雪より優しく

カゲトモ

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「こんばんは、今日も可愛い恰好されていますね」

 街がネオンに色づき出した頃、看板の明かりを入れようと外へ出ると、見覚えのある女性が歩いていたから声を掛けてみる。人形のように可愛らしい人だ。

「こんばんは」

 丁寧に頭を下げてくれた彼女は真っ白なコートを着ていて、フードにはネコ耳が付いていた。

「ありがとうございます、お気に入りなんです」

「そうなんですね、とてもお似合ですよ」

「そうですか? うれしい」

 陶器のような肌がふんわりと色づいたように見えた。長い睫がゆっくりと動く。

しっかりと化粧をしているはずなのに、そんな風には全然見えない。白い肌も長い睫も、ピンク色の頬も赤い唇も。全部最初から彼女を創り上げているみたいに自然だ。

「頑張って作った甲斐がありました」

「えっ、作られたんですか!?」

 その真っ白なコートを!? その売り物みたいなやつをっ!?

「はい、服飾の学校で勉強していましたから」

「わぁ、それは凄いですね。売り物みたいに綺麗だから分かりませんでした」

「ふふふ、ありがとうございます。そう言ってもらえるとうれしいです。デザインから生地までこだわって作っていますから」

 それから彼女はくるりと回ってみせた。背中の辺りには白いリボンが付いていて、その下にはネコの尻尾が付いていた。ふるふると本物の尻尾のように揺れた。

「ポイントは可愛らしさと暖かさを兼ね備えたところです」

 たしかにハイネックになっていて暖かそうだけど、ネコ耳じゃないんだ?

「ネコちゃんが好きなので」

 そう微笑む彼女は今まで見た表情の中で一番人間的だったかもしれない、なんて失礼か。

「もしかして来店された時にお召しだったお洋服は全て手作りですか?」

 初めて来店された時はオールドローズカラー、その次はスモーキーベージュのワンピースだった。リボンとフリルをあしらった、お人形みたいなお姫様みたいなクラシカルで上品な洋服。

「はい、洋服づくりは趣味であり、お仕事でもありますから」

「そうなんですね」

「好きなお洋服を探すよりも作ってしまった方が早いので。それに思っていたものがそのまま出来上がるから」

 楽しいのです、と彼女は続ける。多分、今日着けているリボンのヘッドドレスも手作りなのだろう。単純に凄い。

「お仕事だとそういう訳にもいかないのですけどね」

「大変ですね」

「いえいえ、楽しいですから。一枚の布からお洋服が出来上がるの、とてもワクワクします」

「それは素敵ですね」

「はい」

 丸い瞳が優し気に細められる。

「ふふ、実はこれからお仕事で」

「わ、すみません、引き止めてしまって」

 あんまり可愛かったから声を掛けてしまっただけで、呼び込みとかそういう訳じゃないのよっ。通りで大きな鞄を持っているわけだ。

「あ、いいえ、そう言うことじゃなくって」

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