②オシャレは誰のため?
少し前のことだ。
珍しくわたしは電車が出発する10分も前に駅に着いた。
久しぶりに駅構内の書店でも覗くか、と余裕たっぷりな気持ちのせいもあったのだろう。普段は読まない女性ファッション誌を手に取った。ファッション誌はオシャレさんが読むもの、そんな認識だったからかもしれない。
手に取った雑誌の表紙の女性はふんわりとしたオーラを纏いながら微笑んでいて、女であるわたしですら惚れそうになる笑みだった。
そんなとき、ガンを飛ばすようにこちらを睨み付ける女性が表紙のファッション誌が目に入った。いや、目に入ったというよりは、どうしたって見てくる彼女に視線を合わせないわけにはいかない威圧感を感じたのだ。
いやぁ、クールビューティー。
憧れるんだけどさ。わたしはそっちよりじゃないんだよなぁ。
タイプじゃなくてすみません。
世の中には赤文字雑誌と青文字雑誌があり、わたしの好みは断然赤文字だ。
中身をパラパラとめくった後、まだ時間に余裕があったわたしは隣の棚に目をやった。出版不況だと叫ばれる一因は、雑誌の売れ行きが年々下がっているからだが、ほぼすべてのファッション誌は毎月販売されているのだな、としみじみしてみたりした。
すると、隣のエリアにも女性が表紙のファッション誌があった。
こんなにもファッション誌があるのか、と感心していると、よく見るとそれは男性のファッション誌だった。女性が表紙の男性ファッション誌は一冊だけでなく、数冊並んでいる。
あれ?
わたしはその場で足を止めた。
変だな、と感じたのだ。
そしてもう一度女性ファッション誌が置いてあるエリアへ行くと、その謎は解けた。
女性ファッション誌の表紙を男性が飾っているものはない。
定期的にananという雑誌が流行りの男性のグラビアを表紙にすることがある。だが、そもそもananは女性のためのトレンドを全て網羅した雑誌であるため、純ファッション誌ではない。どちらかといえば情報誌だろう。そのため除外対象とすると、純女性ファッション誌で男性モデルを表紙にすることなどあるのだろうか。
だが、男性ファッション誌では女性モデルが表紙を飾っている。
この違いは何か。
両方をよく見比べてみる。
はたから見たら、かなり変質的な客に思えたかもしれない。
同じ場所を行ったり来たりと、片方を手に持って移動すればよいものだがどうもそれは抵抗がある。誰かが手に取り続けた商品を、買いたいと思う人間は少ないだろう。
やっと違いを発見したのは、十往復をしたときくらいだったか。
その発見を聞いてほしい。
女性ファッション誌には『自分らしさ』『オシャレ』『トレンド』といった言葉が多様されているのに対して、男性ファッション誌には『女ウケ』や『モテる』といった言葉が目立った。それも、ウケを狙ったコーディネイトを提案しているのは売れっ子の女子グループのアイドルや女性モデルである。
ついでと言ってはなんだが、40代をターゲットにした女性ファッション誌では、夫をコーディネイトする特集が組まれているものがあった。
今度は写真に注目してみると、シチュエーションを意識したカットでは男性誌に女性モデルが登場するカットが、女性誌に男性モデルが登場するときのカットよりも多い印象を受けた。
そっと立ち読みをしていただけのためきちんと統計をとってはいない。しかし、倍以上のカット数の差があるように感じた。
ずばり言おう。
男性ファッション誌は、常に異性の目が傍にあることを前提にしている。
あくまでそれはファッション誌から見た衣服の在り方の差である。
あと少しだけ失礼かもしれないことを言うが、男性の皆さんは温かい目で聞いてやってほしい。
男性にとってのファッションは、異性に媚びるためのものだ。
男性はあくまで女性にウケる・好意を持ってもらうことを目的とし、好感度が高いファッションを選択するためにファッション雑誌を読むといえる。
このことから、男性のファッションの主導権は女性にある、と推察する。
女のわたしが、世の男性に俺たちのファッションの何が分かると言うのか、と言われても仕方がない。だが、一つ言わせてもらう。
女性に比べると明らかに変化の薄い男性のファッションは、何を基準にイケてると言うのか。
誰が評価するのか。
ねえ、心当たりありませんか?
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