【旧】勇者になりきれ!世直し勇者のつくりかた

イーノ@ユッフィー中の人

神話の真実

第1話 薔薇の架け橋

 これは、毎晩異世界と地球を行き来している私が、自らの体験を元に書いた小説だ。

 はじめに、この世界の隠された真実に関する秘密を話しておこう。


 地球からはるか遠く離れた、異なる時空に存在する世界バルハリア。

 いにしえの時代には、地球とあまたの異世界を行き来する手段が存在し。

 彼の地での冒険談を、地球の人々は神話や伝説として語り継いだ。


 異世界とは、想像の中にしかない架空の存在なのだろうか?


 少し、見方を変えてみよう。まだ地球上が人類にとっての未知の領域に満ちていた時代、そこはそのまま異世界だった。人々はそうとは知らないまま、別の宇宙や平行世界に通じる道を通り、地球と異世界を地続きのものとして認識していた。


 その道をドリームウェイ、またはオーロラの道と呼ぶ。

 

 例を挙げると、シャーマンは身体から魂を抜け出させ異界と交信し、道士や山伏は異界である山に分け入り、修行によって不思議な神通力を身につけた。


 けれども現在、地球上から異世界は駆逐された。地球は平らではなくなった。人工衛星が地球上の全てを神の視点で見下ろすようになった。


 そして、時は流れ現代。2017年。

 異世界との行き来が途絶えた今でも、地球の人々は…魂の記憶に眠る幻想ファンタジーを。

 多くの芸術や物語、ゲームの題材としてきた。


 そう、物理的な往来は不可能だとしても。

 夢と呼ばれる「薔薇の架け橋ワームホール」を通じて、全ての人類は無限に広がるあまたの異世界を旅してきたのだ。

 正確に言うと、今も旅は続いている。


 これを読んでいるあなたが夜、眠りに落ちるとき。あなたの精神は肉体を抜け出し、時空の門を抜けて遠い世界へ冒険に出かける。

 そして、朝を迎える頃。ちょうど夢から醒めるように、現実に引き戻されるのだ。


 その夢をわざわざ覚えている人間は、ましてや夢が「もう一つの現実」だなどと考えているのは、よほどの変わり者くらいだが。


 もし、そうでないのだとしたら。いったいどうやって、説明がつくのだろう。

 世の中に、これほどまでに多くの「異世界の物語」があふれている理由を…!!


 これから私が語るのも、そんな夢での記憶の一幕だ。


大いなる冬フィンブルヴィンテル」に閉ざされた、永遠の冬の世界バルハリア。

 彼の地の人々は、この数百年にも及ぶ苦難を。

 一柱の女神への信仰と、過酷な環境が育んだ助け合いの精神で乗り越えてきた。


 しかし、悪戯な運命は…人々に、またもさらなる試練を課した。


 バルハリアに残された最後の都市国家、氷都市アイスブルクの人々は。

 その出来事を後に「勇者の落日」と呼ぶことになる。


 地球とバルハリア、ふたつの世界を行き来する冒険の発端となったその話を。

 まずは、語ることにしよう。

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