異世界へ旅立ちました ~人をだます能力で最強チートになりました~

 俺の名前は鈴木卓郎すずきたくろう。どこにでもいる18歳のニートだ。

 俺は今この世界に絶望している。

「暇で絶望しそうだ。よし、異世界転生でもするか」

 そう思った俺はジャージのまま部屋を出て、久しぶりに外に出た。

 俺の住んでいる土地は360度どこを見ても緑いっぱいだ。

 でも、俺の住んでいるすぐ近くに道路がある。

 そこでは毎日日課のようにニートがトラックに引かれている。

 俺はまっすぐにそこに向かった。

 何故なら、トラックに引かれると異世界に行けるからだ。

 そして、俺は道路についた。

 すると、すぐに近くにトラックが止めてあった。

 そのすぐ近くに天使しのエンジュエルの羽を生やし、白い衣装を着た中年の男がいた。

 その二人はサングラスをかけ、葉巻はまきを吸っており、俺の姿を見るや、

「ターゲット発見」

「了解。直ちに抹殺する」

 二人はそう言うと、トラックに乗り込み、俺のほうに全速力で突撃してきたのだ。

 明らかに俺を殺す気だ。

 この国の法律はどうなっている。

「ふっ、甘かったな。俺の回避率は99999ぅ、グハァ!」

 俺はトラックに引かれて死んだ。

 死に行く俺の目には申し訳ない程度に女子高生が道路を普通に歩くのが写った。

「パ・・・ン・・・見・・・」

 意識が飛びそうになりつつも、俺は女子高生のスカートの中を見ようとした。

 そのとき、女子高生は日本刀を持って俺のほうへ来た。

 やったぜ。

「うるせぇ、死ね」

 俺は女子高生に止めを刺された。

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「ようこそ、鈴木卓郎さん。ここは死後の世界です」

 俺が目を覚ますと、目の前に女神がいた。

 女神と言っても、その姿は巨大な雲のような塊をしており、その塊は泡立ちただれている。

 体中には触手が無数にあり、粘液をたらしている。

 そして先端には山羊の足のようなものが生えていた。

 すなわち、どう見ても俺が思った女神いつものと違った。

 ちなみに俺にSAN値チェックが発生する。

 成功で1/10、失敗で1/100だ。

 コロコロ...失敗。

 減少値は1だった。

 何だ、たいしたことはないな。

「すげぇ気持ちわりぃ女神だな!」

 俺は素直に感想を述べた。

「まぁ、無礼な方ですこと。そんなことを言うと異世界に行かせませんよ」

「すいません許してください、美しい女神様」

「よろしい、では早速あなたにチート能力を与えます」

「どんな能力ですか」

「あらゆる人間をだませる力です。」

「やったぜ」

「では、行ってらしゃいませ、勇者『鈴木卓郎』様」

 女神はそういうと異世界へのゲートを開き、俺を触手で掴んだ。

「俺男なんですけど、触手プレイしてくれませんか」

「うるせぇ、早く行け」

 俺はゲートの中に投げられた。

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 ゲートの中は見渡す限り緑しかなかったが、正面には竪穴式住居が並んでいる町があった。

「ここが異世界か。よし、早速チート能力を使うぞ」

 異世界に捨てられた俺は早速その辺の石を拾って、町に入った。

 町の中も竪穴式住居たてあなしきじゅうきょが並び、緑が生い茂っていた。

 住民たちは北京猿人ぺきんえんじんのような見た目をしており、手には光線銃レールーガンが握られていた。

「第一村人発見。ふっ、低文化の世界だな」

 俺はがむしゃらに猿たちの中に入っていた。

「ウホ!ウホッホホホホホホ。ウホ!」

 猿たちは俺を見るや、光線銃レールーガンを突きつけてきた。

「俺異世界から召喚された勇者なんだけど、この石買わないか?」

 俺は手に持っていた石を猿たちに見せた。

「ウホ?」

「これは手に持っているだけで全ての武器、魔術を使えるという品物だ。一個千ゴールドでいいぞ」

 猿たちは互いに見つめあうと、一匹の猿が竪穴式住居に戻り、ホログラムを取り出して戻ってきた。

 彼らはそれを高度に操ると、何かが表示された。

 残念ながら俺はそれを読むことができなかった。

「ウホ・・・」

 猿たちはそういうと、何故か俺に対して光線銃レールーガンを撃ってきた。

「グワァァァァアアア」

 俺は死んだ。

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「はっ!何だ夢か」

「ようこそ、鈴木卓郎さん。ここは死後の世界です」

 俺の目の前には先程同じように化け物女神がいた。

「あれ、もしかしてこれ・・・」

「あなたには異世界に行って魔王になってもらいます」

「それって、もしかしてまた猿人の世界ですか?」

「ええ、そうですけど」

 俺はそう答えに流石に呆れて、

「おいおい、女神さんよ。そんなのチート能力ないと無理だぞ」

「何言っているんですか。最初に差し上げたではないですか」

 俺はその言葉に憤慨した。

「何言っているんだ!『あらゆる人間をだませる力』なんてなかったじゃないか!」

「あら、確かに差し上げましたわよ」

「嘘付け絶対もらってないぞ」

「何か根拠でも?」

「俺はあの世界で石を使ってだまそうとしたが、見事見破られたぞ」

 女神はその言葉に対して、なにかがおかしかったのか、俺をクスクスと笑った。

「?何がおかしい」

「ああ、それは簡単ですわ。あなたに差し上げた『あらゆる人間をだませる力』はあの世界では使い物にならないですわ」

「どういうことだ?」

 女神は堪えきれなくなって大笑いしながらこういった。

「だって、あの世界の住民は皆『猿』の形をしたモンスターですもの。『人』じゃないから通じないわ」

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