故意に恋させコイしがる!?

十坂 翔

第1話俺の変わった友人達を紹介します!

プロローグ


俺は今、諸事情しょじじょうにより空を飛んでいる。正確には、どこぞの奴にぶっ飛ばされたのだが…

とにかく、おかげ様で遅刻は回避できそうだ。

着地のことから目を背ければ、最も効率のいい移動手段だな。全く………

ところで。そろそろ校舎こうしゃが近づい……………


ヒューーーん…………ガッシャーン!


「おうおう、朝からド派手な登場だな。あおい

「おっおはよう!葵くん!」

「ちょっとぉぉぉぉ〜!針真はりまくん!また窓ガラスわってくれやがったな!」


友人達から文字通り、三者三様さんしゃさんよう挨拶あいさつが送られてくる。

パッと見、なんと素晴らしい友人達だろう…となるシチュだが。

よく考えてみろ。友人が三階の窓から飛び込んで来たのに、コイツら「大丈夫?」の一言もないんだぞ!ひどくないか!

まぁ実際、これまた諸事情により俺の体は無傷なんだけど…


「おいおい、お前ら。まさかと思うが……こんな状態の友人をいたわってくれないのか!?」

なんともない体を俺はゆっくり持ち上げながら、友人達に愚痴ぐちをこぼす。


「実際、どうもないんだろ〜」

通常とは逆の方向でと言って伝わるかはわからないが、背もたれにひじをついた状態でイスに腰掛ける友人Aが、しげも無く正論をかましてきやがった。


まさるよ…そういう問題じゃないだろ…」


「ごっごめん!私、びっくりしちゃって……あっあのぉ…大丈夫?」

続けざまにちょっと小柄な少女、友人Bが声をかけてくれた。こいつは嘘をつくようなやつじゃないし、本心で言っているのだろう。いつもいつも優しいやつだ。


「おっおう!俺は大丈夫だ。あっありがとな、室岬むろさき

俺が少しキョドっている件については目をつむってほしい………


「もぉ萌々菜ももなは甘すぎる!ここは源勝げんしょうの言う通り、なんもなってないんだから、心配いらないのっ」

友人Bと比べると、少し大人な雰囲気ふんいきがある友人Cが友人Aに同調した。全く、AとCにはBを見習って欲しいものだ!


「おいおい道奥みちのく。ここは俺を心配しといた方が、女性としての株が上がるぞ〜」

「おいおい針真くん。君が私を恋愛対象として見ていたなんて、初耳だぞ」

「誰もそんなこと、言ってねええええぇぇぇぇーーーーー」


とんだ勘違い野郎だな全く………


「もしやもしや〜萌々菜ちゃんはそれを狙っていたのかなぁ〜?」

友人Cが友人Bににくたらしい笑みを浮かべながら、話題を振った。


「えっ?えええ?ミチルちゃん!?わわ私はそんなつもりで言ったんじゃないよ~?」

明らかに動揺している友人Bに友人Cが追い打ちをかける。


「あれれ〜何で疑問形?動揺してる?もしかして〜図星〜?」

「だっだから、違うってばーーーーー!!」


ガールズトークについていけなくなったので、ここらで少しコイツらの紹介をしておこう。

友人AだのBだのって言っていたら、二十六人しかまかなえないしな。


まずは友人Aこと源勝みなもとまさる


源勝げんしょう」って言うのは愛称みたいなもんだ。

古くからの友人で、諸事情により指先から圧縮空気の弾丸を放てる。

身長は俺よりも高く、筋肉質な体つきをしている。


次に友人Bこと室岬むろさき萌々菜ももな


中学3ぐらいから仲良くなって、今年の春からも同じ高校に通っている。

こいつは素直で優しいし、かわいいし……―以下略―

ちなみに室岬を諸事情は抱えていない。


最後に友人Cこと道奥みちのくミチル。


いつも勝と一緒にいて、付き合ってるんじゃないかと疑っているのだが、本人達は否定している。

こいつは諸事情により、無生物むせいぶつを1分前の状態に戻せる。

さっき俺がぶち破った窓ガラスも、もうすっかり元通りになっている。


後1人、紹介すべきやつがいるんだが…まだ学校に来ていないようだし。

そもそも、あまり紹介もしたくないのだが…俺をぶっ飛ばしてくれやがったのそいつだし。


「おっそろそろ朝礼の時間だな。なんか今日、転校生が来るらしいぞ」

「あぁ。聞いたよ。しかも美人ってうわさだぜ!!」

「らしいな。だからこそ、絶対に遅刻は避けたかったからな」

ガールズトークを左耳で盗み聞きしながら、俺は勝と女子転校生の話題に移った。


「楽しみだな!!!」

「そうだな」


なんか勝の盛り上がりようがすごいな…そんなに楽しみなのか?


「ちょっとちょっと〜針真くん。転校生なんかにうつつ抜かしてると、お姫様に殺されちゃうよ〜」

「あのな…毎度毎度言ってるが、俺とあいつはそんな関係じゃないっての。そもそも、舞い上がってるのは勝の方な」

「またまた〜照れちゃって〜その態度も、一周まわって愛の形なんだねぇ」


相変わらず、とんだ勘違い野郎だ……………


「そういえば、麻茨まいばらのやつまだ来てないな」

愛在メアリっていつもギリギリにくるじゃん。今日もきっとくるよ!ねぇ針真く〜ん」

「多分だけど、愛在ちゃんって学校休んだことないんじゃないかな?」

話題がどうやら、俺の天敵こと麻茨愛在まいばらメアリに移ったらしい。


にしてもあいつ、俺と同様に全く心配されないな……………

まぁこれはこれで信頼の証なのかもな……


「おっおい!なんだあれは!」


なんか1人で感慨かんがい深くなっていると、クラスメイトの1人が大声で叫び、空を指さしていた。


クラスメイトの視線をなぞり、空に目をやると、なんか人影ぽいものがこちらに向かってきているように見えた。


「なんか見覚えあるシルエットだな………」


「たった、助けてええええええぇぇぇぇーーーー」


謎の飛行物体から聞きなれた声が………ってまさか!!


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