~聖域の決戦~・4
浄化の手段とは思えないほど豪快な一撃は土煙を起こし、それが晴れた頃には満身創痍の王が膝を地に着き、険しい形相でミレニアを見上げていた。
「そう、か……どこかで見たと、思ったら……ルセット、に、似て……」
いつぞやの邂逅でおぼえた既視感に合点がいったらしいモラセスは、ふっと笑みを浮かべた。
「……もはや、これまで、か」
聖依術の影響で、傷の再生もうまくいかなくなっているようで、鎧や武器の役割を果たしていた魔物の皮膚も徐々に引っ込んでいくのがわかる。
勝敗は、決したのだと。
「モラセス……」
己を呼ぶ声に、モラセスは結界の内に視線を向けた。
「お前の言う通りだ、カミベル……お前に逢いたい気持ち、俺の心の隙……情けなくも、魔物に利用され、ここまで来てしまった」
「ええ。想い出は、美しい想い出のままで良かったのよ……前に進まなきゃいけないあなたには、ね」
「つらいな、お互いに……」
力なく笑う王は、これまで対峙してきた中では見たこともないくらい穏やかで、優しげな表情を浮かべていて。
そしてその紅眼は、次にスタードの方へ。
「……スタード、すまなかったな。皆にも、迷惑をかけた」
「モラセス王……」
「すまなかったな、じゃねーよ。殺されかけたんだぞ、教官はアンタに」
ジト目で横槍を入れたのは子供の姿であるのをいいことに好き放題なデューだったが、
「デュランダル・ロッシェか。貴様も面倒な任務を与えられて文句のひとつも言いたかろう」
「だからなんでバレて……ってさっき呼ばれたからか。えー……オレは別にいい、です」
どうやら無駄だったらしく、ぎこちなく敬語を使ってみたものの周りの笑いを誘うだけで。
こうして、長い戦いは幕をおろすのであった。
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