第2話今日も波乱の1日になりそうです………



「あれ…麻茨まいばらじゃね……?」

まさるだけが声に出していたが、クラスの全員がそれに気づいている。

本当、着地のことを考えなければ、あいつの能力は最良の移動手段だな。

「っておい!あおい!このまま来るとお前に直げ…………」


「…………えっ?」

すっかり教室のはじへと避難した勝たちに目をやり、もう1度振り向いた時はもう、やつは目の前まで迫っていた。


ヒューん……………ガッシャーン!!!


「いっててて〜」

倒れ込んでいた愛在メアリはゆっくりと体を起こし、すぐさまビシーッと時計を指さした。

時間を確認し、朝礼前だと気づいたようだ。


「よっしゃぁぁ〜なんとか間に合った〜」

バンザーイバンザーイと両手を上げたり下げたり、朝から騒々しいやつだ…

しかも人の体の上で!


「おい、お前。そこのショートボブ。そろそろ俺の体から降りろ!重た……」

ゴチンッ………

「それより先を言ったら、次は星の反対側までぶっ飛ばすわよ♪」

愛在は俺の目の前でしっかりグーを構えている。


「おっおい。針真はりまくん。大丈夫か………って……」

流石にミチルも心配してくれたのか、声をかけてきた。

声をかけてきたのはよかったんだが。

そこでミチル含め、クラスメイトが目にした光景は、場合によってはポリスのお世話になっていただろう際どいものだった……


仰向あおむけに倒れた俺の腰のあたりに、またがるように座り込む愛在。

そう、それはまるでじょ……


ゴッチーーーーン


「針真〜針真〜次、変なこと想像したら、2度と帰ってこれない宇宙の彼方かなたへ旅に出ることになるから気をつけてね♪」

いくら俺を殴ろうと、痛くも痒くもないのだが、宇宙空間に飛ばされるのは……って!何も想像してねぇよ!


「まっまさかお前ら。もうそんな関係だったのか…」

勝から向けられるのは羨望せんぼう混じりの驚愕きょうがくの目。

「安心したぞ!針真くんもやる時はやるんだな!」

ミチルからは子離れした親のような、それこそ安心した目が向けられている。


この勘違い野郎どもはどうでもいい。

致命的だったのはもう一つの視線………

萌々菜ももなが今にも泣き出しそうにしながら、軽蔑けいべつの目を俺たちに向けていた。


それに気づいた愛在は、俺の上から飛び退き、とんでもないスピードで弁明べんめいを開始した。

「モモ違うの!これはあいつがあつかましくも、私の目の前に突っ立ってのが悪いのよ…」

っておいおい!なに人様に罪をり付けてるんだ、こいつはぁ………


「勝手なこと言ってんじゃねぇよ。てか、さっきはよくも俺をぶっ飛ばしてくれたな!!」

さっそく俺は、愛在に食ってかかる。


「それだって針真が悪いんでしょ。急に曲がり角から飛び出したあげく……こんなところでぶつかるなんて、俺たちって案外、運命で繋がってるのかもな……なんて、悪寒おかんで死ぬかと思ったわよ!」


そうそれは少し時間をさかのぼること十分前………

俺はゴールデンウィーク明けの五月病ごがつびょうを発症し、家でグズグズしていたら、完全遅刻コースとなり、詰んでしまったていた。

俺は、諦め八分で住宅街を全力で駆け抜け、そこを曲がれば学校が見えてくる曲がり角に飛び込んだのだが…

そこでとある少女と偶然、ぶつかってしまったのである………


結論からいえば、その少女が目の前にいるショートボブだったのだが、普通、こんなシチュがあったら誰でも運命感じちゃうだろ!

どうだ!世の男性諸君!感じちゃうだろ!


「悪かったな!お前みたいなヤツに運命なんて感じた俺がおかしかったよ!」

「いいわよ。針真は基本的におかしいから〜」

こっこいつ…………!!

人に謝罪させといて、自分はそんな態度かよ。


ぐぎぎぎいいいぃぃ………

これはいささか誇張こちょうされた表現だが、俺と愛在の間では、バチバチと火花が散っているようだ。


キーーーーーン

コーーーーーン

カーーーーーン

コーーーーーン


朝の朝礼開始を知らせるチャイムと共に女性担任教師が教室のドアを開け、入ってきた。

「ほら〜席につけ〜そこの二人は、いつもいつも夫婦喧嘩けんかしないよ〜」

担任教師からの思わぬ口撃こうげきに、俺と愛在がきばいたのは、同時だった。


「「俺たち(私たち)はそんな関係じゃなああああぁぁぁい!!」」

怒りのハーモーニーが教室中に響き渡り、一瞬の沈黙が訪れた後、担任教師がさらなる爆弾を投下した。


「ほら!息ピッタリ♪」


「「んなことねえええぇぇぇーーーー」」


その後一悶着ひともんちゃくあったことは言うまでもなく、しばらくしてから、ようやく朝礼が始まった。

「えぇそれでは皆さんにお知らせがあります。もうだいぶ噂も広まり、知っている人もいるでしょうが、本日より、この1年A組に新しい仲間が加わります。針真さ〜ん入ってきて」


はっ、はりま?

俺と同じ苗字か?


教室に入ってきた少女はさっそくチョークを手に取り、黒板に大きな三文字を刻んだ。


針真灯はりまあかりです。今日から皆さん、よろしくお願いします」

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