はすぐには勝利を確信できなかったのだが、
「終わった……?」
ぽろりと口から溢れたオグマの呟きから、それはやがて全体に浸透していく。
「終わった! 俺達ついにやったんですよ、旦那ぁ!」
「そ、そうか、そうなんだな」
リュナンが満面の笑みでオグマの肩を掴み、力一杯揺さぶる。
フィノとイシェルナも手を取り合って喜び、カッセとスタードが互いに見合わせてほっと安堵した。
『あれ、元に戻った』
「あ……」
大聖依術によってシュクルの体を借りていたランシッドも元の姿に戻る。
明らかに残念そうな顔をするダクワーズだったが、
「そうそう見せてやれぬぞ! この術は余の負担が大きいのだからな!」
と喚くシュクルに、
「……そうか」
そう言って肩を落とした。
そこに今は小さな光の球体となっているロゼットが飛んでくる。
『うう、ダクワーズ様、ご無事で良かったです……』
「ロゼット、なのか?」
『はい。もうほとんど時間はありませんが、お二人がまた一緒にいる姿を見られて、本当によかった……』
彼女の光は弱々しく明滅している。
思えば“総てに餓えし者”が復活した時点で結界は消滅しており、この輝きもとっくに喪われていてもおかしくはないのだ。
『ロゼット……もう、お別れなのかい?』
『そんな顔をしないで、ランシッド様。眠り続けていたダクワーズ様と違って、普通なら考えられないくらい長い時間を生きて、アラカルティアを見てきたんですよ?』
だからもう、充分……充分すぎるくらいに。
世界の犠牲となった聖依獣の少女は、いつ存在が消えてしまうかわからない悲壮感も出さずに、微笑んでいるようだった。
『奴を倒せたのも、結界でギリギリまで押さえ込みながら、この迷宮で俺達を導いてくれたお陰だ』
「ありがとう、ロゼット……本当なら、もっと沢山話がしたかったが……」
もう、時間のようだ。
みるみる弱まっていく輝きが、ほとんど消えているのに近い状態になって、誰もがその時の訪れを知る。
『さようなら、みなさん……この世界を、よろしくお願いします』
「ロゼット!」
『ダクワーズ様……今度こそ、お幸せにね』
最後にほんの少しだけ輝きが強まり、すう、と消える。
それきり、二度と現れることはなかった。
「ロゼットさん、やっと再会できたのに……」
「オレ達が間に合わなかったら、無念のまま消えていたんだ。だから……くそっ」
せめてもの救いを口にしたところで、沈む気持ちは止められず、デューは悪態をつく。
こればっかりはどうにもならないと、頭ではわかっているのに。
「……デュー」
目の前で消えていった儚いきらめきは、彼等の胸にいつまでも残るものとなった。
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