不死身が転生機で転生しました
狼神ーオオカミー
第一章
第1話
無機質な真っ白な部屋。
永遠と機械音が外から聞こえてくる。
ただ椅子だけが何脚かならべられている。そこに座って順番を待つ俺たちの服はやたらと豪華で頑丈そうな鎧。
横に座っている女の子が泣いている。ざっと10歳くらいだろうか。
女のが泣くのも無理はない。成功する確率は50%。失敗したら死ぬ。
ど知らにせよこの世界に残るのはその人だった“モノ”。
それは、死体。もしくは死体という名の抜け殻。
どちらにせよ捨てられることに変わりはない。
この強制転生を毎日何百人単位で行っているため墓などは作ってもらえない。作りたいのなら、遺族が死体遺棄所から自分の家族の遺体を探す必要がある。
遺族自身もすぐに転生させられる場合が多いためこの世界に作った墓などきっと何の意味もなさない。墓など誰も作ろうとはしない。
部屋にある唯一の扉が開き大柄の男たちが入ってくる。目の前で女の子を無理やり立たせ、連れていく。
彼女の涙なんて気にも留めない。彼女はきっと、まだ、心の整理が出来ていないだろう。
この年齢の子供が、そう簡単に「今から死ぬかもしれない」という状況を受け入れられるとは思えない。
あいにく、無理やり連れていく男たちを薄情だと思う心は持ち合わせていない。
彼らも仕事だ。女の子が部屋の外に消える。
感情などとうに無くした。いや、なくしてはいないかもしれないがめったに表に出ることもない。
何年生きているかわからない。
何年人と会っていなかったのかもわからない。
どれだけ苦しんだかも……わからない……
そうだ、俺はどうなるんだ?
不死身の俺はもはや感じなくなり始めた苦しみを味わって終わり?
また……また……死ねない……?
「ランクS0015‐72来い」
いつの間にか先ほどの男たちが目の前にいた。今度は自分を連れに来たのだ。
どうやら「S」というのは最高ランクらしい。何段階だか忘れたが、人間を身体能力や知識量、経験値などでランク付けしている。
ランクをつけている国の偉い人たちはどうせ、能無し。一番下か、下から二番目のランクだろう。
なんのためのランク付けか……それはそのうち分かるはずだ。といってもこれは仮に俺の転生が成功すれば、の話だが。
そういえば、先ほどの女の子はランク「B」と言われていた。
意外と高いランクだ。
目の前にいかにも頑丈そうな鉄の扉か現れる。
男たちはそれをボタン一つで開く。てっきりその頑丈そうな肉体はこの扉を開くためかと思った。
「入れ」
男に続き部屋に入る。
機械であふれかえった暗い部屋。
入っていく俺とすれ違う女の子だった”モノ”。
成功しただろうか。まぁ、考えても仕方ないのだが……
すごい装置だ。
「世界が終わる」といって作ったにしては、出来がよさそうだ。
こんなものを作るぐらいなら、もっと別のものを作れたのではないか。
もっと違うことができたのではないか。
俺なんかがそれを訴えたところで何か変わるとは思えないが……
俺の体がもうすでに”モノ”になったかの様に無理やり装置に詰め込まれる。
男たちは俺を無機質な目で見つめる。ためらいなどない。人殺しも同然の行為をしているというのに。
自分たちもいずれは同じことをされるということがわかっていないのだろうか。
ガタン
装置に蓋がされる。
いよいよだ。
男のひとりがスイッチらしきものに手をかける。
そして、スイッチが押される。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
・
・
・
ー15年前ー
「速報です。本日より人類は、未来の子供たちが豊かに暮らしていけるよう、
『異世界侵略』を開始します。なお、異世界には豊富に食料等があるとの報告があり、転生は最貧層から行っていく模様です。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます