第6話『宿屋の食事が全力で私の水分を奪いにトリプルATAKでやって来る。』
いや、別にね?
悪役とかじゃないから死なないとは思うけど一応。テンプレだしね。
……あー、
でも攻略し尽くしたゲーム程面白くないゲームもないよなぁ。よく考えてみれば。あえて思い出さないで、忘れて新たな気持ちで楽しむってなのが良いかも。
ウン、そうしよう。ゲームは楽しむもんだからね。
「確か、ストーリーを楽しむ系の丸ボタンカチカチゲームだったし、選択さえ真面目にやれば死ぬってことはないね」
それよりも、このゲームはかなりハマってやり込んだからゲーム内容を忘れれるかのほうが重要だよね。あの、イケメン共の屈辱に染まった顔とか、忘れたくても、忘れられない快感だし。
「てか、今何時?お腹すいたんだけど、ちく輪食べ損ねたし」
そう、辺りをみわまして見る。結構広い。
雲の上かと誤解してしまいそうなほどのフカフカベット、余裕で大人3人ぐらい隠れんぼ出来そうなほど大きいクローゼット、怪盗が優雅に入ってこれそうな大きな窓、ぶら下がって遊べそうなシャンデリア、ふさふさの赤い絨毯、さっきまで見てた美しい少女が映った鏡、今すぐ質屋に駆け込み売りたいという衝動に駆られるお高そうな絵画、以下省略。感想、
「高そう。売りたい。んで、ゲーム買いたい」
しかし、それだけのものが並ぶ中で、時計だけが無い。窓から日がさしてないことから、多分夜ってことしかわからん。
どうすんだよ。腹減ったよ。ちく輪でも何でも良いから固形物食べたい。ゼリーは却下。
「……って、あるじゃん」
すぐ後ろの、これまた高そうな、繊細な細工が入った小さめの机の上にクッキーと、メロンパン、ちんすこうが置いてあった。
「……えっと、コレは何かの嫌がらせ?!」泣くよ?!
見事に、口の水分を全力で狙ってきてる。いや、冷静に考察してる場合かよ!おかしいだろ!お菓子だけに!
「なんか、和洋折衷通り越して、お前は何をしたかったんだよ。せめてヨーロッパ風とか、日本風に統一しようよ、ゲームだろ?そういうのちゃんとしないとプレイヤーが離れてくぞ……そして水分ください」
もう、何なんだよ。今日いったい何回「何なんだよ」と、「意味わかんないよ」使うんだろ。一生分使った気分だよ。
もう疲れたよパトラッシュ。死ぬ気は無かったけど精神的にこのゲーム私のライフ削って来るよ。
「まぁ、これも含めてゲームなんだろうし、楽しまないとだよね。自称ゲーマーの名が廃るわ!」
おっしゃ、なんか元気出てきたぞ!カラ元気だけどな、いろいろ諦めて最後に浮かべる笑顔って感じの元気だけどね!
「よし。メロンパン食べて寝よ!」
むしゃむしゃと、特に好きでも嫌いでもないメロンパンを腹に収め、ベットに横になった。さっきまで寝てたというのにまた眠気が襲って来る。最近、ゲームばっかで寝てなかったからなぁ。
「はぁ~、コーカイしない様に、だね」
死んだり、生き返ったり、土下座されたりいろいろあったけど……なんだろうこのどこからも無く溢れ出てくるワクワク感。
きっと、絶対面白いことが出来る、そんな予感。いや、確信。
そんな淡いくも、確かな期待を胸に私は眠りに落ちた。
『それは、貴女次第』とでも言うかのように星は静かに瞬く。
私のベットが静かに重量に逆らい浮くのを、その星たちだけが見ていた。
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