mission 4
首相官邸に連れて来られ待合室に通されたが、待合室に通される時に武器は全て回収された。
いや、幸い全部では無い。
ブーツ裏に隠したダガーナイフと服の中に隠した折り畳み式カランビットナイフの2つを何とか持ち込めている。
とは言っても単にバレて無いだけであって、見つかれば回収されるだろう。
俺は武器を持って無いと手が震えて正常な判断が出来なくなる。
怖い……そんな感情が俺の中で渦巻く。
今だって銃が無いと少し怖い。
思えば日本に来るときは心臓がパンク寸前だった。
それを隠してよく頑張ったと自分を褒めたい。
「空?どうしたの、そんな怖い顔して」
「いや、別に何でもない。少し昔を思い出してただけだ」
「それは3年前の事?」
「……あぁ」
3年前、俺は武器を一切身につけることが許されず”学校”という場所に放り込まれた。
中学校という場所は俺にとって初めての学校であり、同時に日本語を再び身につけなければならなかった。
学校の先生が|一度(ひとたび)帰国子女などと言えば殆ど関わり合いのない同年代の男女が容赦無く色々聞いてきたものだ。
その時、俺は『人』と言う恐怖を味わった。
だから俺は銃という自分を守るものに手を伸ばした。
それからというもの……銃が無いと手が震える。
しかし、原因はそれだけなんだろうか?と思う時もある。
長年…とはいっても物心が付くぐらいからだが、戦場を渡り歩いて来た。
一部モヤがかかったように思い出せない記憶もあるが、それでも数年以上は銃声を聞いて生きてきた。
だからそれが原因で武器を持ってないと恐怖に駆られるのでは?と思うの時があるのだ。
どちらにせよ恐怖心が治るなんて思っていない。
解決方法が武器を所持するだけなんだから。
「けど、よく分かったな……何にも言ってないんだけど?」
「人を見るたびに嫌そうな顔してるのと、ここに来た時にそわそわしてるので分かった」
「そんな嫌そうな顔してる?」
「えぇ、眉間に皺よってるし、何より嫌ってオーラが出てる」
それは分かりやすい事で……
日本にいる以上、苦手だの言ってる場合では無さそうだ。
気を付けておかなければ。
「ジャック様、応接室で総理がお待ちです」
「分かった。すぐ行く」
「大和様もどうぞ」
「あっ、はい!」
秘書らしき人に連れられて着いた場所はもちろん応接室。
これで別の場所につれてかれたら間違いなく逃げ出していた。
って、何考えてんだか……
「どうぞお入り下さい」
「あぁ」
秘書に促されドアノブに手を掛けたが、すごく嫌な予感がする。
嫌な予感がするもなにも明確な敵意が部屋の中から2つほど感じる……
壁に張り付いて待ち伏せしているのだろう。
流石に行きたくないとは言えない。
一応ドアノブを捻ってみるがトラップの類いはない。
が、敵意は強くなる一方。
「失礼し……」
日本式の入室の挨拶をしようとしたのだが……
拒否られるかの勢いで殴りかかって来る奴が1人。
ドアノブに手がかかりっぱなしだったのが幸いして、ギリギリのところでそれを半分閉めた。
ゴツンなどと頭を打った勢いは尋常では無く、ドア自体が軋んだ。
後ろでは悲鳴が聞こえるが今はそれを無視。
殴りかかろうとしていた手を掴むと捻って無理やりに関節を決めた。
相手は腕を壊されないように自分から投げ飛ばされるが、それを少しずらしてやれば背中を強打させる事が出来る。
投げ飛ばされる途中で軌道を変えさせられて背中を強打した襲って来た男は苦しそうに悶えた。
「ぐはっ⁉︎」
「無駄な抵抗は…」
肺に溜まった空気を吐き出しながら身悶えるそいつは緑の迷彩服を着た自衛隊であり、軽装ながらもちゃんとハンドガンなどは持っていた。
もう1人がPDW(個人防衛火器)の銃口を突き付けようとするが、それよりも早くナイフで応戦。
素早くPDWに繋がっているスリングベルトをナイフの一撃で切って、サマーソルトキックで銃を空中へ蹴り上げた。
しかし、相手もこちらの動きに反応し着地前に足を掴まれる。
このままでは投げ飛ばされると足を首に回し、掴んで来た手を俺の両手でロックし逆三角締めに持ち込んだ。
だが相手も黙ってはいなく、逆三角締めが決まる直前で俺を投げ飛ばして来た。
受け身を取りながら落下するPDWを空中で拾い相手に向けるが、相手も同時にハンドガンを抜き放ち俺の頭を照準して来た。
なんだこいつ……もう1人とは格が違う。
まるで俺の戦い方を知っているような対応速度だ。
それにPDWはH&K MP7か……どこの部隊だ?
「待っていたよ。不知火 空君」
「お久しぶりです大臣、いや今は総理でしたね」
1人を無力化しても尚焦った顔一つせず穏やかな顔をしている
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