第16話 逃げの達人たち
「あ!!あの人!」
いつも校門に立っている女性が目の前につかつかと向かってくる。
「やべっ!!陸斗」
トムが視線を陸斗が座っている席に向かわすが、
「あれ?陸斗は?」
そこに陸斗はいなかった。そのかわりにあったのは、自分の食べたものの料金分のお金だった。
「か、帰ったー!!ナイスと言うべきか、虚しいと言うべきか……」
トムは置いてあった金を握りしめる。その間に、女性はすぐそばまで来ていた。
「確か、あなた丸山陸斗さんの友人ですよね?」
(なっ、なんか威圧されている気がする)
トムは理解不能な威圧感に覆い被されるようだった。しかし、友達、、、いや親友のため、ここで食い下がれなかった。
「違いますよ。ね、大和。(そう。大和ならば、この状況を打開してくれるはず!!)」
トムの希望であった大和はそこにいなかった。そして、大和が座っていた席には、お金が積み重なっていた。もちろん、自分の食べた分のお金だろう。
(うわっ。逃げられたー!!いつの間にか、逃げられた。最悪だよ!!将悟と俺だけでこの人の相手をしなくちゃいけないのかよ!!)
と将悟の座っていた席に目を向けたが、将悟もそこにはいなかった。だが、将悟の席にはお金すら置いていなかった。
(あ、あいつも逃げたー!!もう、いつからいないんだよー!!)
そう考えている内にも、女性は話しかけて来ているのは分かっていたが、トムの耳には入ってこなかった。
(いつからだ?よーく思い出せ、、、。あ!!!最初、この人が最初に言った言葉。『あ、あの人』って言ったってことは………ことは……………………
さ、最初から、いないのかよーー!!!)
頭を抱えて、テーブルに深く沈む。深く、テーブルにめり込むのでは無いかというくらい。
「あ、あの。大丈夫ですか?さっきから、変な動きしていますが」
その女性に言われて、ようやく我に帰るトム。
「あ、もう。頭痛が痛いので、帰って良いですか?」
フラフラ席を立ち上がる。いかにも、病人っぽい立ち方である。
「あ、はい」
「ありがとうございます。では、さよなら」
カバンを持って、レジに行ってから、帰っていく。
(重言するほど、重症…………ですか)
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