SCP-1287「かなしまないで」について

 私は、私にできることをした。


 オブジェクトクラス:safe→Neutralized


 SCP-1287は、アメリカのワシントン州██████にある、白い大理石で構成された直方体のブロックです。大きさは高さ3m、長さ10m、厚さ1mです。SCP-1287は原因は不明ですが移動させることが出来ず、またたとえ思いっきり殴ろうが蹴ろうが、ロードローラーで無駄無駄しようが傷一つつけることができません。あとペンキを塗ってもペンキが剥がれ落ちます。つまり傷どころか汚れ一つつけることすら叶わないわけです。

 財団は動かせないオブジェクトと知るやいなやさっさとSCP-1287の周囲にサイト98を建設しました。さすがここまで異常存在を収容してきた財団、手慣れてます。


 SCP-1287には不規則な間隔で現在財団調べで失踪者、推定死亡者と姓名が一致する人名が彫り込まれており、この彫り込まれた名前の一つのみに触れた時に名前に触れた対象者(以下、対象者)は、「声が聞こえた。」と報告します。この時、トリガーは名前の《一つのみ》という点で、2つ以上の名前に一度に触れた時は特異性を発現しなかったそうです。

 声がささやく内容は対象者毎に違いますが、どの対象者も親愛と同情の念を覚えるという大まかな傾向があります。対象者に声はこう語りかけます。「この人の家族にはあなたの助力が必要です。彼らを救うために、あなたの人生を使っていただけますか?」と。


 この質問に肯定する発言をすると、対象者は触れた名前の人物へと見た目が変化します(以下、SCP-1287-A)SCP-1287-Aは行方不明の時から行方不明だった時間分成長して変化します。例えば、8年間行方不明の4歳の女の子についてSCP-1287-Aへと変化したとき、SCP-1287-Aは12歳の女子中学生として発現されます。

 SCP-1287-Aへと変貌した時に触れられていた名前はこのとき消滅します。

 SCP-1287-Aは行方不明者の失踪当時の記憶と行方不明者についての知識を持ち、SCP-1287-Aの元となった人物しっそうしゃの家族、もしくは親しかった人の元へ帰りたいとする衝動に駆られます。この時にこの衝動に従ってしまうと…

 ①SCP-1287-Aの元々の記憶(SCP-1287-Aになる前の記憶)が3ヶ月の間で消滅し、記憶消滅後は自分はもとから「元となった人物しっそうしゃ」だったと信じるようになります。

 ②SCP-1287-Aを視認した元となった人物しっそうしゃの家族、もしくは親しかった人は、元となった人物しっそうしゃがどこに居たのか、などへの関心を著しく喪失させます。また同様にSCP-1287-Aもまたそれに関する情報を話すことも非常に消極的です。しかし、面と向かって真っ向に問い詰められた時は話すことがあります。


 ②より財団は今の今まで使い捨ててきた財団職員のうち、任務途中に行方不明となった職員50名以上がSCP-1287に刻まれているため、Dクラス職員にでも名前をさわらせてその職員たちの記憶を記録することが出来ることが判明しました。その場合、必要な情報を一通り吐かせた後、即座に「終了処分」を下すことが推奨されています。汚い、流石財団汚い。




 追記:SCP-1287を収容し始めて2ヶ月後ほど後、SCP-1287-Aへ変化する際の異常性の最初期段階「囁く声が聞こえる」が発生するまでにタイムラグが発生してきました。なんでだろうと思いながら収容し続けてそれから4ヶ月後、SCP-1287に関する異常性全てが消滅しました。普通に大理石に傷をつけることも砕くことも、移動させることも可能になり、これは本部の研究機関にでも突っ込まねばとトラックで運搬してる途中、異常性とか関係なく単純に事故りましてSCP-1287の内部から1つの男性と死体が出てきました。財団の研究技術で内部の男性の遺体を検査したところ、わりと恐ろしいレベルの現実改変能力者であることが判明しました。

 さらに調査を進めていくと、その男性は失踪者捜索プログラムへの資金提供を行っていた人物であり7年前に死亡したとされる【プライバシー情報のため添削済み】であると特定しました。

 また、SCP-1287内部に書き込みを発見しました。

 内容は「そう遠くないうちに私の力は消える。だが、それでいい。私は、私に出来ることをした」というようなことが書いていました。


 ここから推測が始まります。あ、ここから俺がまとめますね。

 SCP-1287に刻まれた名前に触れ、「自分の人生を捧げる」ことに肯定すると、SCP-1287-Aになります。このSCP-1287-Aが自宅に戻ると、関係者は記憶が消し飛び、「失踪者が家に帰ってきた平和な日々」が戻ってきます。3ヶ月もすればSCP-1287-A自体の「前世の記憶」も消えますからね。もうなーにも心配いらない平穏な日々が返ってくるわけです。


 このSCP-1287を動かしていたと推測される人物はもちろん内部にいた男性。彼の身柄からおそらく彼は現実改変能力によって「失踪者が家に帰ってきて平和な日々を過ごす」ことに尽力したのでしょう。彼は自身の能力によってSCP-1287を稼働させ、数多くのSCP-1287-Aを待ち主の元へ返していったのでしょう。

 しかし、能力を消費していった結果、能力が尽きてしまい結果異常性が消滅。その後発見…みたいな形だと思います。SCP-1287内部に書かれていた通り、彼は彼に出来る最高のことを成し遂げたのでしょう。


 現実改変能力は危険な代物です。「こうなればいいのに」と念じれば大体叶ってしまいます。死体だって生き続けることが出来ます。しかし、現実改変能力、及び「強い力」は使いようによって薬にも毒にもなる代物です。もし強い力を手にしたら、衝動のままに振りかざすのではなく、一歩引いて考えることが必要なのかな、なんて思います。

 まとめ終わり。それでは、次のSCiPで。




 おまけ

「1ヶ月に1つは投稿する」と言った次の月、堂々とサボってすいませんでした。

 単純に環境の変化についていくのに必死で書く暇がなかったってのが実状です。

 ところで今回のSCiP、「失踪者が帰ってくる」わけなんですけど、別に初代味噌汁が失踪者と化したわけではないです。今書いてるのは2代目ってわけじゃないです。


 ほんとですよ?

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