お題「君が見ている景色が見たくて」


 初めて出会ったときから明香里ちゃんは私の憧れだった。

 きれいな長い髪。かわいい笑顔。頭が良くて運動もできて、誰にも優しいけれど許せないことがあると男の子にも負けなかった。

 その他大勢みたいな私はすぐに明香里ちゃんを好きになった。

 でも明香里ちゃんが私を好きにことはないんだろうな、と分かっていた。

 だって私はその他大勢だから。

 だって明香里ちゃんはヒロインみたいな女の子だったから。


 だから、せめて、少しでも近づきたいと思った。

 明香里ちゃんみたいになりたかった。

 その世界はきっと素敵なものだろうと信じて疑わなかった。


 頑張って勉強をして、同じぐらいの成績をとれるようになった。

 毎日ストレッチをして体を動かして、それなりにスポーツもできるようになった。でもこれは体育の時間のチーム分けで違うチームに分けられるようになってしまったから、ちょっと失敗だったかなって思った。

 ちょっと鬱陶しかったけれど髪の毛を伸ばした。

 黒みがちょっと違ったからこっそりと染めた。

 明香里ちゃんをお手本にして笑顔の練習も頑張った。

 明香里ちゃんが好きな色の小物を身につけるようにして、

 ペンケースの中身もおそろいにして、

 それから、

 それから



 ……なのに、ねぇ。

 私はまだちっとも明香里ちゃんに近づいてなんてなかったのに、どうしていきなりいなくなってしまったりしたの。「どうして」なんて私が言いたいのに、どうして明香里ちゃんが私に言うの。あなたが見ていた景色を知りたかっただけなのに、どうして答えを教えてくれないの。ねぇ、どうして。




 ああ、そうか。

 私も、追いかけなくちゃ。


 じゃないと、きっと分からない。

 

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