同性愛作品というと、其処に至るまでの葛藤を描く物語が多いでしょう。けれどこれは違います。既に成立した愛に唐突に終わりが訪れるところから始まるのです。時間の経過の残酷さ、確かに在った愛を見失う恐ろしさ。一人称で描かれているからこそ直接的には記されない底知れない歪みがこの作品の肝だと私は思います。読了後に胸の奥に残る小さな傷の痛みが純粋に恐ろしく愛おしい、そんな作品でした!