ヤンデレ気味な美人奴隷と美少女スライムを連れて、まだ見ぬ世界の裏側を目指す

@sllime

第一章:冒険者学院

第1話

『世界の裏側』


この世界にはそう呼ばれる場所がある。

俺たちの住む大陸の外には海が広がり、そこから出ればどこかへ落っこちてしまう。

そんなことが言われていたのは300年前まで。

今では自分たちがいる場所が球体の星であることは小さい子どもでも知っている。

だが世界の裏側に何があるかは誰も知らない。


ーこれは世界の裏側を目指す者たちの物語ー







「セト様、起きてください」


「ん、あぁ」


寝ぼけまなこを擦りながら身体を起こす。

ベッドの側に立っているのは綺麗な女の子。肩くらいまでの艶やかな黒い髪にやや釣り目がちなぱっちりとした瞳、身長は女の子としては少し高い165cmくらいだろうか。胸はまだ膨らみかけの成長途上といった感じ。端的に言えば幼い。かといって子どもっぽいかと言えばそうではなく、理知的な印象も強い。


「おはようございます、セト様」


「ん、おはよう。ルナ」


俺を起こしてくれたこの子はルナ。12歳の時からの付き合いだからもうすぐ3年になる。俺たちの関係は建前上は主人と奴隷ということになっている。俺はそんな風には思ってないんだけどね。


「今日の朝食はハムエッグにトースト、コーンスープで既に用意できています」


「あぁ、ありがとう。すぐ行くね」


朝食を食べたらすぐに家を出なければならないしな。

というのも今日は冒険者学院の入学式だ。冒険者学院とは『世界の裏側』を目指す者たちを育成するために作られた国立の学校である。そもそも世界の裏側を目指す者たちは昔から少しは存在したのだ。だが生還率が絶望的に低かった。というのも帰還者と言われる外の世界からの生還に成功した者たちが言うには桁違いの化け物がうようよいるらしい。この世界には魔物と言われる魔力を持った生物がいる。魔物は昔から外の世界から現れると言われており、魔物が大量発生すると多くの死傷者が出る災害となる。その魔物討伐で名をあげた者たちが手も足も出ないのだと言う。そのため世界の裏側を目指す者たちは皆変人扱いされてきた。


だが10年前のある日、1人の男がこの状況を一変させた。たった1人で世界の裏側を目指し帰還した彼は『神樹の葉』今世間ではそう呼ばれている木の葉を持ち帰った。初めは皆、そんなに苦労して葉っぱを持ち帰ったのかと馬鹿にしていたのだが、その葉に万病を癒す力があると知れてからそれはぴたりと止み、人々は彼を称賛した。そんな者が現れてからは国は積極的に世界の裏側を目指すことを奨励した。また神樹の葉には桁違いの値が付いており一攫千金を目指す者たちも後を絶たなかった。


それから10年経った今、外の世界から持ち帰られたものは数えるほどしかない。


『悪魔の石』それに触れたものは1年以内に必ず死ぬという石であるらしい。ちなみに悪魔の石を持ち帰った帰還者も前代の王もその石に触れたがため亡くなったと言われている。結局その石は死刑が確定している罪人たちによって地下深くに封印されたという話であるが定かではない。


『破邪の杖』外の世界より持ち帰られた『神木』を削って作られた言われる杖でその杖は使用者の魔法を何倍にも増幅すると言われている。前回のスタンピードと言われる魔物の大量発生の時は国の筆頭魔術師がこの杖を使うことで以前より損害を抑えられたと伝えられている。


『魔封じの水晶』本来魔法とはどこかに保存しておけるものではないのだが外の世界より持ち帰られた水晶には魔法を宿す力があった。この力を利用することで魔術師30人分程の複雑な魔法も保存することができ、大魔法の行使が容易になったと言われている。また水晶の見た目も大変綺麗であるらしく芸術的価値も高いそうだ。


『知恵の実』外の世界に生る果実であるとのこと。その果実を食べると保有魔力が3倍程に膨れあがるらしい。知恵の実を持ち帰った帰還者は複数個を食べたが最初の1個しか効果はなかったとのこと。また知恵の実が持ち帰られたときは干して乾燥させてある状態であったが効果はしっかりと発揮されたらしい。前回のスタンピード時に以前より被害が抑えられたのも知恵の実を食べた魔術師の奮闘のおかげでもあると伝えられている。


『光の剣』実体のない剣。光の剣を持ち帰った帰還者はその剣を使ってミスリルやアダマンタイトを軽々切り裂いたらしいがその剣が誰にも見えず、また他の誰にも使えなかったことにより魔法を使った詐欺行為であるとされ、嘘つき呼ばわりされた。そのため光の剣の詳しいことはほとんど分かっていない。


10年間で莫大な人と金を使って得たものはこれだけだ。

考え方によってはこれでも多大な利益があるのかもしれないが。


まぁしかしそんな中で『世界の裏側』を目指した者たちの英雄譚に憧れたのは俺だけじゃないだろう。俺は見たい。世界の裏側がどうなっているのか。まだ誰も辿り着いてない場所には何があるのか。果たしたい目的もある。それらを目指す第一歩が今日始まる訳である。


「うーん、楽しみだ!」


心拍数が上がって胸が高鳴る。と、すっかり忘れてた。


「ライム、早く起きろよ」


俺の横で寝ていた女の子の肩を揺する。


「あ、はいぃ。ご主人様、おはようございますぅ」


「うん、おはよう」


可愛いという言葉を擬人化したような女の子。と言っても女の子と言ってもよいのか。この子は元々スライムであり、今の女の子の姿は変化した状態なのである。ショートの髪型に身長は155cmくらいか。胸は大きく、たまにルナが睨んでいるくらいである。何故スライムが女の子になって隣で寝ているかという話はいつかすることにして、今は冒険者学院に行く準備をしなくちゃな。


待ってろよ。

いつか必ず辿り着いて見せる。

世界の裏側に。

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