白昼夢

丸井 円

第1話

仙台港から1日に3回出航する定期便に乗って、僕は生まれ故郷の島へと向かう。

冬の東北の海は重い鉛のような不気味な色をしていて、しかも今日は空が一面分厚い雲で覆われているものだから、昼間であることが信じられないほど暗く、どんよりと澱んでいる。

そんなまるで世界の終わりのように冷えきった光景の中、僕の乗る客船は乗客に餌をせがむ沢山のカモメを引き連れながら、強風で荒れる海を進んでいく。

実に5年ぶりの帰郷だ。

学生の頃から付き合っていて、婚約までしていた恋人をそこで亡くしてから、僕は島へ帰ることをしばらく躊躇っていた。育ての親である祖父母は僕が高校に入って下宿生活を始めた頃にはもうどちらも亡くなっていたし、島の同級生たちは皆都会に出ていったので特に帰る理由がなかったということもあるが、その上に5年前の彼女に起こった出来事とその死が、僕を島から遠ざけていた。

「会わせたい人がいる」

東京で久々に再会した友人は、何かに取り憑かれでもしたかのようにそのことだけをひたすら懇願してきた。

彼がそこまでして会ってほしい人物とは一体誰なのか、それを確かめるために僕は、一度捨てたはずの故郷へ向かう。

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