第8話 男殺しの外道な女(前編)
それは二月のある日、俺のいる世の男性を恐怖に堕とした日があった。
『夜に出歩くと潰される』
それ以来、父とレイチェルがつけてくれた夜の特訓が無くなった。なんてことは無い。俺の父ですら畏怖しているのだから。
「暇だ」
腕立て伏せをしつつぼやく。ああ、いっそ俺の所に来い。俺が優しく殺してあげるから(ゲス顔)
冗談はともかく。瓦版で解っているデータである。被害者は全員男性、そして全員が体の一部を喪失した痛みによるショック死を遂げている。犯人とは一体……殺さなきゃ(使命感)
「ま、言えるのは一つ。こいつは男の敵だ、ってな」
俺は殺すために様々なシミュレーションをしてみる。そうこうしているうちにもう丑三つ時である。
「草木も眠るウシミツ・アワー、ってな」
そろそろ眠ろう。流石に成長に悪い。一応結界貼っとこう。
◇◆◇
「くっ……あぁぁぁぁあぁあああぁあぁぁぁぁあぁあああぁあ!?」
鈍い。ただ、そうとしか思えない。そんな痛みが体に走る。
さらに体内をムカデやヤスデが走り抜けているかのようにむず痒い。
それに追い打ちをかける様にマグマの様な熱さが全身を駆け巡る。
「死ねねぇ……!まだ俺は死ねないんだ……!!ぐぁぁぁぁあぁあああぁあぁぁぁぁあぁあああぁあ!」
不屈の根性で耐え抜こうとしたが、耐えきれぬ。そのまま、俺は死に━━━━
目が覚めた。
◇◆◇
悪夢を見た翌朝。少なくともこの村は平和な朝を迎えました、まる。
「くぁ……」
そろそろ降りるか。
「チッ!」
父さんの声がした。瓦版を読んでいるようだ。
「最悪だぜ、また被害者が出やがった。しかも俺のマブダチだぜ」
「……殺すしかないか」
「マジでぶっ殺すしかねーな」
非常に不穏な会話である。
◇◆◇
その日の夜、事件は起きた。パリン、という音が鳴った。結界が決壊した音だった。何時もならドラムセットが鳴り響いているが今は鳴らす気等ない。
次の瞬間、俺の第六感は邪気を察知した。そして直感する。敵襲だと。
俺は邪気を放つ生命の元へと走った。ただ走った。ひたすら走った。何も考えないで走った。引っ張られるように走った。全力で走った。汗を拭いつつ走った。とにかく走った。危機を救うため走った。殺すため走った。引っ捕えるため走った。もう、めちゃくちゃになろうともいいという覚悟を胸に走った。
━━━━━━━━己の決意と共に。
ざっ、と俺の靴が地を滑る。と同時にブレーキをかける。
「……」
ぴんと張り詰めた空気。一触即発とも言える殺意。その他もろもろが入り交じった、常人が入れば気絶しそうな空間に、奴はいた。
「~♪」
血塗れのワンピース。恐らく犯人だろう。念の為奴を鑑定してみよう。
「ワイド・ホークアイ……!?」
カルラという名前の後に出てきたレベル。そのレベルは、百一だった。
「嘘だろ!」
だが敗けてはいられない。俺はぴんと張り詰めた空気を纏いつつ前に出る。一歩ずつ、確実に。
女性だ。ワンピースを着ているから当たり前だろうが。
ふと、その女性が微笑む。俺の糸が僅かに緩む。
━━━━━━━その隙を付かれた。
外道の手が俺の局部に触れられる。次の瞬間、魔力を纏ったその手が俺の男のシンボル━━━つまりは
「『終わらせっかよ、ばーか』」
……えっ?
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