毎日殺伐!日めくり暴言カレンダー!

しゃけ

第1話 暴言の泉

 九月。最近では九月なんてまだまだ夏真っ盛りも同然だ。強烈な日差しが教室の窓から差し込んでくる。

 二学期が始まって一週間。今日も通常通りに授業が行われていた。勉強は嫌いな方ではないのだがやはり少々退屈を感じてしまう。

 そろそろ刺激が欲しい――などと考えていた。

 前の席に座る女の子もなんとなくそわそわしている。彼女も僕と同じことを考えているのではないだろうか。

「えーそれじゃあこの問題を」

 数学担当の大森先生が黒板にチョークを走らせ、三角関数の問題を記述した。

「殺村―答えてみろー」

(むっ! これは……!)

 ――ガタッ!

 教室の中央。指名された女生徒が勢いよく立ち上がり、

「アナタ、私をバカにしてるんですの!?」

 先生に対して人さし指を突き立てた。

「こんな問題を私に解かせようなんて! 恥を知りなさい! この変態教師!」

(始まった!)

「野蛮人! 卑劣漢! 唐変木! 泥人形! 給料泥棒! 人間発電所! 人間の皮を被った人間のクズ! シュレッダーで八つ裂きにしてさしあげましょうか!?」

(今日もいいぞコレ……!)

「あなたのカノジョもきっと根拠はないけど間違いなくヘタメスだと思いますわ! よくて汚ギャル、最悪もりばばあなんじゃなくって!?」

(ああ……最高だ……! 羨ましい……!)

「えーっと……。 バーカ! ウジムシ! ドブタニシ! ミジンコ! イカダモ! ボルボックス! ドレパノモノスコレプス! あなたは絶対に! ヤフー知恵袋で質問者に説教をしているタイプ! このドクトルワグナーJr! ジャパニーズおかちめんこ! 霊柩車にお乗りなさい!」

(ものすごい波状攻撃……!)

 さすがの彼女も少々疲れたらしい。指を突き立てたまま硬直、荒い息をついている。

「い、以上でございますわ!」

 最後にそう叫ぶと、長い黒髪をふわっとなびかせ優雅に着席した。

 前の席に座る少女が期待に満ちた顔でこちらを振り返る。

 僕はグッと親指を立てた。

「問題がわからないならそう言えー」

 先生の嘆息が響く。教室が笑いに包まれた。

(やっぱり二年A組は最高。殺村あやめがいるから二年A組は最高)

 僕は彼女の発言の全てを脳味噌にインプットした。

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