4-12 最終章5
『オトナだって夢を持ち続けることが出来る!』
市販のちょっとお高いブランド品を改造した“変身ベルト”、ハイブリッド・ドライブ・システムは、賢者としての知識力を魔法少女の夢のチカラに変換して使用する特別なリアクターである。
賢者と魔法少女の二つの契約をしている私は、これによりチカラを倍増(厳密に言えば足し算だが。)することが出来るのだ。
因みに、このシステムは不可逆であり、魔法少女から賢者への変換は出来ない。
以上、アイテムの説明終わり。
見た目はたいして変わらない。服装的にはいつものクリスマスコスチュームに白いボンボンのついたケープが追加されたぐらいである。(そのことがより一層のクリスマス感を出す。ちなみに今は六月だ。)
だが、それよりも大きな違いがあるとするなら!
「ハイブリッド・ドライブだと?
なんだ、一体何が違う?!」
フッ。ポニーテールが三つ編みなのさ!
勘違いしている人も多いかと思うが、hybrid(ハイブリッド)とは環境に優しいというような意味の単語ではない。
ハイブリッドを直訳すると『雑種交配』
二つ以上のものが混ざり合った状態を意味する。
車で言えばガソリンエンジンと電気モーター、
猫で言えば三毛猫。
人間で言えばハーフといったところだろうか。
しかしまぁ英語の解説をするなんて・・・。
「いやー。私も学習したもんだ。」
「たいした知識じゃないよ。」
「うるさい。化け猫。」
私は腕を突き出し、化学式を思い浮かべて、意識を集中した。
「いくぞ!マジカル濃硫酸!!」
手のひらの数センチ手前の大気が収縮を始め濃度の高い濃硫酸を生成する。
マジカル濃硫酸は防火扉の鋼鉄を瞬く間に腐食させ、扉に人が通れるほどの大きな穴をあけた。
「お、おぉ。おぉぉお!!」
チカラ不足の希硫酸じゃない。
紛れも無い。これは魔法少女のチカラだ。
いやぁーちょっと前まで使用していたはずなのに、随分懐かしく感じる。
やはり、賢者の魔法よりも容易に発生させられる。これが理科を信じる夢のチカラ。
「賢者でありながら魔法少女のチカラを使用したというの?!
次から次へと、反則技ばっかり。」
「へへん。オトナが夢を見て何が悪い?
不可能を可能にすることの何が悪いっていうの?」
「悪びれもなくそんなことを言うか?!小娘!」
苦虫を噛み潰したように悔しい表情を浮かべる。
(だけど、苦虫ってどんな虫なの?食用昆虫なんてイナゴと蜂の子しか知らないけど。アレは甘いイメージがある。)
「えぇい!」
掛け声とともに何かを諦めたようにパンディットは最上階への階段を駆け出した。
「あ、待て!」
私たちは高周波ブレードの効果範囲の枠で団子状態になりながらも移動を開始する。まだ体調が悪いマツリを抱えながら最上階への階段を登ったのため、途中でパンディットの姿は見失ってしまった。
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