土の粘土の人形師
@makion81
第1話
「しかしまあ、ほんとに来ちまうとはなぁ。」
「それに付き合う俺たちも人のことは言えんがな。」
「今さら何を言っても遅い、僕らがついてきたんだから」
三人の男はチルマの少しはなれたところで話をしていた。
彼らがいるのは魔法学園の高等部チルマのことが心配でついてきたのだ。
一番始めに口を開いたのは高身長のひょろりとした男、名前はジンク、元々ここの生徒で今もチルマのクラスメートだ。
次にしゃべったのは大柄な男、ガラリ、筋骨隆々で声も低かった、三人の中では落ち着いている方である。
最後にしゃべったのは顔は整っているが少し痩せ気味のルイス、毎日筋トレをしているのだから、前はもっと細かった、本人曰くもう少し筋肉をつけたいのだそうだ。
今日は月に一度の特別授業、学年、クラス関係なく誰でも参加できる。
そんなことで三人してついてきたのだ。
「みんなそんなとこで何してるの?」声をかけてきたのはこの物語の主人公チルマという少女、緩くウェーブした黒髪を後ろで一つにくくっている。おっとりとしていて、優しそうな顔をしている。
今より一年ほど遡る。
小さい時からずっと自宅で学習していたチルマは気分転換に出掛けた露店で土人形を見つけ何気なく手に取っていた。
店主は「これは、魔力入りの粘土人形だよ」
と教えてくれた、見ると何かの獣の形をしているが良くわからなかった。
「なんの獣がモチーフなんですか?」
「そりゃ分からんよ、作った奴でないと実在しない動物だからなぁ」
店主が困った風に言う
「気に入ったんなら安くしとくよ」
「……って」
「?」
何か聞こえた気がした
「どうかしたかい?」
「……いえ」
「…連れ…て…いっ…て」
ビクッ「!」
今度ははっきり聞こえた
「なに?」
「僕を連れていって」
そう聞こえたのである、
「お嬢さん?」
店主に言われて再びビクッとなった。
「どうしたね?」
家に帰ってきたチルマは何か頭が混乱していた、偶然手に取った粘土人形がしゃべって来た。
「何だったんだろう?」
「おかえり、どうだった?久々に外に行ってみて」
そう話しかけてくれたのは、お父さんだった。
チルマはお父さんと二人暮らし。
自宅学習も先生は父親である。
何でも腕の言い職人なので、その商品が高値で取り扱われているという。お陰で二人は生活には困っていなかった。
「信じてくれないかもしれないけど、粘土人形の声が聞こえたの!」
「…ほう」
お父さんは少しも驚いていなかった。
「私の言うこと変だよね?」
「お前にもついに声が聞こえるようになったか。」
「え?」
「話をしようか?」
そのとき父から聞かされたのは自分達一族は粘土人形の声が聞こえ、意志疎通ができること、その粘土人形を使ってあらゆる事ができること、父が一流の職人なのもこの事があってのことだった。
「知らなかった」
「言う日が来るまで何も言わなかったからね」
「粘土人形師というんだよ、あと、声が聞こえるのは私たち一族の特権だ」
「それに、自分の作り出した粘土人形は自分にしか扱えないことを分かっておくようにね」
「はい」
「悪いことには使わないこと」
「はい」
「始めはとても難しいと思うが、お前には声を聞くことができるんだ、魂に耳を傾けてあげて」「…魂?」
「そうだ、優しく耳を傾けてあげるんだ」
「はい」
「それじゃあこれからは家で勉強だと追い付かないな」
「え?」
「私から魔法学園への書状を描くから準備ができたら学園に通うんだよ。」
「私が?」
「そうさ、ジンクくんがいるだろ?そこと同じ所だ」
「あそこだったら、ガラリくんやルイスくんもいるよね?」
「そうだね、みんなで仲良く通うんだよ」
「はい!ありがとうお父さん。」
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