第58話 肝試し=恐怖
「よーし。これで全員だよね」
すでに肝試しのスタート地点に立っている一同。周りを見ていたトムは先ほどの言葉を放った。
「いや、プラスアルファがいるんだけど、、、」
平然と混ざっている大人の女性、大宮唯を指差して、三月が言う。まぁ、そう思うのも無理は無いだろう。なぜなら、彼女は陸斗のことをスカウトをしつこくしてくるわけだから。
「な、なんであんたがここに?」
意外にも素早く反応したのは大和だった。
「え?誰なの?え?」
事情を知らない川口は動揺し、明らかに目が泳いでしまっている。本当なら日本列島一周旅行の時にトムたちが話すべきだったが、陸斗のことを気にしてか、話していなかったのだ。ただ、もう1人知らないはずの鷲宮は理解していた。
「何、勘違いしているんですか?」
唯は不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと陸斗に近づいていく。
「どういう意味ですか?それは、、、、」
陸斗を守るように一番後ろにして、ジリジリと後ずさりをする一同。恐怖心が顔にも動きにも現れていた。
「私、スカウトするのを超えて、拉致ろうと計画しているなんてこと全くして無いですよ、、、」
今まででは考えられない悪い意味での笑顔。大宮唯という人物のイメージが崩れた瞬間だった。
「ひぃいいいい!!!」
「に、逃げろぉおおお!!!」
もう誰だかわからないくらいほぼ全員が叫びながら走る。来た道を真っ直ぐとは行かず、固まりながら遠回りをしていった。
「何なんだよあの人ぉおお!!」
何も知らない川口は一番、恐怖に満ちた顔をしていた。やはり、知っている恐怖よりも、何も知らない恐怖の方が明らかに怖いのだ。
猛ダッシュで逃げて行く一同。現役、高校生ということもあり、大人の女性を振り切ることは簡単だった。その途中、1人だけ逃げるのが余裕だった陸斗はこう思ったのであった。
(これが本当の肝試し、、、なんてね)
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