第11話 魔法学校

 それはある日の事。

「魔法学校……か」

 俺のふとした呟きが始まりだった。

「魔法学校、行ってみてぇなァ……」

◇◆◇

「で」

 あれよあれよと入試である。いやぁ、面倒な手続きがあった。住民票のコピーと申込用紙を送り、受験番号が送られるまでここまででなんと二日。で、さらに魔術の基礎とか教えられて一週間。何日も何日も勉強が続き、なんだかんだで入試である。

 一応言おう、なぜこんなことになってしまったんだ。なぜ俺は最難関の学校を受けたのか。……ま、良いか。

「始めっ!」

 試験官の声が、響いた。

 俺は直ぐにとりかかる。その中から最初の問題を出そう。

『問一』

『魔法使用時のデメリットは魔力の減少以外でもう一つある。そのデメリットとは次のうちどれか。ア~ウの中から記号で選べ。』

『ア 寿命が僅かに減る』

『イ 骨密度が低下する』

『ウ 魔物達に襲われやすくなる』

 この問題、答えは『ウ』である。魔力を自由自在に操る魔法は、魔物達の興味関心を向けさせてしまうのだ。寿命が僅かに減るならバンバン使ってる俺とかどうなるんですかね……(震え声)

 俺は直ぐにウを選択した。さて、次の問題は……と。

◇◆◇

「合格発表だ……」

 一週間後、合格発表が行われた。

「俺は……無いか……」

 ざっと見渡す。どうせ上位には居ないんだろうし。ちょっとだけしょんぼりしながら帰路につこうとすると。

「おい、満点で合格した奴がいるぞ!?」

「えと……フェイト・アリーザルか!すげぇ!!」

「この世界苗字は当たり前なんだが……アリーザルってまさかあの家か!?あの超戦士、カイ・アリーザルとアミラ・アリーザルの子だろッッ!?そりゃエリートなわけだ……」

 満点ん!?

「ひ、ひゃぁー……!そんな高い所まで見てなかった……!」

 奇しくもファーブル大先生と同じような経験をした俺であった。たまげたなぁ。

◇◆◇

 四月九日。

 遂にこの最難関と名高い魔法学校にデビュー。

 俺はその魔法学校でも難しい、『戦闘魔法科』を選択した。

 魔法学校には制服と言えば羽織るための外套がいとうくらいである。なので服装は自由。

 俺は制作スキルでとある服を縫い上げた。撥水加工もしてあり、防塵にも優れる。暑さ寒さもこれさえ有れば快適な温度を保てるような加工を施した。

 まさに俺渾身の出来である。

「ね、ねぇフェイトくん……」

「何だね」

 べデリティウスが尋ねてきた。

「どーして学ランなの?」

「私の趣味だ、良いだろう?」

「プロ〇ェッサーぜってぇ許さねぇ!」

 キャラ崩壊にも程があるぞべデリティウス。そう、俺は今学ランを着ているのだ!!

「行ってきます」

 バッシューを履き、いざ学校へ。勿論バッシューも制作スキルだ。

◇◆◇

 長ったらしい教師どもの話を聴き流し、教室へ。

「ここが教室……っ!」

 ワクワクしつつ入る。

 席を確認し、座る。刹那、俺のケツに鋭い痛みが。

「痛ッ!?」

 けらけら嗤う声。あっ、これは……

 立ち上がって椅子を見る。

 ガバリ……標準語で表すとすれば画鋲だ。画鋲が貼っつけてあった。

「ちっ、誰のせいだよ」

「貴様がフェイトか?この俺様の首位合格を奪っといて平気な面してんじゃないぞ」

「……誰だよ」

「はっ!俺様の名前すら知らないとはな、愚民が!この俺様こそ、この学園で一番のはずだった者!名門貴族スフィール家跡取り!ザリア・スフィール様だぞ!」

「あっそ、目障りだから消えて」

「こ……この男……っ!」

「そもそも首位合格出来なかったからってそんなキレることかな?んなもんフィクションの話だろ、夢見てんじゃねーよ。それ妬んで椅子に画鋲仕掛けてるんじゃ家柄も分かるわ。てめー没落する。分かったら俺の前から姿を消せ、いいな?」

「ちっ、この俺様に向かって!!」

 炎の魔法を撃とうとするクズ。名前を覚える気にもなれんわ。

「phew……だからお偉いさんは嫌いなんだよ」

 わざと身体を見せ、脚を少し高めに上げ、踵を勢いよく打ち付ける、通称ゴキブリキックを浴びせる。魔法詠唱途中のそいつは痛みで顔を顰め、魔法が消えた。

「地獄で燃える覚悟はいいか」

 意匠返しだ、と焔を纏い、焼き尽くす。勿論外だけを。

 つまり、服だけを焼かれた奴はその身体を晒した。真っ平らな胸、やはりこいつも男と思った。だがその認識は一変する。

 あのクソ貴族の下を見れば男のシンボルが……無い……って事はさ……

「男装女子……!?(小声)」

「くっ、この俺様の変装を!!」

「……すまなんだ」

「……あっ」

 かぁ、と彼女の顔が赤らんだ。と、同時に俺の外套を複製して被せる。この間僅か零点零一秒。その後直ぐに五体投地。これは目に毒だろう、特にロリコンにとっては。

「へっ、へn━━━━━モガモガ」

「ちょっと黙ってようねー?ほらちょっと表出ろ」

 さて、記憶をちょちょいと弄って……よし完成、映像データ等もあったら直ぐに消去だ。一つで助かった。

◇◆◇

「製作スキル使用」

 無詠唱で直ぐに焼き尽くした服を複製して渡す。着せる。

「……すまん、女とは知らんかってんねや。なんならこのフェイト・アリーザル、腹をかっ捌いて臓物撒き散らして惨たらしく死な━━━━」

「落ち着け愚民……この件は秘密だぞ?」

「認識阻害は掛けといたし記憶からも抹消しといたから大丈夫やぞ、ナイト〇イダーのようにその映像データ等も消しておいたし。これは俺達のみの秘密にしておこう、約束させてもらう」

「ナ……ナイト〇イダー……?まぁいい……約束、だぞ?」

 男装女子となんか仲を深めた気がした。

『完落ちまで残り90%です』

 ……何だ、この声。

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