魔法学校の銅像

 どっかの国の魔導学校に立派な異世界人の銅像があった。

 その銅像はかつて世界を救った異世界の勇者を模した物であり、非常に優雅なものであった。

 特に人を馬鹿にしたような気色の悪い顔と、中指を突き立てた右手がとても美しかった。

 そんなある日この魔導学校に通うカフェとモカはこの日銅像を磨く当番になった。

 年頃の少女たちはこの素晴らしい銅像を見るや、

「うわぁ、噂どおり気持ち悪ぅ~」

と非常に罰当たりなことを言った。

「ねぇねぇ、モカ」

「何、カフェ」

「この銅像超キモくない?」

「うん、すごく気持ち悪いと思う」

 そういうとモカは手に持った黒ペンで銅像の顔を落書きし始めた。

「うわぁ、モカ何やってんの」

「あんまりにも気持ち悪いから顔を可愛くしてるの」

「え、マジ!モカ天才じゃん!あたしも真似しよっと」

 こうして、二人の少女は銅像の顔を落書きした。

 翌朝、二人は再び銅像を磨くことになった。

「はぁ...、昨日のことばれちゃったね」

「うん、反省」

 カフェとモカはしょんぼり落ち込みながら、銅像のところへ行った。

 すると、二人は銅像がおかしかったのだ。

 その銅像の顔は怒りに満ち溢れており、右手だけではなく左手までも中指をつき立てていた。

 二人はその様子に驚き、

「ねぇねぇ、モカ」

「うん」

「昨日よりすごいことになってない?」

「そだね」

 そういうと、モカは銅像によじ登り、その二つの中指をどこに持っていたのか知らないがハンマーで叩き割った。

「ちょ、モカ。何しているの」

 カフェはその様子に思わず噴出し、笑いながらモカに聞いた。

「見てるとムカムカするから壊した」

 その答えにカフェはさらに笑い出し、

「やっば、モカマジ天才」

 そういうと、カフェも銅像によじのぼり落書きと破壊の限りを尽くした。

 また翌朝、カフェとモカはまた磨き係になった。

 しかし、昨日と違いカフェは涙が出るほど笑いを堪えており、モカは無表情だった。

「ねぇねぇ、ぷっ。モカ」

「何?」

「今日はどうなっていると思う?」

「わからない」

「あたしはねぇ。何かこう、んがー!となって、きっしゃあー!な感じになっているのと思うの。ぷぷっぷ。あーもうだめ。笑いそう」

 そうこうカフェがハイテンションで話しながらも、銅像のところについた。

 案の定、カフェの期待通りになっていた。

 顔には苦痛の色が伺い、目には血の涙を模した物が流れており、指からは血のような姿になっていた。

 流石のカフェも銅像の悲惨さに同情した。

「うわぁ、流石にすごいことになってる・・・。何だかかわいそうに思えてきた」

 しかし、冷酷なモカはお決まりの如く銅像に、

「ファイア」

と炎魔法を浴びせた。

「ちょ、モカ?今度は何?」

 カフェは流石に無表情で銅像を攻撃するモカに恐怖感を抱いたのか、顔を青くしながらモカに聞いた。

 モカはいつものように無表情で、

「とどめ刺さなきゃ」

と答えた。

 カフェは溜息ためいきをついて、彼女に対してこういった。

「あんたサイコパスだね」

 こうして、銅像は溶かされた。

 溶けた銅は換金所に売られた。

 またまた翌朝、当然カフェとモカが銅像を洗うことになった。

 カフェは昨日の一件が忘れることができなかった。

「ねぇ、モカ」

「何?」

「今度は何もしないでおこうね」

「大丈夫だよ。もうないから」

「はぁ~、あんたねぇ・・・」

 そうこうしているうち、銅像があった場所についた。

 そこで驚くべきことがあった。

 銅像が最初見たときと同じ姿をしていたのだ。

 しかも、傷一つなく。

「あ、あれ。おかしいなぁ?ねぇ、モカ」

「何?」

「確かあたしたち銅像破壊したよね?」

「うん、壊さなきゃ」

「いやいや、モカ待ちなさいよ!まだ話は・・・」

 カフェがモカを止めようとした瞬間、それが起こった。

 銅像に突然ひびが入り、中から肥満体の男が飛び出してきた。

「きゃあ!」

 カフェは驚いて、声を上げてしまった。

 中から出てきた肥満体の男は彼女たちを睨みつけると、

「デュフフフフ!よくもやってくれたな小娘たち!俺こそが勇者『鈴木卓郎』!」

「わ、わ、わぁー!銅像の中から人が出てきた!」

 カフェは驚きのあまり腰が抜けてしまい、うまく立てなくなってしまった。

 男は彼女たちを見据えると、まるで説明するかのように語った。

「デュフ!俺は元々日本に住んでいたんだけど、ある日この世界に召喚されて魔王を討伐することになった。そして、見事魔王を倒した俺は銅像にされてしまった。畜生!何が『英雄の魂が入った銅像じゃ』!チート能力がなければって、グハァ!」

 卓郎はモカにナイフで刺された。

「えっ、いきなり何?」

 卓郎はあまりの事態に理解できなかった。

 モカは不気味に笑い、

「あなたが好きだから」

「ああなるほど、ヤンデレか」

 卓郎はそのまま絶命した。

 カフェはその理解不能の光景のあまり、呆然としていた。

「ってことで、世界滅亡させます」

 モカはそれだけ言うと手にブラックホールを生み出して、それを解き放った。

 そのブラックホールはこの世界の全てを飲み込んだ。

 こうして世界は滅亡した。

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