第8話

まだ生徒たちが帰り出す前、会科高校の校門前で一人意気込む大人の女性がいた。しかし、その女性は厚化粧ではないが、服装はよくいるOLのような格好だった。


「よし!今日こそ陸斗さんのスカウト成功させます!!」


そう言った途端、学校のチャイムが鳴り校舎内がざわめき出す。


「あっ。学校終わったっぽいですね。陸斗さん素直に出てきてくれるかな?」




一方、校舎内の教室


「おーい。陸斗。例の女性また来てるぞ」


大和が陸斗に言う。校舎内から明らかに見えている、女性。


「ありがと」


「毎回、毎回大変だねー陸斗も。俺もスカウトとか来ないかなー」


とトムが冗談半分で言う。それに対して将悟が


「冗談、言うなよー。陸斗だって困ってんだからさ」


「悪い悪い。でも、陸斗の中学時代すごかったんでしょ!?」


「そうだったよ。俺も陸斗の試合一度見たことあるし」


「そうなの!?で、どうだった?」


「陸斗、バンバン点決めてたよ。確かね、一人で5点くらいかな」


「うぉぉおお!!すげぇ。けどさ、なんでやめちゃったの?」


と、そこで話していたにも関わらず、唐突に陸斗にふるトム。


「ちょっと言えない」


「…………そうだよね。ごめん。変なこと聞いちゃった。…………よし、みんな帰ろーぜ。今日は、気分を変えて喫茶店でも行きますか」


空気を読んだ将悟も


「だね。行こー行こー」


「よし、裏門から抜けよう。あの女性に会ったら、元も子もないからね」




チャイムが鳴ってから2時間後の会科高校校門前。

「…………陸斗さん、遅いなー………」



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