第105話 『交響曲第2番』 ベートーヴェン

 まだ若きべー先生の傑作。


 1801年から02年に掛けて作曲されましたが、1802年というと、名高い『ハイリゲンシュタットの遺書』が書かれた年です。


 やましんも、若い時期にこの『遺書』の日本語訳は読みましたが、また実際に今、目の前にもその訳文があるのですが、これは通常の意味の『遺書』ではないと考えられておりまして、べー先生がそれまでの自分に決別して、新しい境地に達しようとするときの、宣言文のようなものだろう、と言うのであります。


 実際、べー先生はそこで自決したりはしなかったのでありますが。


 『交響曲第2番』は、その同じ年に、こうした深刻な文章を書くとはとても思えない、清明な美しさと、生き生きした活動力を兼ね備えた音楽です。


 第1楽章の第2主題は、高校生時代のやましんをいたく感動させましたし、かなり深遠な第2楽章は、もう少しあとの、感じやすく傷ついてばかりのやましんを、深く慰めてもくれたものであります。


 けれども、この曲、『第3交響曲(『英雄』交響曲です。)』以降の音楽とはかなり違う、社交的で喜遊曲的な性格も、いまだ持っております。


 世の中に、褒めてもらう意志を維持してはいるのです。


 『第3番』以降は、世の中に挑戦し、対立も辞さない構えとなります。


  初演は1803年4月5日。ウイーン。


 『ハイリゲンシュタットの遺書』は、この世に対する『宣戦布告』だったのかもしれないなあ、とも、勝手に思うのであります。


 その直前の、どこかが、もう少し、突き抜けた感じの音楽でもあります。


 この先は、西洋音楽の分野では、全人未踏の領域を切り開くことになるという、その直前の、大嵐の前の、ちょとしたオアシスみたいな感じでしょうか。


 まあ、なんだか、『もう全て終わったよなあ』、という感じで、いまやましんは聞いているわけですが、いやあ、もしかしたら、大嵐が来るのか?


 なんだか、不安な寒風が吹き抜ける、怪しい師走となりましたが、この曲自体はなぜか『うきうき』な交響曲なのです。



  *********** うき ☃☃ うき ************






 


 





 




 

 


 

 


 

 




 


 

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