第18話私達どこで間違えたのかな?

2032年12月23日夜8時5分

【育穂お姉ちゃんから連絡が入った!

憐コンビニ行くって!私絶対連れてくるから二人は白金公園しろがねこうえんで待機してて!】


そんなグループラインがきていた。

白金公園って言えば、みゃー小の近くだよな??

憐ってそんな近くに住んでたのか??

あ、でも蜜穂が言ってたっけ「近所で育穂お姉ちゃんと一緒に居る憐を見かけた」って……そっか、近くに居たんだな。


{テキパキ}と準備をしていたら一通のラインがきていた。



【昏亞車出すでしょ?乗せてよ!今日実家に居たから家まで来て!】



【はいはい…】と。

俺は準備を済ませ車に乗り込み華を迎えに行った。



「おつー。さあ!白金公園にレッツゴー!!」



こうして俺と華は白金公園に向かった。

時刻は8時10分を過ぎた頃だ。

裏道を通り白金公園を目指す。



「ねえ?憐に会ったら何て言う?」


「…さあな。」


「ま、アンタは話しかけ辛いわよね…」


「そーだな…俺は特に…って感じだな」


「そろそろ着くわね」


「確か駐車場あったよな?」



そして車を駐車場に停め俺達は白金公園の中に入って行った。

時刻は8時15分を過ぎた頃だ。



「あとは蜜穂待ちかー」


「そうね。やっと憐に…会えるのね」



俺と華は内心穏やかではなかった。

俺にしろ華にしろ憐に対して後ろめたい事があるからだ。

どう謝れば良いのか…謝っても許してくれるのだろうか。

色んな感情が渦巻いていた。

そんな時に携帯が鳴った。



【ごめん憐と喧嘩しちゃった。

連れていけなくなっちゃった…】


蜜穂からのラインにどこか{ホッ}とした自分が居た。

決して憐に会いたくないとかそんな事じゃなく、会うのが怖かったから{ホッ}としたんだ。



「喧嘩って…なんでまたこのタイミングで?」


「さあな…憐の馬鹿が必要以上に煽ったんじゃないか?アイツ一度決めたら折れない所あるし!」


「蜜穂も頑固な所あるからねぇ…」



そんな会話をしてる時にまたもや携帯が鳴る。

今度はラインじゃなく電話だ。



「蜜穂何があっ―――」


「――憐が!!憐が!!!」


「あ、おい!憐がどうしたんだ?」


電話先から{ざわざわ}と声が聞こえる。

この異様な騒がしさに何かあったのだと、すぐに理解する。


「どうした!?大丈夫かっ!?」


「ごめん!また後で掛け直す!」


「あ、おい!蜜穂!?蜜穂!!…くそっ!切りやがった」


「何?どうしたの?」


「分からん…けど、なんか普通じゃなかった」


「普通じゃなかったって何よ!?」


「いや、分からないよ!?詳しい事聞く前に切れたんだよ!」


「もう…ほんとにアンタってそうよね!深く考えようとしない!!」


「は?なんだよそれ!考えるも何も一方的にだな!」


「じゃあ沙織の自殺も一方的なの!?」


「はぁ??お前まだ沙織の事言ってくるのかよ!?」


「なにその言い方?自分は悪くないってそう言いたいの?」


「んな事言ってないだろ!!」




この時はお互いどうかしてたんだ。

憐に会うってなって一度は閉じ込めた色んな感情が、また飛び出てきた。

そんな時に蜜穂からの不穏な電話で、俺達に余裕なんてなくて…

あの日の事がフラッシュバックして色んな感情が渦を巻きお互いの口から溢れ出したんだ。



「だいたいそれを言うなら華だってなあ!沙織の味方して憐を傷つけただろ!?俺だけのせいじゃないだろ!!」


「それは……」


口籠る華は、とても悲しそうな顔をしていた。

華から言い出したとは言え俺は謝る事にした。


「ごめん。言い過ぎた…」



「私だって……」


「ん?」


「私だって憐の味方したかったよ?でも沙織の事放っておけないじゃない…」


「そう…だな…」


「何でこんな事になったのかな?私達どこで間違えたのかな?」



俺はその質問に答える事が出来なかった。

どこで間違えたのか、なんて分からない。

自分が沙織に憐に告白しなよ、と唆したのがいけなかったのか?

それとも憐の味方をしてあげられなかったからか?



「俺にも分からないよ…」


情けない。

あぁ、分かってるよ!情けない奴だよ俺は!!

でも、俺にはもうどうする事も出来ないんだ…。



沈黙を破るように携帯が鳴った。

蜜穂からの電話だ。



「おい!蜜穂!どーしたんだ?」


「ごめん…憐が…死んじゃった…」


「は?はっ?憐がなんだって!?」


「だから…憐が死んだの。トラックに轢かれそうになった私を助けて…代わりに轢かれたの…」


「いや、よく分かんねーから!」


「救急車来たから切るね…」


「あ、おい!…くそ!」



「ねえ?憐がどーしたの?」


「蜜穂が言うには…憐が死んだって…」


「えっ?え??それどー言う事!?」


「分からん…」


「分からんって!憐が死んだって!?」



そう言って俺に掴みかかってくる華



「いや、俺も詳しくは分からんって!ただ、蜜穂を助ける為に代わりにトラックに轢かれたとか…」


「なによそれ!?」

必死な表情で俺に迫る華


「落ち着けよ!」

華の威圧に退く俺は、なんとか宥めようとするも聞く耳を持ってくれない。


「場所は?」


「分からん!けど多分近くだろ?」


「早く行かなくちゃ!」


「分かった!分かったから離してくれよ!」


その言葉に{ハッ}とした華はすぐさま手を離す。

だが、服を掴み迫られていた為急に手を離されて俺は体制を保てなくなり倒れそうになる。



「あ!昏亞!!」



ドコォォ!!



「くれ……あ…??」












暗闇












暗闇








気付いたら人混みの列に並んでいた。

「ここはどこだ?」と周りを見渡すと知らない人達が沢山いた。


首に名札がかけられていて【高野鳥昏亞こうのとりくれあ】と名前が書いてありその下に【高城たけじょう家次男として生まれ変わる】と書いてあった。



「なんだ?これは??」


訳も分からないまま列の先を見るも全く見えない。

ひたすらに長い列だ。

それでも少しずつ動く列に俺は、黙って並ぶしかなかった。


それからどのくらいの時間が経ったのか分からないが、上空に穴が空きロープが垂れ下がってきた。


「高野鳥昏亞!これに捕まれ!!」


そう声がしたので俺は指示されたままロープに捕まり引き上げられた。


引き上げられた先には小さい子供が居た。

どうやら神様らしい。

俺は、あの時華が手を離した時にその反動で体制を崩し倒れたらしい。

そして運悪く花壇に頭をぶつけ死んだとの事。

我ながら情けない死に様だ、と鼻で笑ってしまう。



そんな話を聞かされ天使ゆらのんと言う人物に会う事になり憐が頑張ってる事を聞いた。

だから、手伝ってほしいと頼まれた時は喜んでOKした。


これでやっと憐に顔向けが出来る!

そう思ったからだ―――


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る