第108話

 インフィニティにログインするとまずはギルド部屋に入った。カレンから集合がかかっていたからだ。

 「カケルさーーん!!!フォローありがとぉぉ!」

 泣き顔絵文字はない。入ったら目の前にソラノがいた。顔はこれでもかというほど泣き顔。なんでここに声優が!?って思ったけどそういえばこの人ギルメンでしたね。

 「いや、DM送りたかっただけだし……」

 面と向かってフォローしたとかされたとかの話されるとなんか恥ずかしいからやめてほしい。ケモ耳カレンはすでにテーブルの定位置に座っていたので俺もその隣に座る。小麦粉さんは俺らの前が定位置。顔を向けると「お疲れ様っす」と挨拶。ソラノは俺の隣に座った。まるで小麦粉さんを面接するかのようだ。

 「カケル、ヤマトさんは?」

 「あ、ヤべ、招待するの忘れてた」

 ヤマトはギルメンではないのでフレンドの俺が招待しないとギルド部屋には来られない。慌てて呼び出す。

 数秒すると腕組みをしたヤマトさんが部屋に召喚された。なんか魔神系のモンスターみたい……ハッ!?これがインフィニティバトルリング最強お邪魔虫モンスターですか……これは勝てませんね……。

 「遅い」

 「すみません……」

 俺がぺこりと頭を下げるとヤマトはふんすと鼻息を鳴らしてカレンの隣に座った。面接官が増えて小麦粉さんの面接感がさらにアップした!

 「これ何の話?」

 ヤマトが言うと一瞬の間。たぶんソラノでしょ?とソラノを見ると俺を見て「何?」という表情。可愛い。

 違うのかな?それなら小麦粉さん?小麦粉さんも呼ばれただけみたいでなんか背筋を正してきょろきょろしてる。面接かよ。

 「え?これなんで呼んだの?」

 たまらずカレンに聞く。

 「あれ?亜弥香ちゃんが人に聞かれないとこでちょっと話したいって……」

 ソラノかよ!

 「あ、わたしだった」

 じゃあこっち座るなよ!

 「話聞きにくいしあっちに座ってもらえます?」

 言って俺は前、小麦粉さんの隣を勧める

 「はぁい」

 ソラノはテーブルをジャンプして反対側へ。行儀悪ッ!

 着地すると席に着く。小麦粉さん嬉しそう。

 「えっと、とりあえず昨日呟いたけど、インフィニティバトルリング参加できなくなりました」

 お、その話題か。ソラノはそのあと一つ大きくため息。

 「理由は?」

 ヤマトが言うとソラノは少し意外だったようで驚いた顔をしたが、気を取り直して話し始める。

 「やっぱ言わなきゃだめですよね~?と思って……でも事務所とかの話も出てくるので口外して欲しくないし、文章に残すのも気が引けるからここに集まってもらいました。ありがとうございます!……えっと、ほんとは今日予選に参加するつもりだったんです。運営からも参加するんですよね?って言われてたし、でもそしたらですよ!決勝が予定されてる日に!仕事!が!あぁぁぁぁぁ!」

 言うとソラノはいきなり立ち上がって頭を抱える。びっくりしたー……。

 「でぇ……事務所に相談したら、スケジュール変更できる仕事じゃなくて、しかも『ゲームだし出たらいいじゃん?準決勝で負けたらいいじゃん?』みたいに言われてぇぇぇぇ!ぬぅぅあぁぁ……あんにゃろぉ……!ゲームだから本気なんだぞぉ……」

 ソラノはそれはもう悔しそうに言う。さすが声優業……なんなら歯ぎしりの音が聞こえそうだ。確かにうちの家族とかにその言い方されたら喧嘩になる自信がある。

 そして、ソラノはひとしきり唸ると何事もなかったように座る。相当精神的にキているのか、今日は感情の起伏が激しい。

 「というわけで今回の大会出場は断念しました。その代わりに赤王杯は決勝まで含めて仕事入れないことを事務所に約束させました」

 淡々と言って最後にニッコリ。う~ん。これ事務所と相当やりあったな……。笑顔が怖い。

 「なるほど、そういう事か」

 「ですです!ついでに参加しないから準決勝と決勝は実況のお仕事入ったので皆さん頑張ってください!」

 ソラノは人差し指をピンと立てて言う。ちゃっかりしてんなぁ……。

 「わかりました」

 ヤマトが言う。理由を聞きたがってたし納得したようだ。ヤマトはカレンの向こう側に座っているので、表情は見れないが口調は柔らかい。

 「わたしもヤマトさんとやりたかったんですけどねぇ……もちろんカケルさんも!でも赤王杯の決勝まで行けばどっちかとは必ず当たるだろうし!頑張ってくださいね!!!」

 「……頑張ります」

 「ふふ」

 煽りおる……ヤマトは返事もせず笑う。自分は(途中で俺かヤマトどっちか倒して)決勝まで行ってるからかかって来いって言われてるような気がしてならない……そういえば、この人こういう性格だったな。煽ってるねこれは!うん!

 「じゃあ今日はどうしようか?」

 その空気を感じ取ってか取らないでかカレンが耳をモフワリと揺らして言った。ケモ耳は見るだけで癒されます。みんなケモ耳付けた方が良いのでは?種族変更500円で出来るよ?

 「ソラノさんが出ないってことだし、ずっとここで試合観るのもアレだよな?今日有名選手誰か出るっけ?」

 俺はぶっちゃけ対人戦の有名選手を全然知らない。最近まで青王杯とか興味なかったからね!俺より詳しかろうカレンに任せた!

 「うーん……チャンピオンとか違う大会の有名人とかは今日参加するとかで話題になってないっぽい?亜弥香ちゃんが出られなくなった話ばっかり」

 「ほむ……じゃあ、まぁ工房に行って何が要るか見に行って今日何するか決めるか」

 「そうしよう!」

 カレンは元気に立ち上がって「おー!」っと掛け声と一緒に拳を突き上げる。座っていたのでちょうど目線がお腹の辺りでへそチラが目に入った!この服へそチラするんですね!!!新しい発見!!! 

 

 

 

 

 

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