第107話
翌朝。起きてリビングに降りると父親がプリキュアを観ていた。この光景を目にすると「あ~日曜日だな」って思う。母親は自室にいるのか、ここにはいない。
「行ってきまーす」
「あいよ」
出かける支度をし終わって父親に言うと、俺の方を見ることなく言う。それでいいのか、親として!プリキュアがそんなに大事か!大事だろうな!そんなくだらないことを思いながら家を出る。
桜の家に着くと、いつも通りに洗濯物のチェック……しようと思ったのだが、今日は何と洗濯機がすでに動いていた。なん……だと……桜が家事をしている……。入ったことがないリビングの方からは掃除機の音がッ!扉を少し開けて見てみると、広い床をルンバがいそいそと動いていた。2台あったが1台はこれ水拭き用のやつだ……さすが金持ち。床の方に目が行っていたが、リビング全体を見渡してみる。前に桜が親がパーティをよくやっていたと言っていたがそれをやるにしても少し広すぎるくらいで、高価そうなL字型のソファと1枚板の大きなテーブルがあった。奥には何インチなのか分からないがとんでもなくデカいテレビがあってほんとに金持ちなのを容易に想像させる。テーブルには何も乗っていなくて、なんなら少し埃っぽいくらいだ。カーテンが開けられているので日光がそのまま部屋に入ってきてルンバに巻き上げられた誇りが宙を舞っているのがわかる。あんまり日光に当ててると家具が傷んじゃうぞ?
うーん気になる。少しテーブルを拭き掃除したい。勝手に入って悪いなとは思いつつも拭くだけ……拭くだけ……と台拭きを探す。入って左手の方にオサレな作りのキッチンがある……何だったっけなこれ、アイランドキッチンって言うんだっけ。そこの引き出しを探すと袋に入った新品の台拭き(5枚入り!)があった。それを開けて1枚取り、水を浸み込ませて絞ってからテーブルを拭く。アイランドキッチンからテーブルまで地味に遠いのがなんか広さをジワリと実感させた。テーブルは大木を縦に切って板にしてそのまま持ってきました!みたいなもので高校生の俺が見ても高級品なんだろうなというのがわかる。ていうかマジでデカい。
「何しよると……」
俺がテーブルの埃を絡め取った台拭きを見てなんとも言えない満足感を味わっていると、桜がリビングのドアを開けてジト目で立っていた。今日は腕の部分が透けている薄手のパーカーを着て、下は恐らく制服のプリーツスカート。そして生足。あざます!
「いや、ちょっとテーブルに埃着いてたから拭こうかなって」
「はぁ……そこも見るの……」
言うと桜は眠そうに顔を軽く手でゴシゴシ。早起きでもしたのかな。
「まぁ、ちょっと気になったから」
「使わないからいいやろ」
「でもこれ結構高級品だろ?きれいにしとかないと」
「それ500万」
「ごひゃッ」
思わず口に出したが上手く発音できずに唾を飲んでしまった。桜はそれを見て一回ほくそ笑むと続ける。
「親がお客さん来た時にいっつも自慢してたから」
「んじゃ、ちゃんと手入れとかしとかねぇと」
「そんなに気に入ったなら別にあげるけど?」
「あげるも何も俺の家に入らない」
「あ~」
それで納得されるのもムカつくけど事実だから言い返せない。
「とりあえず、拭いたし気が済んだから」
俺は言いつつ、台拭きの埃を水で落として適当に乾かすために縁にかけた。桜はそそくさとエレベーターの方へ。俺もいそいそ働くルンバを踏まないようにしてリビングを出る。
すでにエレベーターは到着していて、桜は中で待っていてくれた。
飛び乗ると上昇を開始する。
「たまにはリビング使ったら?」
「え、面倒」
「まぁ、せっかくあんな広いなら……」
「独りで食べるのにあんな広いとこで食べたらさすがに……」
桜は続けなかったので、顔を見ると口を尖らせていた。
「じゃあ、俺も付き合うけど?」
「……」
桜は黙る。もう3階に着く。あれ~俺なんか気持ち悪かったかな?選択肢ミスった?好感度ダウン?女の子難しい。
「まぁそれなら……いいけど」
桜はぽしょりと言ってエレベーターを出た。なんか照れてた?やめろよ俺もなんか照れてくるやん!
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