勇者を待つ魔王伝記
@kilinagi_macoto
プロローグ 現実見ろや
俺TUEEEEEEEEEwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
やべえ余裕で魔王倒しちまったwwwwww
なんか前の勇者さん? とかが激戦の結果、負けちゃったとかいう魔王相手にワンパンで勝っちまったw
で、魔王を倒した今。
ここからどうすんの?w
確か、俺をこの世界に導いた『神様』は魔王を倒し、殿堂入りを果たしたら『ハーレム』を実現させてやろうと。そんなことを言ってた気がする、というか絶対そうだ。
だってその為だけに魔王を追っかけて冒険に出たんだから。それぐらいは覚えている。
「さてと。神様、どうせ見ているんだろう?」
周りは真っ白で終わりが見えない空間。
魔王を倒したと思えばそんな空間に居た。おそらく神様の仕業だろう。
この空間は壁という概念は存在しない、そう思わせられるほど広い場所だ。
そんなことを思っていると声が聞こえてきた。
(聞こえていますか……今、あなたの脳内にしゃべりかけています……早速ですが殿堂入り、おめでとうございます……)
どうやら神様は俺の脳内にしゃべりかけているらしい。
「聞こえてますよ。ところで俺の声って聞こえてるんですかね?」
「……聞こえていますよ」
「ッ!?」
いきなり耳元で囁かれたせいで体がビクッと跳ねてしまう。
神様という名のピンク色の髪の毛をした少女は、いきなり俺の背後に現れて囁いたのである。
ちょーこわい。ドッキリ苦手。
「ビックリさせないでください」
「失礼しました。早速の本題ですが、魔王を討伐した暁にはハーレムを実現させるという条件でこの世界に転生したんですよね」
「はい」
「率直に言いますと、それは無理です」
「は?」
「無理、といいますか。私情が入りますが……私が嫌なんです。あなたにハーレムを提供するのを」
「そっ、それはまさか嫉妬!?」
「ちちちちち違いますよッ!」
即否定された。少し心にさびしさを感じる。
「あなたはこの世界で俺TUEEE展開を繰り返ししすぎです。まるで生きていく苦労を知らない、そんなあなたに最高の舞台を提供したくて……」
バカか。俺にはこの神様が言いたいことがなんとなくわかる。
それは。
やり直せ……、だろう。
「ふざけるなッ! 言っときますけど、多少の苦労はしたんですよ!? なのに、やり直せとか……ッ」
「は? なにを言ってるんですか。あなたがなぜ、こんなにも楽々この世界を攻略できたのか。そこは私が一番存じ上げています」
「え、あ……はい」
「あなたにはこれから新しい伝説を作るのに協力してもらいたいのです。 次は『勇者に討伐される』という伝説を」
神様は優しい顔で俺を見つめている。
とても、とても心が安らぐ。実家のような安心感。これが神様の力なのだろうか。
そして口が勝手に動く。
「りょ、うかいです……」
「今度はあなたが勇者にやられる魔王軍側です。勇者が来るまでひたすら城で待つ。簡単な事でしょう?」
「今度は俺が、勇者に殺される、んですか……?」
「はい。では、よろしく頼みます」
・
・
・
俺はその神様の言葉を聞いてからは意識が途切れていたようだ。
気づけばボロボロのベッドの上で寝ていた。
周りを見渡すが誰もいない、魔王討伐を手伝ってくれたパーティーも。
窓から光が差し込んでいるだけの部屋。
「……クソ喰らえ」
勇者を待つ魔王伝記 @kilinagi_macoto
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