第4話 何かと詮索されたわけで(娘二人から)
いやはや、人間のテクノロジーには隙がない。知らぬ存ぜぬは最早許してくれないらしい。猫の我が侭もこれまでなのだ。
尽きることなく女達から質問が繰り出される。
「お名前は?」
「どこから来たの?」
「
「独身ですか?」
「その姿は何の種族?」
うん、これは面倒なことになったかもしれない。
フィアットという尖り耳の貧相な娘と、ヒタチという豊満な娘、真面目そうに覗き込む二人を前におうどんは後ろ足で耳をかいた。
まあ、正直に答えない理由もない。
名前? 美咲がインターネッツというもので彼の写真とともに打ち込んでいたモノを思い出す。
「えーと、ですね、『おうどん @ 河村……』」
「ちょ、ちょっと待って!」
名乗りかけたおうどんに、突如フィアットが割り込んできた。
「私達を信頼してくれるのは嬉しいけど、
「そう?」
「その通りですわ。
「うん」
「ひょっとすると貴方様は遥か遠くの国から旅されてきたのですか? この世界のルールを存じないとは」
おうどんは頭をかしげる。
「……うん、そうとも言えるのだけれども」
「わかった!」
またもやフィアットがおうどんの言葉を途切れさせる。
「最後までよく聞き取れなかったけど……私は貴方のことを@と呼ぶわ! なんか不思議な言霊を感じる」
いや、そんなことはないと思う。
「フィアットにしては善い考えですわ。いかがです、@様? あまりにも僭越でしょうか? 馴れ馴れしいでしょうか?」
確かにそこまでの拘りもないのだが。
@は面倒になって頷くことにした。@はこのときまだ知らなかった。この世界において
どっちにしても、どうでもいいんだけども。
こうして@は、二人との微妙に咬みあわない会話によって、新しい
名前:@
種族:
いろいろ誤解されているようだが、@は捨て置くことにした。嘘は何一つ言っていないし、そもそもよくわかっていない。今まで美咲を始めとする人間達を顎と鳴き声一つで使ってきたし、自分がどこに住んでいたなどと気にも留めていなかったからだ。
ただ気になることが一つ、二人が彼を見る目が、これまで自分が向けられてきたものとは全く異なることだ。悪意など一切感じなかったが、微妙にくすぐったかった。
納得したのか、ヒタチが@の喉元をくすぐってきた。
「それで@様、貴方はどこに行かれるのですか? ずいぶんと遠い旅路を歩いてきたのでしょう? もし 私だけでよろしければご一緒させていただけませんか?」
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