1-7 ヤタガラス編6
私たちはカトブレパスの能力“悪魔の瞳”によってヤタガラスの寝床を突き止め、今まさに奇襲を行おうとしていた。
茉理ちゃんへの配慮もあって、撃破ではなく捕獲を目的とする。捕獲方法は投網。
「・・・。」
物音を立てず、声も出さずにアイコンタクトで『いくよ!』と合図を出す。
「カアァッ!!」
気づかれた?!
そんなバカな。物音は何一つ立てていないはずだ。
それなのに、私がヤタガラスの手前、距離にして三メートル前方でヤタガラスは羽根を広げて警戒態勢に入った。
満月のあの日からそれほど日時も経過していないので月はだいぶ満ちているが、今日は雲が多く、この時間としてはだいぶ暗いはずだ。
それだというのに、ヤタガラスはハッキリこちらを向いて威嚇している。
「のう、マヂカよ。(変身前なのでまだ春化ですが・・・)
鳥目というのはそもそも人間への格言であって、実はほとんどの鳥が夜間でも見えておるのではなかろうか?」
「へっ?」
よく考えたらフクロウなど、夜行性の鳥は沢山いる。
「・・・。」
なるほど、鳥目の鳥というのは朝に目を覚ますニワトリのことを指しているだけなのだ。
「国語の嘘つきーッ!!」
この憤りは誰にぶつけたら良いの?
「そんな場合じゃないよ。春化、どうするのさ?!」
「え、えぇーっと・・・。」
向こうにはこちらが見えていて、こっちの視界は闇夜に阻まれ、良好とは言えない。
「カトブレパス。あなたの特殊能力で位置特定出来ないの?」
「無茶を言うな。ワシのチカラはあくまでもエリアの特定のをするものじゃ。事細かな位置など・・・。」
そういう会話の最中にもヤタガラスはかぎ爪ダイブを仕掛けてくる。
「!?」
ソレをなんとか凌いで見せるが、体力がない私には時間の問題だ。攻撃をかわしても、闇夜に紛れられると位置を把握できなくなる。
なんとかしないと・・。なんとかー。なんとか相手の位置を知る方法。
「うーん。ホラ、アレだ。臭いだ!」
「臭い?」
嗅覚は生物学的に見て、五感のなかでも差がある項目である。敏感や鈍感といった二者択一の話ではなく、酸っぱいや甘いなどの種類に分類され、それを脳が判別しているのだという。つまり、大多数の中にある一つの異質なものを区別することで、位置の特定をすることが可能な感覚器官なのである。
そして、森の中で強烈に放たれる獣臭はその位置を特定するのには十分だ。
神経を研ぎ澄まし、鼻に感覚を集中させる。
「こういう心眼って普通、耳なんじゃないかな〜。」
黙れ。
「・・・正面!!」
迫り来るヤタガラスを私は横に飛んで避けた。
「カアァ!!」
「お見事!」
「さすが、鼻心眼の使い手。」
「変な通り名をつけるな、化け猫!!」
私は昔から鼻には自信がある。あまり披露する場所がないのが残念だが。
(感覚器の中でも鼻は比較的、冷遇されている気がしないだろうか?)
ひらりひらりとヤタガラスの突進を私は躱す。
「カアァァァ!!」
上空からの直線的な攻撃は軸をずらす事で簡単に避けることが出来た。格闘漫画なんかでいうところの「見切った!」状態である。
「調子に乗りすぎじゃない?」
ヤタガラスは突進を諦め、元の木の枝にとまってこちらを警戒している。
そして、
「カアアァァァアアッ!!」
二、三度羽ばたくとその周囲には、キラキラと美しい粉が舞っていた。僅かばかりの月の光に照らされて、風に舞う粉末状の物質は周囲の匂いをさっと洗い流した。
「こ、これは・・・銀!?」
銀イオンは強い酸化力があり、バクテリアを殺菌することで消臭効果があるとされる物質だ。
銀の風がヤタガラスの周囲を舞うと、清涼感のあるフローラルの香りが漂った。
綺麗。
こんなにも美しい戦闘シーンがこの作品で未だかつてあっただろうか?私の戦いは埃まみれとかずぶ濡れとかそんなのばっかりだもんなぁ〜。
ともあれ、ヤタガラスの持つ元素の鍵は、金、銀、銅を含む11族、貨幣金属の鍵ということが判明した。
・・・・・・・ついに見つけた。
そう11族だ。
「とうとう私の元素の鍵探しの戦いも最終回のようね。」
「いやいやいや。何を勝手に11族を最終目的にしてるんだよ!?
金の生成をしたいのは春化の勝手な思惑でしょ。」
私はこの世界を救う救世主として、暴走した召喚獣を助けるため、今、立ち上がらなければいけないんだ!!
天に向かって両手を突き出し、大きく腕を振り回しながらこう叫んだ。
「変身!!」と。
淡い緑色の光に包まれ私の衣服は特殊な繊維で出来たコスチュームに変化する。赤と白を基調としたチューブトップのミニドレス、ワインレッドのガーターベルト、白く大きなリボンでポニーテールを作る。
魔法使いマジカルマヂカ
今、ここに顕現!!
「よっしゃー!さあ来い、暴走召喚獣!!」
「コラ!無視するな!」
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