~合流、そして~・4
デュー達からこれまでの経緯を聞いたガトーはベッドのヘッドボードに背を預け「おめえらも大変だったんだな」と彼等を見上げた。
「あのモラセスがなぁ……次に会ったらぶん殴ってやらねえと」
「うわ、王様のこと呼び捨てかよ」
話には聞いていたが本当に王様相手でも態度を変えないのかと、デューやリュナンが驚きを顔に出す。
「んで、おめえはやっぱりというか、ほんとにガキじゃなかったんだな。妙に見た目と不釣り合いだと思ったら」
「へへっ……わかる人にはわかるんだな、オレの大人の包容力が」
最初さんざん子供扱いをしていたミレニアにこれ見よがしにアピールする姿は、あまり大人らしいとは言えないが。
そんなデューの振る舞いに、一同から呆れの混じった笑いが起こる。
「……で、依頼だが……任せろ。モラセスの惚れた女に相応しい、とびっきりのもん作ってやるからよ」
「けど、あんまり無理は……」
おずおずと口を開いたリュナンを三白眼が睨み上げた。
「ばぁーろー、誰も今すぐなんざ言ってねえよっ! 気合いの入った作品を作る以上、仕事するならきちんと体力が戻ってからだ!」
怒鳴りつける声は病人とは思えないほどの勢いだが、それでもこの職人を知る人間からすればやはり元気が足りない。
そしてガトーも、疲れたのか溜め息の後で乗り出しかけた身を再びベッドに寄りかからせた。
「……だから、悪ぃけどちっと待たせちまうかもしれねえ。それでもいいか?」
仕事の質を落としたくないのも、また職人の意地なのだろう。
「お前さん以外に頼める職人などそうはいないさ」とスタードが微笑みかける。
「先にアトミゼの内部に行って、大精霊に会って来ます。くれぐれも無理はなさらないでくださいね、ガトー殿」
「お、おう……おめえも気を付けてな」
一瞬笑顔を見せ一礼すると、オグマは一足先に部屋をあとにする。
一拍おいて、スタードとガトーの視線がかち合った。
「…………怒っているな」
「だな。けど、あいつも笑顔が自然になってきた……おめえらについて行って、ちっとずつでも変わってる。いい事だ」
障気に蝕まれた苦しみも忘れて嬉しそうに笑う顔は息子の成長を喜ぶ父親のそれで、血の繋がりはなくても絆が目に見えるようだった。
「そうよおじさま、きっとこれから先も変わっていくんだから、元気になって見守っていかなくっちゃ」
「無茶してぶっ倒れるとか、もうナシですからね!」
「はは、わぁったよ」
そう言って退出していくデュー達に軽く手を振って見送ると、幾分か楽になった身体をベッドに横たえ、ガトーは一息ついたが……
「……あ」
ふいに思い立って、おろしかけた瞼を再び開き、起き上がる。
「あー、ゴタゴタありすぎて肝心な事を言いそびれたな……なぁオグマ……」
音を立てて軋むような感覚がして、まだ思うように動かない身で膝を引き寄せて座ると、俯いて顔を埋める。
「グラッセとは戦うんじゃねえ。アイツは、おめえの……」
しかし、その呟きが既にフォンダンシティの出入り口へ向けて歩き出したオグマの耳に届くことはない。
ガトーの心とは裏腹に、工房に立ち込める澱んだ気は、少しずつ晴れていった。
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