若者が移住したくなる地方づくり大作戦

ハリマオ65

第1話:都会暮らしってほんとに良いの?(201803-201812)

 2018年、春。海津一郎は新卒で日本の大手自動車販売会社に入社し

セールスコンテストでも優秀な成績で年収は同期でトップの660万円

「手取り480万円」奥さんは3人の子供をみる専業主婦。

 首都圏で駅近くの2DKの新築マンションに12万円/月で借りている。

 マンションの諸経費4万円と駐車場代2万円であり、18万円「住居費」

 5万円「食費」電気ガス光熱費3万円、税金、保険、医療保険、8万円、

スマホ3万円で貯金が出来ない生活。


 今年の夏休み、家族で山陰の海近くの町の農家民宿に泊まった時、その宿の主人

と酒を飲んで、いろんな話を聞く事ができた。ここは過疎でバスも少ないしコンビニ、スーパーも少ない。しかし畑で野菜、果物、岬の近くの魚市場で売れ残った魚を格安で手に入れ生活していると食費は、月に2万円で、税金、医療保険・電気・ガス・水道代合計を入れても、総額、月に5万円で生活していると笑った。


 その農家民宿のご主人が、あなたみたいな若い大家族が来てくれると、本当に助かるんですよ、と言い、奥さんと移住を考えてみてはいかがですかと奨めた。

 海津一郎は、その話を聞いて5万円と言えばマンションの諸経費と駐車場代と同じではないかと驚いた。この話を聞いて彼の心にさざ波がたった。

 今の生活って、本当に良い生活なの?という素朴な疑問がわいてきた。


 マンションでは近所付き合いもなく、ただ生きるために毎日、身を粉にして働いて入ってきた給料のほとんどが出て行く。会社のノルマを達成すること意外、何も考えられない人生にむなしさが去来するのだった。

奥さんも、この旅行で

「本当の幸せな暮らしって何だろうか」と考えるようになっていった。


 数ヶ月後、会社で新車の販売台数コンテストで海津一郎が初めて新人の吉田和夫に負けて報奨金50万円を手にできなかった。上司の課長から吉田和夫はスーパルーキーだと誉められ、海津一郎に対しては、営業スタイルが時代遅れなのかもしれないと嫌みを言われた。


 吉田和夫の父は中企業の会社社長と市議会議員をつとめており顔が広く、そのつてで、彼は苦労せずに上客を多くつかまえていった。その後も上客の家族、親戚の買い替え需要もあり抜群の成績を残した。いままで海津一郎は販売コンテストの報奨金で家族旅行や車の買い換えなど大きな買い物をしていた。その金がなくなって生活費、

意外の余力がなくなってきた。


 ある日の夕飯の時、奥さんに田舎で、もっと、ゆったりと暮らさないかと切り出した。それに対して奥さんは心配そうに本当にやっていけるのと言うのだった。

 奥さんは両親に聞いてみようと思い、数日後、奥さんは実家へ行った。


 お父さんは、そう言う考えも一つの選択肢だと言い、都会は物価が高いし、忙しい生活だ。その点、田舎は生活費も安く、過疎化、高齢化で大変だから、歓迎されるし、良い選択かも知れないと言った。もし駄目になっても、まだ若いから、こっちに戻って来てやり直せると言った。


 お母さんも若い人や子供が少ない所では大事にされるから良いかもねと言った。

 これを聞いて奥さんは、やってみよう。家に帰り、来月、また、あの海辺の過疎の町に出かけようと話した。すると、そうしようと快諾してくれた。そして、農家民宿の主人に連絡すると喜んでくれた。数日後の木曜日に家を出て、山陰の海近くの町

へ向かった。午後3時過ぎに、その農家民宿に到着した。


 宿の御主人が出て来て、電話もらってから、役場の人に移住の関係書類を届けてく

れるように連絡しておいたと言った。そうして、夕飯をいただいて、風呂に入り、民宿の人と雑談をして、早めに床についた。


 翌日、役場の山田さんが移住関連の書類を持参して民宿を訪ねてきた。

 食堂で、山田さんから話を聞くと子供の保育料と医療費の補助があり希望すれば、村営住宅を安く借りられると教えられた。次に、役場でも1人位、9人乗りのワゴンの運転手として1人位、雇えるし、他に希望があれば、港の漁港での下働きの口も

あるだろうと話してくれた。


 役場の9人乗りのワゴンの運転手として高齢者をスーパーや病院へ老人を送り迎えしてくれたら助かると言い、良いアルバイトになるよと言ってくれた。給料は、月に10万円/月と言った。それだけあれば何とか、やっていけると言った。また奥さんが老人介護施設に採用されれば月に15万円、十分に暮らしていけると言った。


 移住支度金まで5万円出るというのには驚いた。それを聞いていた奥さんは、みなさんが、喜んでくれるなら移住計画を進めてみましょうと笑いながら言った。役場の山田さんは、是非、宜しくお願いしますと頭を下げた。農家民宿の主人が、私が仲介役になるから、何でも相談してくれと言ってくれた。この周辺は、最近、光インターネットも使える様になったと自慢げに話した。


 そのため海津一郎は今年の冬のボーナスをもらって、来春から移住という計画で行く事にした。その話を奥さんが実家で両親に話した所、喜んで挑戦してみたら良いと応援してくれた。その年も暮れて新春を迎えた。初詣で、今年の移住計画が、うまくいきます様にと海津夫婦は願った。

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