第2話 1日目

「うわあああぁぁあ!!」


ゴロン、ドスンッ、ガタンッ!


「いって~・・」


どうやら、悪い夢を見たようだ。それにしても、リアルな夢だった。

・・・もう、何の夢を見たのか忘れたが・・・


「・・・ここは、どこだ?」


・・・何も・・思い出せない?嘘だろ・・・2段ベッドから落ちたせいかも

しれない。・・・落ち着け・・落ち着けよ、俺・・・・・

ん、ポケットに何か入ってる?


「・・・じん・ぐう・・はると・・・?」


自分の名前らしき、言葉の書いてある紙切れと、底のほうには・・・


「・・・イテッ!・・刃物?」


かんざしのような、刃物が入っていた。

俺が寝ていた部屋を見渡してみると、左には勉強机。正面には扉がある。

恐る恐る、机の引き出しを指を切っていないほうで、引いてみた。

すると、ひとつのとても幸せそうな、家族写真が入っていた。

上のほうは少し破れて、背景が見えなくなっている。

裏には、[怪物]、と汚い字で書いてある。・・・少し、怖かった。


「・・・とりあえず、外に出よう。」


俺は扉に手をかけ、手前に引いた。


ギィーー・・・


ときしむ音がした。

・・・広い。リビングのようだ。

・・と言っても、壁は剥がれていて、家具はボロボロに壊れていた。

・・・台所はまだキレイだ。水も・・・おっ、ちゃんと出る。

誰かまだ使っているのだろうか。そうだとしたら、近くに人がいるはずだ。

・・・まだ、希望はある。おもいきって、外に出てみるか・・・

そう、思ったその時。台所でキラリ、と光る物が見えた。近づいてみると、

そこには、何かのうろこのような物と太陽光を反射している、桜の花の

ような、イヤリングが置かれていた。

別に自分にとってはいらないものだ。だが、ちょうどよく、黒色のリュックが、

置いてあったために、持っていった。


「・・・よし、行くか。」


玄関の扉を開いた。そして、俺の目に入り込んできたのは・・・


「・・なんだ・・これ・・」


すべてが植物に覆われている・・・

ビルも一軒家もコンビニも学校も神社も。

すべてが覆われている。

人の気配も機械の音もしない。まるで俺が最後の生き残りのように。


ピピピ・・・チチチ・・・


鳥のさえずりがきこえる。生き物すべて、いなくなったわけではなさそうだ。


・・た・・・チチチ・・・


・・・鳥じゃない音がきこえる。


・・たす・・・・・・・・


この声は動物だろうか。


・・たすけて・・・・・・


・・・違う、この声は・・・


・・たすけて・・たすけて!


人の声だ。


「・・・くそっ、どこだ?近くにいるはず・・・」


「たすけてくれぇっ!」


「そっちか!」


俺は右側のほうに走りはじめた。

ここは酸素が薄いのか、すぐに息がきれてしまう。

もう少しだ、声が近い。

この一軒家にいるようだ。

俺は勢いよく、扉を開いた。


ガチャン!


「助けにき・・・」


ガシュッ・・・


「・・・へっ?」


肉が斬れる鈍い音ともに、俺の視界は真っ赤に染まった。


ドチャッ


何かが落ちた音がした。その瞬間、俺の腹部に凄まじい痛みがはしった。


「・・・う・・ぐあああああぁぁぁ!!!」


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。

はじめは、痛いという、感覚しかなかった。それから、徐々に脳は恐怖に

染まっていく。

痛い、怖い、痛い、怖い、痛い、怖い、痛い。

死にたくない、死にたくない、こんなところで・・・

ここでやっと、視界がなおってきた。

・・・誰か、俺の目の前にいるようだ。

俺は恐る恐る、相手の顔に焦点を合わせた。

相手は狂気の混ざった笑みを浮かべて、こっちを見ている。

もう、駄目だ、意識が持ちそうにない。

俺は相手の顔を頭の中に叩き込んだ。こいつはどこかで見たことがある。


「・・あら、もう死んじゃうの?あなたは・・・」


俺はゆっくりと目を閉じた・・・


「・・・ワタシトオナジメヲシテイル・・のに・・・

じゃあね・・・」


「・・・マタアイマショウ・・フフフッ・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る